セルフケア不足の看護計画(摂食、入浴・清潔、更衣・整容、排泄)



シンママナースの マリアンナ です。

 

この記事では、セルフケア不足(摂食、入浴・清潔、更衣・整容、排泄)の看護計画についてまとめています。現役ナースが看護計画立案のコツ、書き方、アセスメントのポイント等を解説。

 



看護問題:セルフケア不足とは

看護の場面では、食事や入浴、更衣、排泄行動などのセルフケアが自立してできない患者、すなわちセルフケア不足の状態にある患者に出会います。病気や治療が原因で、最低限必要な日常生活動作ができない状態にあるのです。

 

看護師がセルフケア不足を補い、自立へ導くことは重要な看護のひとつ。それくらい看護の場面では、セルフケア不足のアセスメントがすごく重要です。

 

有名な看護理論家オレムは、セルフケアについて

「人々は、自分たちで自分たちの世話をすることができる。病気や怪我で自分たちで世話ができなくなったとき、代わりに世話をするのが看護である」

と述べています。

セルフケア不足の患者への看護は、看護の基礎といってもいいくらい、重要な看護のひとつなんですね。

 

 

セルフケア不足:看護計画の基本

 

自分でセルフケアをできない患者に出会ったら、まずその患者の個別性に応じた「セルフケア不足の看護計画」の立案が必要。

 

セルフケア不足の看護計画を立案するとき、なんでもかんでも日常生活を援助したらいいってわけではありません。

患者の「できること・できないこと」をしっかりアセスメントした看護計画を実施しましょう。

 

なぜか?

 

患者のできることまで援助すると、患者の自立したADLを低下させてしまう恐れがあるからです。

セルフケア不足の看護計画を立案するときは、患者の自立を基本として「どうしてもできないところだけを補う」援助であるスタンスでケアを行います。疾患や治療によって、患者自身がしたくても出来ないセルフケアってたくさんあります。その内容は患者によって千差万別。その患者さんのどの部分にセルフケア不足がおきているのか。看護問題のピックアップがすごく大切になります。

 

セルフケア不足の看護計画を立案するときは、患者のできること・できないことを捉えた看護計画を立案するのがコツです。

 

 

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セルフケア不足となる原因と事例

セルフケア不足となる原因や事例として考えられるのは以下のような事項があげられます。

  • ギプスなど装具装着中により治療上安静が必要なためセルフケアができない患者
  • 関節リウマチなどにより関節可動域に制限がある患者
  • 頸椎損傷、脊椎損傷、脳血管疾患による運動障害や麻痺がある患者
  • 長期臥床などにより筋力低下がある患者
  • 加齢に伴う身体機能や認知能力の低下のため、ADLに支障をきたす患者

 

 

セルフケア不足の看護計画の注意点

上記のような原因からセルフケア不足に陥る患者のうち、以下のような注意点があげられます。

  • 「身体可動性の障害」と「セルフケア不足」の看護診断があがったとき、筋力増強や維持を目標とする場合「身体可動性の障害」の看護計画を立案し、ADLの自立や向上を目指すときは「セルフケア不足」の看護計画を立案しましょう。
  • 明らかに疼痛が原因でセルフケア不足となるときは、「安楽の変調」として看護計画を立案します。

 

 



セルフケア不足の看護診断と書き方

セルフケア不足の看護診断はの書き方は、その原因に応じて書き換えます。

看護診断:「○○に関連したセルフケア不足:摂食 / 入浴・清潔 更衣・整容 /排泄」

基本的な看護診断の書き方は、その患者の個別性に応じて、具体的にセルフケアのどこ(「摂食」もしくは「入浴・清潔」「更衣・整容」「排泄」等)が不足しているのかを明記しましょう。

具具体的な原因は○○の部分に挿入し、何によってセルフケア不足が生じているのか、わかるようにします。

 

 

