【COPD:肺気腫】看護過程・看護目標・看護展開と病態生理まとめ



シンママナースの マリアンナ です。

COPDの概念や病態生理、看護過程や看護目標について、また予後や生存率、必要なケア等についてまとめています。

COPD


COPD(閉塞性肺疾患:肺気腫)とは

COPD(肺気腫)の診断基準

  • 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで FEV1 / FVC<70%を満たしている
  • 他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外できる

 

COPD(肺気腫)の病態生理

慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、慢性的に吸引していたタバコの煙や有害な物質が原因で、末梢気管支を主とした呼吸気道や肺胞壁、肺血管が障害される進行性の病態である。閉塞性障害を起こし、比較的高齢者に多い疾患である。

分泌腺の肥大や過形成(慢性気管支炎)や気腫性変化がみられ、良病変が混在することもある。

COPDは、全身性炎症や栄養障害、呼吸障害、循環器障害、精神不安定などの症状が併発することが多いため、多角的な評価とケアが必要になる。

 

肺気腫とは

肺気腫とは、タバコなどの有害物質が原因で、酸素を取り入れたり、二酸化炭素を排出する器官である肺胞が破壊され、肺胞表面面積が小さくなってしまった状態である。そのため、酸素の取り入れ、二酸化炭素の吐き出しが困難となる。

 



COPD(肺気腫)の予後・生存率

COPDの祖死亡率は約11%(2005年の統計より)。息切れ・呼吸苦が出現しはじめてからの5年生存率は約70%、10年生存率は40%程度です。特に高齢者、喫煙継続者は予後不良で死亡率があがります。COPDは後年、肺癌を合併しやすいともいわれています。

 

 



COPD患者の観察項目

COPD患者の観察項目は以下の要点があげられる。

  • 呼吸状態(数、パターン、音、SPO2の変化)
  • 咳、喀痰の量と性状、発熱の有無
  • 呼吸苦、倦怠感などの自覚症状
  • 睡眠状況
  • 訴え、表情
  • 活気の変化

 

 



COPD(肺気腫)の看護目標

1.安楽な呼吸方法を取り入れ、自身のペースを保ちながら生活をすることで、自立したADLが維持できる

  • 労作性の呼吸困難の軽減
  • 低酸素状態にならない
  • 自分でできることが維持できる

 

2.栄養を摂取し、質の良い睡眠・休息をとることで、体力やエネルギーを維持できる

  • 適正体重が維持できる
  • 持続的な疲労感を感じない
  • 睡眠、休息により心身の心地よさが得られる

 

3.わずかな急性増悪兆候を見逃さず早期に治療をうけることで、病状の悪化を予防することができる

  • 急性増悪によるわずかな症状の変化、生活行動パターンの変化を把握できる
  • 病状の悪化兆候があれば早期に治療をうけることができる

 

4.疾患や老化に対する思いを他者に表現することで、自尊心を保ち生活することができる

  • 苦悩や悲観の気持ちを他者に理解されたという言動がある
  • 活動への意欲を持つことが出来る
  • 活動への参加の機会が維持できる

 



COPD(肺気腫)の看護過程・看護計画のポイント

看護目標1.安楽な呼吸方法を取り入れ、自身のペースを保ちながら生活をすることで、自立したADLが維持できる

  • 労作性の呼吸困難の軽減
  • 低酸素状態にならない
  • 自分でできることが維持できる

 

安楽な行動を目標とした呼吸法の指導

COPDは、気腫病変により横隔膜の動きが制限され、換気機能が低下している。呼吸法を取り入れることで、換気を行いながら活動を維持したり、リラックスした状態を維持することができる。

 

1.口すぼめ呼吸

口すぼめ呼吸とは、気道内を陽圧にして呼気を延長させる「口すぼめ呼吸」を取り入れることで、換気しやすく呼吸困難感を減らすことができる。1回5分程度、1日数回くらいから練習を始め、呼吸機能の改善をはかる。

口すぼめ呼吸の画像
画像:環境再生保全機構様より
2.COPDの呼吸方法・呼吸リズムの練習

呼気にかける時間を、吸気の2倍くらいかけて呼吸を行う。

 

安楽な呼吸で歩行・移動できる

呼吸速度や動作にかかる時間をゆっくり行うよう声かけし、動作の合間に姿勢と呼吸を整えることで、労作時に起こる呼吸困難感を回避し、低酸素状態を予防することができる。

 

 

パニックコントロールを対処できる

急激な呼吸困難があったとき、不安や恐怖心から自分で呼吸リズムを整えることができなくなる。急激な呼吸苦が生じたときは、本人が自分で呼吸リズムをセルフコントロールできるように、誘導していく。

