ストーマの看護と観察項目



シンママナースの マリアンナ です。

 

ストーマを作る。

それは患者にとって、毎日の生活やボディイメージの変化、精神的な負担感、病気に対する不安など、人生における大きな試練でもあります。

だからこそ、看護師のサポートがとても大切。

 

ストーマを苦手なもの、面倒なものとして患者に認識付けるか、これから一緒に付き合っていこうという前向きな気持ちを持てるかは看護師にかかっています。

この記事では、ストーマに関する知識と観察のポイントをまとめています。

 



ストーマとは

 

ストーマの由来

ストーマというのはギリシャ語。

これには「口」という意味があり、そこから「腹壁に造られた排泄用の口」ということでこのように呼ばれるようになりました。

日本語では「人工肛門・人工膀胱」とよびます。

 

ストーマとは

何らかの病気が原因で肛門から排便ができなくなった、もしくは尿道口から排尿ができなくなってしまったために、手術で人工的に造った排泄口のことを「ストーマ」と呼びます。

ストーマには筋肉(括約筋)がないため、排尿便を我慢することができません。

そのため皮膚にパウチと呼ばれる袋状の尿や便を溜める装具をつける必要があります。

ストーマにはおもに消化管ストーマと尿路ストーマの2つがあります。

またストーマを造設したひとのことを「オストメイト」と呼びます。

 

人工肛門・人工膀胱ともに目的や部位、ストーマの形、機能などに違いがあります。

患者にはどの場所に、どの種類のストーマが造られたのか把握しておくことが重要。

この記事では消化管ストーマに焦点を絞ってお話ししていきます。

 



ストーマが必要となる疾患とは?

 

ストーマが必要となる原因疾患は下の表に記します。

さまざまな疾患によって腸自体にトラブル(穿孔、通過障害、瘻孔など)があるために機能を果たせなかったり、排泄口である肛門の損傷のために排せつができなくなる疾患に適応があります。

一時的にストーマを造ることで病変部への負荷を避けたり、減圧のためなど治療目的で一時的に使用する方法もあります。

分類 疾患
潰瘍 大腸がん 肛門がん 家族性大腸腺腫症 婦人科疾患 泌尿器疾患 がんの浸潤
炎症 大腸憩室炎 炎症性腸疾患 大腸炎(閉塞性、出血性、偽膜性) 難治性痔瘻   直腸膣瘻 放射線性腸炎
損傷 腸管・肛門の外傷 内視鏡などによる医原性腸管損傷 特発性・宿便性大腸穿孔
血管性疾患 上腸間膜血栓症 虚血性大腸炎
神経性疾患 脊髄損傷 脊髄腫瘍
先天性・体質性疾患 巨大結腸症 重症便秘症 腸管軸捻転症 腸重積など

参考:Narsing Selection②消化器疾患 (発行所 学習研究所) P427 表5‐32より

監修 飯野四郎(前聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科教授 陣田泰子(聖マリアンナ医科大学病院看護部長)

 



消化管ストーマの種類について

 

ストーマは造られた部位や一時的なものか永久かなど、それぞれ種類が異なります。

排便の性状や装具の違いがありますので、担当の患者はどの位置にどの種類のストーマが造設されているのか確認しましょう。

 

部位による分類

 

 

  1. 回腸ストーマ:水様便 皮膚刺激強
  2. 上行結腸ストーマ:泥状便
  3. 横行結腸ストーマ:泥状~軟便 皮膚刺激㊥
  4. 下行結腸ストーマ:軟便 皮膚刺激弱
  5. S状結腸ストーマ:有形便

 

回腸ストーマをイレオストミー、上行・横行・下行・S状結腸ストーマのことを総じてコロストミーと呼びます。

下段の赤字は排出される便の性状と皮膚に対する刺激性を表わしました。

 



造設の目的による分類

 

永久式ストーマ

がんの浸潤や外的損傷などにより、もともとある肛門の機能が完全に失われている、もしくは切除の必要がある場合に肛門の代用として別の場所に排泄口を造ります。

そのため生きている限りずっと造られたままのものであり、これを「永久式ストーマ」といいます。

 

一時的ストーマ

潰瘍性大腸炎や腸管切除後の縫合不全などで病変部への刺激を減らしたい場合、病変部を温存するため便汁が流れないようにする目的で病変部より前段階でストーマを造設します。

またイレウスや巨大結腸症(結腸が異常に巨大になる状態)など、腸内の圧を下げる減圧目的で造設することがあります。不都合な状態が治療により改善すれば、のちに閉鎖されるものでこれを「一時的ストーマ」とよびます。

 



開口部の数による分類と特徴

 

単孔式ストーマ

 

  • 腸を切り離して口に近いほうの腸を引き上げ、腹壁に開けた口から引き出す方法
  • 文字通り排泄口が1つだけで排出されるものは便のみ
  • 形はほぼ円形をしている
  • ほとんどが永久的ストーマとなる
  • 直腸と肛門自体を切除する場合に多く用いられる術式である
  • 便の排泄路を完全に変更してしまうので、基本的に肛門からの排泄はない
  • おもにS状結腸が使われる