セルフケア不足の基本的な原因

セルフケア不足が起こる原因として以下のような原因が考えられます。

  • ギプス固定や牽引による幹部の安静保持に伴うADLの制限
  • 治療上の活動制限(安静の指示、ドレーン留置など)
  • 麻痺による運動障害
  • 固定器具の使用に伴う上下肢の機能障害
  • 精髄損傷の部位や程度による感覚、運動機能の障害
  • 認知症による認知力の低下
  • 視力・視野欠損などの視力障害
  • 長期臥床による筋力低下
  • 不安、抑うつ、妄想による清潔や整容に対する意識の欠如
  • 長期入院や個室隔離による依存心の増強
  • ストレスや不安に伴う自立の困難

 

例えば、

術後の活動制限による体動制限に関連した清潔のセルフケア不足

みたいな感じで、具体的に看護診断をあげられると、より個別性がでて計画立案がしやすくなります。

 



セルフケア不足の看護目標

セルフケア不足の看護目標は、患者の個別性が強く現れるため、一概にどれが基準だ!とは言いにくいものがありますが、患者のADLや認知力、状況で「ここまでなら可能であろう」具体的なセルフケア行動を目標にあげます。個別性に応じた看護目標が必要ってことですね。

 

例:

食事摂取を自立でできない患者なら、スプーンを使用して食事を摂取することができる

清潔のセルフケア不足なら、上半身の清拭を自力で行うことができる

等々

 

患者のADLや不足するセルフケア項目、患者に優先的に必要なセルフケア等、その個別性によって変わります。

 

 

ADLの個別性に応じたセルフケア不足の評価スケール

患者のADLの個別性をアセスメントするのが大変!っていうときはADLのスケールを使って評価するのもひとつの手段です。Barthel index(BI:バーサルインデックス)は患者のADLを項目ごとに評価することができ、セルフケア不足の立案漏れが防げます。バーサルインデックスに表記された患者のADLに応じて加点していきます。合計点によって介助を評価していきますが、目安として

  • 60点以上で介助量が少ない
  • 40点以下で介助量が多い
  • 20点以下で全介助レベル

くらいを目安にアセスメントしていきます。

 

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Barthel index(BI:バーサルインデックス)

1.食事

  • 10点:自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える
  • 5点:部分介助
  • 0点:全介助

2.車椅子からベッドへの移乗

  • 15点:自立、ブレーキ、フットレストの操作も含める
  • 10点:軽度の部分介助または監視を要する
  • 5点:座ることは可能であるがほぼ全介助
  • 0点:全介助または不可能

3.整容動作

  • 5点:洗面、整髪、歯 磨き、ひげ剃りなどが自立
  • 0点:部分介助または不可能

4.トイレ動作

  • 10点:自立(衣服の操作、後始末を含む)
  • 5点:部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する
  • 0点:全介助または不可能

5.入浴

  • 5点:自立
  • 0点:部分介助または不可能

6.歩行・車椅子の移動

  • 15点:45m以上の歩行が可能(自助具の使用可)
  • 10点:45m以上の介助歩行ができる(自助具可)
  • 5点:歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の可能
  • 0点:上記以外の場合

7.階段昇降

  • 10点:自立、手すりなどの使用の有無は問わない
  • 5点:介助または監視を要する

8.更衣動作

  • 10点:自立(ファスナー、装具の着脱を含める)
  • 5点:部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
  • 0点:上記以外

9.排便コントロール

  • 10点:失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能
  • 5点:時々失敗する
  • 0点:上記以外の場合

10.排尿コントロール

  • 10点:排尿自制が可能で失禁なし。収尿器の取り扱いも可能
  • 5点:ときに失禁あり、介助を要する者も含む
  • 0点:上記以外の場合

 

 



セルフケア不足 看護計画 OP(観察項目)