 

1.パニックコントロール時の姿勢

横隔膜が働きやすい姿勢で、本人が呼吸苦を一番感じない姿勢が良い。

CapD20161014_1

画像:環境再生保全機構様より

 

2.急激な呼吸苦が起こったときの呼吸リズム

鼻から息を吸い、口から吐くように指導する。息を吐く時間が長くなるよう誘導し、精神状態が安定してきたら少しずつ口すぼめ呼吸に戻していく。

 

体力の消耗を防ぎながら入浴介助を行う

COPDは、上肢をあげたり、前屈姿勢になったりと体位によって胸郭や横隔膜の動きが制限され、また気温の変化で咳嗽が誘発されたり、呼吸苦が増悪することがある。入浴は日常生活の中でとても体力を使う動作である。入浴時に急激な呼吸苦の出現によっては、COPD患者によって入浴が不安をあおるものになり、活動意欲を下げることになりかねない。

COPD患者の入浴は、呼吸が安楽になる体位を工夫し、患者の呼吸状態に合わせて行う必要がある。

 

入浴前の準備

患者が安楽でいれる背もたれのある椅子を用意したり、室温調節を行っておく。

 

入浴中の介助

横隔膜や呼吸筋の動きを制限する前屈姿勢や上肢挙上は、息を吐きながら行うよう誘導する。

上肢挙上を必要とする洗髪や背部の洗浄、前屈姿勢になる足部の洗浄は呼吸状態に合わせて、また必要によっては介助を行うようにする。

 

活動の拡大に向けた散歩・レクリエーションの取り組み

活動を維持することは、患者自身が自分らしさを維持することにつながり、自尊心の保持につながっていく。

日常生活のなかで、散歩や人との関わり、レクリエーションなどを取り入れ、ADLを維持できるよう、運動療法を取り入れることが大切である。

 

活動への意欲や継続の関わり

急性増悪からの回復期、急激な呼吸困難を経験すると、HOT導入後に呼吸苦への恐怖心などから、生活活動が委縮したり、活動意欲が低下したりして、ひきこもりがちになることがある。身体機能を評価しながら、患者自身が取り入れたい(取り入れられる)生活活動を提供していくことは、患者のQOL向上に影響する。

 

活動への意欲に対する継続的な関わり

体調の良いとき、コンディションの良いときを見計らい、患者の意思で活動に参加できるようにタイミングをみて声かけを行うよう努める。

在宅でHOT導入しても「できること(火を使わない料理、近くへの旅行や散歩等)」を説明し、患者がライフスタイルを再形成することを助ける。

 

 

2.栄養を摂取し、質の良い睡眠・休息をとることで、体力やエネルギーを維持できる

  • 適正体重が維持できる
  • 持続的な疲労感を感じない
  • 睡眠、休息により心身の心地よさが得られる

 

効率よく栄養摂取できるような食事の工夫

疾患により、呼吸仕事量が増大 代謝エネルギーが亢進した状態にあるため、高エネルギー、高蛋白質、高ビタミンの食事をとることで、るいそう、呼吸筋および呼吸筋の萎縮をできるだけ予防する必要がある。硬い食品、熱いもの、水気の少ないもの、麺類などは咀嚼運動や息こらえを生じるため呼吸困難や疲労感を生じ食欲が低下しやすい。

イモ類や豆類はガスを発生させやすく、腹部膨満感を生じさせるため、呼吸苦を増悪させることがある。また、低酸素状態に陥ることで胃腸の機能低下を引き起こすことがある。

 

COPD患者の食事は、高カロリー、高栄養で、余分なエネルギーを生じないよう、嚥下しやすくやわらかいものをえらぶ。またイモ類や豆類が多くなりすぎないよう工夫が必要である。

 

活動と休息のバランスを調整する

活動量をアップさせると同時に、体力の消耗や持続的疲労感を避けるため、適宜休息する時間を取り入れるようにする。

咳嗽や去痰にエネルギーを消耗するため、効率的に去痰できるよう努め、質の良い休息と睡眠がとれるように努める。

 

COPD患者本人が呼吸苦や倦怠感を生じているときは、毎日のスケジュールに合わせず、本人の休息を優先して休息と活動のバランスが保てるよう努める必要がある。

痰が多い時間を把握して、就寝前や食事の数時間後に排痰する習慣を作る。仰臥位で呼吸困難が生じる時は、薄いクッションを上半身側に敷いたり、ギャッチアップしたりして、横隔膜の動きを助け、呼吸を助ける。

 

