訪問看護で働くメリットとデメリット



シンママナースの マリアンナ です。

 

日本では昨今、医学の発展、医療の高度化に伴う急速な高齢化は深刻な問題。

 

平成28年度の統計では、日本全国の65歳以上の高齢者数は3459万人であり、日本の人口に対し高齢者が占める割合は27.3%。

今後もますます高くなる一方であり、20年後には3人に1人が高齢者であると予測されています。

(内閣府:高齢化の状況 より

 

 



訪問看護の現状と必要性

 

高齢化社会で考えなくてはならないのが、病気やけがが完治するまで病院や施設に入院したい、また実際に継続した治療が必要である場合でも、高齢者の割合に対して圧倒的に受け皿である病院や施設数が少ない現状です。

たとえ入院したとしても完治するまで入院生活を持続させる事は、高齢社会に対応するための医療費の削減を目指すという現在の健康保険制度では不可能に等しい。

入院するという事はあくまでも医療上の病気やけがの治療であり、入院自体は生活の場とは異なります。

また逆に昨今の家族形態を考慮した上でも、退院後の患者の受け入れ体制が整っていない、介護人の不足などの問題もあります。

 

このような様々な問題を緩和するためにも、日本看護協会では今後の医療、看護のあり方として在宅での看護、すなわち訪問看護の必要性を唱え推進しています。

そこで重要な役割を担うのは訪問看護師の存在と言えるでしょう。

今後も確実に需要は増えていくことが考えられます。

参考:日本看護協会 日本看護協会訪問看護検討会 訪問看護の必要性とその機能 

 

 



訪問看護師とは

 

需要が急ピッチで増大する訪問看護

 

昨今の経済不安による就職難、女性の自立を目指し看護師という職業を選択する方も増えてきています。

また、日本の高齢社会における現状と将来を考えた上でも看護師という職業は、必ずといって良いほど必要な職業であり、慢性的な人手不足である医療業界には「ひくてあまた」な職業でもあるのです。

 

その中でも最近、需要が増えつつある訪問看護師

患者さんが住み慣れた自宅で療養生活を送ることができる在宅医療での中心ともなり得る重要なポジション。

訪問看護とは、「疾病や負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にあるものに対して、居宅において療養上の世話、必要な診療の補助を行うもの」と定義されています。

 

厚生労働省 資料「訪問看護について」

 

現況を考えた上でも、その需要は今後も拡大する事は間違いないといえるでしょう。

 

 

訪問看護師になるには

それでは、在宅医療において重要なポジションを担う訪問看護師ですが、なりたいからといって誰もが出来る職業なのでしょうか。

実際には-、訪問看護師になるための特別な資格は必要なく、看護師としての資格があれば誰にでも出来る職業なのです。実情では2008年度の調査によると、訪問看護師としての採用基準は臨床経験年数が平均4.3年でしたが、近年では訪問看護ステーションにて新卒看護師も採用する動きが広がりつつあるという事です。

日本看護協会より

 



訪問看護で働くメリット

 

煩わしい看護師の人間関係がない

看護師のストレスといえば、「人間関係」。

病院の看護師といえば、ストレスフルな環境のなかで、気の強い女性ばかりの職場ですから人間関係が悪くなりがち。

看護師ならではの人間関係がいやで、看護師をやめるひとはたくさんいるでしょう。

 

もちろん訪問看護の事業所内で人間関係はありますが、

仕事自体は比較的ひとりで行動するため、病院で働く看護師ほど人間関係で悩むことは少ないといえます。

 

1対1の看護でやりがいを感じれる

病棟などで働く看護師には、以下のようなストレスがありますよね。

 

  • 病棟などで日勤、夜勤をこなし限られた勤務時間内で、業務をこなさなくてはならない。
  • 慢性的な人手不足の中過酷な勤務状況で仕事をするしかなく、自分の目指す看護が出来ずやりがいが見いだせない。
  • 病棟の人間関係などのストレスがある。

 

それに比べると在宅医療で訪問看護師として働くという事は、患者さんと1対1の看護が提供出来るため、ゆったりとした環境の中で患者さんに向き合い看護が出来ます。

 

勤務時間がある程度一定でワークライフバランスが良い

訪問看護師として働く事と病棟勤務看護師との大きな違い、それはまず勤務時間です。

 

入院されている患者さんの看護に休みはありません。

24時間体制であるため夜間問わず看護は必要です。

そのため日勤のみの勤務である看護師をのぞき、2交代、3交代として勤務をこなしている看護師がほとんど。

 