セルフケア不足の観察項目は以下のような項目があります。

  • 患者の残存機能
  • 指示の安静度
  • ADLの自立度(食事・清潔・更衣・整容・排泄)
  • 視力低下や視野欠損等視覚障害の有無と程度
  • 認知障害の有無と程度
  • 疾患や治療に対する認識と理解レベル
  • セルフケアに対する意欲・依存心・ストレス・不安の有無
  • ギプスや牽引などの固定器具やドレーン類の状況
  • 退院後の生活を含めた家族のサポート状況
  • 思考や感情障害の有無
  • 生活習慣
  • 家庭での生活様式(トイレ、洗面、浴室、食堂、寝室等)

 

 



セルフケア不足 看護計画 TP(ケア項目)

セルフケア不足の看護計画は、各日常生活場面において、以下のようなケアプランが挙げられます。

  • 共通の援助
    • セルフケアが不足している原因をアセスメントする
    • 患者の状態に応じた計画とし、患者の意欲に合わせて支持的態度で接する
    • 努力したこと、達成したことは励ましや称賛をする
    • 自尊心を損なわないよう不要な援助は行わない
    • ベッドサイドの環境整備と安全管理
  • 摂食の援助
    • 全面介助
    • 一部介助(セッティングのみ、食事時のみベッドアップ、食堂にセッティング等)
    • 食事の形態を食べやすい様工夫する(おにぎりなど)
    • スプーンやフォークの使用や柄をもちやすい大きさに調整する
    • 食器の蓋とり、容器開封、魚の骨とり果物の皮むきなど患者が出来ない部分を援助する
  • 清潔の援助
    • 清拭(全介助・一部介助)毎日、(  )曜日
    • 石鹸清拭(  )曜日、陰部洗浄 毎日
    • 手浴(爪切り)(  )曜日、足浴(爪切り)(  )曜日
    • 洗髪(  )曜日(洗髪車、洗髪台、車いす移動)
    • シャワー(全介助、一部介助:例;背部と下肢は介助etc) (  )曜日
    • 入浴(全介助・一部介助:例;洗髪は看護師が行う等)
    • 洗面(全介助・一部介助) 口腔ケアや顔面清拭等
  • 更衣・整容の援助
    • 全介助・一部介助(髭剃り、ヒモ結び、ボタンとめ、整髪)
    • パジャマ式寝衣の着用
    • 前空き、マジック式シャツを着用
    • 脱衣しやすい履物の選択
  • 排泄の援助
    • 全介助・一部介助(尿器・便器の使用)
    • おむつの使用
    • ポータブルトイレの使用(昼・夜・全日)
    • 尿器やポータブルトイレは安全で使用しやすい場所に設置する
    • 定期的なトイレ誘導(車いす・徒歩)

 



セルフケア不足看護計画EP(教育項目)

セルフケア不足の患者には、自立してセルフケアを支援する教育をおこなっていきます。

  • 時間がかかっても自立してできることの必要性を説明する
  • 家族に不要な援助はせず見守ることの重要性、できたこと・努力したことを称賛する必要性を説明する
  • 社会的資源の活用方法を紹介し、残存機能に応じた住居環境を整えるよう指導する

 



セルフケア不足の看護計画 まとめ

セルフケア不足の患者に対し、看護計画を立案するときは、今患者が自分でできる自立したADLと、どうしても自立できないADLの見極めが大切過剰なセルフケア援助は、ときに患者の自尊心を傷つけたり、ADLを低下させる原因になったりします。また、セルフケア不足に対するアセスメントが浅く、その患者にあった計画が十分に立てられていないと、患者は看護に不満を抱いたり、セルフケアのニードが満たされずに辛い療養生活になってしまいます。

 

もし目の前にいる患者さんが、自分なら、何をしてほしいと思いますか?

毎日の患者のADLの変化を評価しながら、今患者に一番必要なセルフケアを補ってあげてください。

 

「あ、この患者さん、これに困ってるんじゃないかな?」

 

ちょっとした看護師の気づきが、患者の療養生活の質をグッと高めることができます。

 

 

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