リラクセーションの取り入れ

首や肩のストレッチで呼吸補助筋の疲労軽減をはかる

COPDの進行に伴い、首や肩の呼吸補助筋を用いた呼吸を行っているため、筋肉が緊張状態になっている。この筋肉に対しストレッチを行い、リラクセーションを得るとともに、安楽な呼吸を得ることができる。

また、肺を包む胸郭の筋肉および関節の柔軟性低下は呼吸困難を増大させる。胸郭の柔軟性を改善することは、呼吸に使用するエネルギー消費量を軽減することができる。

COPDのストレッチ前の準備 COPD患者の呼吸筋ストレッチ

画像:環境再生保全機構様より

 

患者の価値観に寄り添った活動の援助

患者によってはトイレだけは自分でいきたい、食事だけは自分で食べたいなど、COPDにより呼吸機能が低下していたとしても、これまでの生活で得た患者自身の自尊心に伴う生活の価値観やがある。健常者と比べて消費できるエネルギーが限られているが、患者の持つ生活の価値観に合わせ、自分でしたいところは自分でできるよう援助し、エネルギーの消費を調整する必要がある。

 

3.わずかな急性増悪兆候を見逃さず早期に治療をうけることで、病状の悪化を予防することができる

  • 急性増悪によるわずかな症状の変化、生活行動パターンの変化を把握できる
  • 病状の悪化兆候があれば早期に治療をうけることができる

 

急性増悪兆候に早期に気づくことができる

慢性的呼吸器疾患の患者は、徐々の症状が進行していくため、急性増悪などの症状もなかなか自覚できず、発見が遅れることがある。ただし呼吸機能は確実に低下しているため、感染症等を起こすと状態が一気に低下してしまうことがあるため、早期の発見と対応が重要になる。

 

日々のバイタルサインの変化、日々のADLや活気の様子、IN/OUTのバランスなど、いつもと変化がないか経時的な観察と評価を行うこと。

マスク着用や保清、口腔ケアを積極的に取り入れ、感染予防に努める。

いつもと違う症状や状態があれば、早期の診察と検査を行う。

 

 

4.疾患や老化に対する思いを他者に表現することで、自尊心を保ち生活することができる

  • 苦悩や悲観の気持ちを他者に理解されたという言動がある
  • 活動への意欲を持つことが出来る
  • 活動への参加の機会が維持できる

 

患者の思いを理解、傾聴する

COPDの患者は徐々に呼吸機能の低下が起こることで、ADLが低下し、自分でできないことが増え、生活機能の喪失体験や意欲低下、抑うつ傾向になることがある。自分の思いや考えを表現できることで、患者が自身の気持ちを整理し、ボディイメージを受容する助けになる。

 

患者が気持ちを表現しやすいよう助け、傾聴と共感する姿勢で関わりを持つ。

 

活動への意欲が低下している場合の対応

意欲低下や抑うつは、活動量の低下、運動能力の低下、ひいては廃用症候群という悪循環を生み出すことがある。

患者がレクリエーションへの参加や活動に対し抵抗を示した時、無理に参加をさせるとさらに意欲低下につながる恐れがあるため「なぜ参加に抵抗があるのか」充分患者の思いを傾聴し、尊重する必要がある。患者自身が意欲的に、自主的に活動したいと思うまで、待つ姿勢が大切である。

 

また、不眠や普及が続いているときは、専門医の診察のもと、睡眠薬や抗うつ剤の使用を検討することも必要である。

 

 



COPD(肺気腫)患者の酸素投与とco2ナルコーシスについて

CO2ナルコーシスとは、急激な高炭酸ガス血症(二酸化炭素の排出ができず、動脈血中の二酸化酸素濃度が著しく増加した状態)により、中枢神経や呼吸中枢が抑制されて呼吸抑制が起こり、中枢神経障害や意識障害を生じること。最終的に自発呼吸が困難な状態に陥ります。

COPD患者は、肺胞が破壊されているので、酸素と二酸化炭素の交換が効率的に出来ません。そのため、血中の酸素濃度は下がり二酸化炭素濃度は上昇します。

二酸化炭素は有害なため、二酸化炭素濃度を感知していた中枢性のセンサーが機能しなくなります。すると体の酸素濃度を感知するセンサーが末梢性のセンサーだけになってしまいます。これがCOPD患者の酸素濃度を決めるセンサーの状態です。COPD患者は血中の酸素量で自己の呼吸機能をコントロールしているのです。

しかしここで、高流量な酸素が投与され血中の酸素量が劇的に上昇すると、COPD患者の末梢センサーが「酸素量がたくさんあるから、呼吸する必要がなさそう」と間違った認識をしてしまい、呼吸抑制がかかってしまうのです。

このような機序から、COPD患者に高流量の酸素を投与することは禁忌とされています。