それに対して訪問看護師の勤務時間はほとんどの訪問看護ステーションは土日休み、平日の9時から夕方18時ごろまでの勤務であり、残業などもほとんどないと言われています。

またそれ以外の夜間はオンコール対応となっているところが多いですが、実際には電話対応などで済んでしまう事も多いようです。

そのため、一般のOLさんと同じような勤務体制になるので、オンオフの切り替えが出来、育児や自分の趣味、プライベートに時間を使えるなど、リフレッシュ出来る時間も作りやすい。

 

訪問看護師としての仕事は、1日に4-5件程度各受持ちの患者宅を訪問し、指示書に基づいて、1時間程度の看護を行います。

その内容はバイタルチェックをはじめとし、これまでの継続治療、入浴介助、褥瘡処置、バルンカテーテルの交換、リハビリなど患者さんに応じたさまざまな看護処置が施されます。

 

給料水準が高い

訪問看護師は、一般に病棟看護師よりも給料水準が高いと言われています。

事業所により差はありますが、常勤ですと月給が25-35万円くらいと言われ、年収にすると400-500万円くらいにもなるようです。

またパートやアルバイトなどの非常勤でも時給1500-2500円くらいもらえるところが多く、この額だけ見ても土日休み、残業がなくこれだけのお給料をもらえる事を思えば、かなりの好条件。

病院系列の訪問看護ステーションや福祉事業なでが展開しているところでは福利厚生が充実しているのもメリットといえるでしょう。

 

実際に訪問看護師として働く方はある程度臨床を経験されている方が多いようですが、最近では特に訪問看護分野での人手不足も深刻であるため、積極的に新卒看護師を採用するという事業所も増えて来ています。

看護師としての経験がないのに訪問看護が出来るのか不安に思われる方もいるでしょうが、最初は一人の訪問ではなく必ずベテラン看護師との訪問であること、新人教育、研修制度などにも力を入れているところが多いので安心です。

またトラブルなどがあっても一人で考え対応するのではなく、かならず報告、相談、医師への連携などを行うため、不安になる事もないでしょう。

 

訪問看護師として働くことで得られるものは、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の様々な疾患をかかえている患者さんへ、在宅という限られた医療設備の中で看護を行う事により、知識の向上、看護スキルの取得など自分自身のステップアップにもつながることでしょう。

また患者さんの入退院が激しい病棟勤務では、じっくり関わる事が出来なかった患者さんとも、自宅という環境の中ではゆったりと関わり寄り添う事が出来るため、患者さんとの信頼関係、人間関係の構築につながること、患者さんの生活、人生に応じた看護ができることで、何よりも看護師としてのやりがいに大きくつながるのではないでしょうか。

 



訪問看護で働くデメリット

 

労働環境がよくない事業所もある

訪問看護という概念は、最近になり増加しつつあるとはいえまだまだ新しい分野です。

昨今の高齢社会の急速化、それに伴う病院、施設の不足による在宅医療の推進により急速に発展したため、訪問看護ステーションの規模により、やはりまだまだ教育、研修体制の整っていないところも多いのが事実。事業所によって、働きやすさに差がすごくあるんですね。

また、各事業所により異なりますが、24時間体制のところではやはり夜間当番になると、自宅にも携帯電話を持ち込み過ごす事などもあるため、その時は多少なりともストレスを受けることもあるでしょう。

 

一人だから楽、だけど一人だから責任もある

自分ひとりの訪問であるため不安である、看護スキルを求められる、患者、家族とのコミュニケーション技術が重要であるなどプレッシャーに感じることもあるかもしれません。

 

天候によってはすごく大変な日も

訪問時に自転車を利用する看護師もおり、雨など天候により訪問が不便であるなどもあげられています。坂が多い、雪や台風が多い地域では、移動の多い訪問看護師のストレスは大きいかもしれません。

 

 

ただ、これらのデメリットは小規模の事業所が抱える問題が多く、訪問看護ステーションを選ぶ際に、ある程度解決できる要素であるといえます。

また、看護技術、コミュニケーション技術などに対するプレッシャーも逆手にとれば、自分自身のスキルアップにつながるものであると考えればメリットととも取れるでしょう。

 



おわりに

訪問看護はまだまだ始まったばかりの分野。

働きやすさは事業所によってピンキリですが、

  • 給与水準が高い
  • シフトがある程度一定している

などのメリットはたいてい共通しています。

 

どちらかというと、収入は下げたくないママさんベテランナース、

夜勤が苦手な看護師などに向いているかも。

 

今後需要が拡大する訪問看護は、唯一看護師が独立できる分野でもあります。

経験しておいて損はないかもしれませんね。