シンママナースの マリアンナ です。
深部静脈血栓症(DVT:エコノミー症候群)の観察項目として行われるホーマンズ徴候の評価。足関節を底屈・背屈させるとふくらはぎに痛みを感じます。この記事では、ホーマンズ徴候のやり方と原理について説明しています。
ホ―マンズ徴候とは
ホ―マンズ徴候(Homan’s sign:ホ―マンズサイン)とは、深部静脈血栓症による静脈炎を検査する方法のことです。膝関節を伸展した状態で底背屈運動を行い、下腿三頭筋に痛みを感じれば陽性と判断します。
わたしは看護の一環として、患者に下肢の浮腫に左右差がある、血色に左右差がある、足背動脈の拍動に左右差があるときなど深部静脈血栓症の疑いがありそうなときは、ホ―マンズ徴候を行うようにしています。
膝関節を進展させた状態で、足関節を背屈させます。適切に評価するためには、このとき下腿三頭筋がしっかり伸びることを意識して背屈させてください。
深部静脈血栓症とは
深部静脈血栓症とは、血管内に血栓ができる病気です。原因は長時間の同一姿勢で起こるエコノミー症候群や下肢の術後、麻痺や高脂質血症、腓骨神経麻痺などがあげられます。深部静脈血栓症については以下の記事を参照にしてください。
深部静脈血栓症(エコノミー症候群)の症状と看護~肺塞栓症の予防~
最近大地震の勃発で避難所でよくエコノミークラス症候群(静脈血栓症)が起こるようになり、いわゆる「血栓症」が良く知られるようになってきました。まだ4年目の看護師の私でさえ、地震は関係なく血栓症で亡くなっ |
深部静脈血栓症は、発症すると致死的な肺血栓塞栓症の原因にもなる怖い病気です。
深部静脈血栓症を疑うときは、ホ―マンズ徴候テストを行い、深部静脈血栓症の増悪や肺血栓塞栓症を予防に努める必要があります。
ホ―マンズ徴候陽性でふくらはぎが痛い理由。なぜ血栓があると痛いの?
血栓があるとホ―マンズ徴候陽性となり、ふくらはぎに痛みがおこります。なぜ痛みが起こるのでしょうか?
その理由と原因について以下にまとめます。
ホーマンズ徴候が起こる原理
深部静脈血栓症が一番よく出来る部位は、心臓から遠く血流が悪くなりやすい下肢、特に下腿です。本来人間は歩行によって下腿の筋肉(腓腹筋含む下腿三頭筋等のふくらはぎあたり)が収縮し静脈の血流を促しています。これを筋ポンプ作用といいます。ウシの乳しぼりと同じ原理で、外から圧迫されることで、乳が促されて出るように、血流も筋肉からの圧迫で促されるようになっています。
画像:サイト
長時間の同一体位や安静、麻痺に等から下腿の筋肉を使わないと上記のような筋ポンプ作用が起こらなくなり、下腿に血流がうっ滞し血栓ができて深部静脈血栓症を起こします。
血栓ができている部位より下の血管は膨張して、静脈圧の上昇による内膜損傷により静脈炎をおこします。
下肢を伸展した状態で底背屈運動を行うと、下腿三頭筋の伸展により、静脈炎を起こしている静脈(腓骨静脈、前腓骨静脈、後腓骨静脈等)あたりが圧迫され、静脈圧がさらに上昇し、静脈炎をおこしている炎症部位にストレスがかかるため痛みを感じます。これがホ―マンズ徴候「陽性」の原理です。
ホーマンズ徴候はどんな症状があるときにみるべきか?
ホ―マンズ徴候はどんな症状があるときに、合わせておこなえばいいのでしょうか?
一般的には、深部静脈血栓症(DVT)を疑う患者に、深部静脈血栓症の症状と合わせて観察します。深部静脈血栓症(DVT)には以下のような症状があります。
- 急激に起こる下腿の腫脹、疼痛、あるいは色調変化
- 浮腫
- 呼吸困難や胸痛
- ローエンベルク徴候
・・・下腿に血圧測定用のカフを巻き加圧すると、100~150mmHgの圧迫で腓腹筋あたり(ふくらはぎ)に疼痛が生じます。腓腹筋の圧痛は、静脈血栓塞栓症の徴候です。
- 表在静脈の怒張
- 足背動脈・膝窩動脈の触知困難もしくは触知不可
深部静脈血栓症の病態や詳細については以下の記事を参照にしてください。
深部静脈血栓症(エコノミー症候群)の症状と看護~肺塞栓症の予防~
最近大地震の勃発で避難所でよくエコノミークラス症候群(静脈血栓症)が起こるようになり、いわゆる「血栓症」が良く知られるようになってきました。まだ4年目の看護師の私でさえ、地震は関係なく血栓症で亡くなっ |
ホーマンズ徴候のやり方と観察方法
ホ―マンズ徴候を評価する方法は、膝を伸展した状態で足首を背屈することで評価できます。
深部静脈血栓症を起こしている可能性がある人は、他動的に足首を背屈する底背屈運動を行うと腓腹筋あたり(ふくらはぎ)あたりに痛みがあります。
痛みの訴えを観察しましょう。
ホ―マンズ徴候のやり方については、以下の動画を参照にしてください。
ホーマンズ徴候の評価と禁忌事項
ホ―マンズ徴候の評価に禁忌といわれることはありませんが、勢いをつけすぎたり、力を入れすぎることで以下のようなリスクが考えられます。ホ―マンズ徴候を評価するときは、ゆっくり患者の反応みながら行う必要があります。
- 一気に血管へ圧力がかかり、血栓が飛んでしまう可能性がある
- 血管圧が上昇することで静脈炎が悪化する可能性がある
- 麻痺がある患者の場合、他動運動の力加減によって関節を痛めることがある
ホーマンズ兆候の概要まとめ
ホーマンズ兆候とは、深部静脈血栓症の評価として行われるテストのことです。ホーマンズ兆候が陽性の場合、下腿に血栓ができている可能性があります。ホーマンズ兆候は、急激に起こる下腿の腫脹、疼痛、あるいは色調変化・浮腫・呼吸困難や胸痛・ローエンベルク徴候・表在静脈の怒張・足背動脈・膝窩動脈の触知困難もしくは触知不可が認められる時に行います。
ホーマンズ兆候を行う際は、関節や筋肉を痛めたり、血栓が飛んでしまったり、静脈炎を悪化させる可能性もあるので、ゆっくり患者の反応を見ながら行う必要があります。
深部静脈血栓症は、血栓が飛んでしまうと肺塞栓症など急変のリスクもあり、ときに若年層でも急死に至ることがあるとても危険な状態です。深部静脈血栓症の疑いがある患者に対し、ホーマンズ兆候で血栓症の評価をできれば、そのリスクも回避することができます。
「このひと血栓症かも?」と思うようなことがあれば、ぜひホーマンズ兆候をチェックしてみてください。肺塞栓症を回避できるかもしれません。
ホーマンズ兆候についてはこの辺で。
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