 

 

双孔式ストーマ…係蹄式(ループ式)ストーマ、二連銃式ストーマ、完全分離式ストーマ

 

  • 腸を切り離し、口に近い側と肛門に近い側の両方に排泄口を開けたものである
  • 双孔式ストーマは便が排出される口側と粘液が出る肛門側の2か所の排泄口がある
  • 症例としてはループ式ストーマが造られることが多い
  • 一時的ストーマとして造られることが多い
  • 回腸・横行結腸・S状結腸にしばしば造られる
  • 双孔式は基本的に肛門を温存しているため、場合によっては元の肛門から粘液や便がでてくることがある

 



ストーマの観察項目・観察ポイント

 

  • ストーマの部位・サイズ・形

…そのひとにとって標準のサイズや形を把握しておくことで、異変に気付きやすくなります。写真などに撮って記録しておくと、後々にも確認ができます。

 

  • ストーマの色

…正常なストーマ色は赤色か濃い赤色をしています。うすいピンクは貧血の疑いがあります。

暗赤色・青紫色・黒色は循環障害を起こしている可能性があるので、すぐに医師に報告をします。

ストーマ壊死の重症例では再造設の必要があり患者への身体・精神的な負担が大きくなります。毎日の変化に注意しましょう。

 

  • ストーマ自体の浮腫の程度

…浮腫はストーマ造設後2日ごろが最大となります。その後、徐々に安定し術後2~3か月で完成します。

 

  • 出血の有無

…造設直後の出血は止血が不十分なためであり、医師による止血処置が必要になります。

ストーマ自体は粘膜なので便をふき取るときなどに強くこすると容易に出血します。少量だけなら心配はありません。

ストーマから出血がみられる場合は自然肛門と同様、ポリープ・腫瘍・潰瘍性大腸炎・憩室炎などの可能性があり注意が必要です。

大量出血の場合はストーマ静脈瘤の可能性があり、命に関わりますので緊急の対応が必要です。

 

  • ストーマ周囲の皮膚状態

…肝硬変や肝転移、心疾患などで門脈圧が亢進している場合にストーマ静脈瘤が形成されやすくなります。

ストーマ周囲の皮膚や粘膜面に静脈の怒張(血管がはちきれんばかりに膨れあがった状態)がないか、出血しやすかったり、周囲皮膚に発赤や暗赤色の色素沈着がないか確認します。

よくみられる事例としては、便に含まれる消化酵素が皮膚を消化し皮膚障害(びらん・皮膚炎など)を起こす例とストーマ装具による皮膚損傷の例です。

回腸・上行結腸・横行結腸ストーマは特に便がゆるくアルカリ性の傾向にあるため、皮膚への刺激が強くなります。

またストーマ装具が皮膚に合わなかったり、強引に剥がそうとしたり古いテープやのりが残っていると皮膚が荒れやすくなります。

装具の変更を検討したり交換操作の方法が適切に行われているか確認が必要です。また下行結腸やS状結腸でも下痢や水様便がみられるようなら整腸剤や食事指導が必要になります。

 

  • ストーマ接合部の状態

…粘膜と皮膚の接合部に離開や静脈瘤の形成がないか確認しましょう。

 

  • 排泄物の色や正常

…ストーマの開口部が狭くなるストーマ狭窄では細長い便が排出されます。

便秘や便が硬くなると排便困難となるため、内服の調整や食事指導が必要となります。

便自体に血液が混ざっていないか、下痢や便秘に傾いていないか、排便回数、ガスの有無について確認しましょう。

 

  • 食事量や食事内容

…食事は排便にとって、切っても切れない存在です。食事や水分は摂れているか、しっかり噛んでいるかなど確認します。

また根菜類のような消化の悪い食材はストーマが狭窄している際などに食塊が詰まりやすくなります(回腸ストーマに多い)。

腸内環境を整えるような良質な食事をとるように指導が必要なこともあります。

 

  • ストーマの受け入れ状態

…ストーマができるということは今までの自分と違うような、ボディイメージの混乱につながります。

ストーマを自分で見ることができるか、触れることができるか、ストーマや病気に対する言動、表情など注意深く観察します。

最初は否定的な感情がおこるのも当然ですから、その感情を否定しないようにし受け入れる姿勢でのぞみましょう。

 

  • ストーマ管理の理解度

…患者の年齢や成育歴などをふまえ、ストーマの管理方法が理解できているか、今後も自分でケアができるのか、サポートを入れたほうがいいのか、緊急時の対応方法や家族の協力は得られるかをチェックします。

特に高齢者や認知症のある患者は手厚いサポートを必要としますので、他機関との連携が重要となります。

 

  • 家族の理解や協力

…家族がいる場合は家族に対しても指導を行います。食事内容やストーマ管理のしかた、緊急時の対応方法など理解できているか確認してみましょう。

 



ストーマの看護ポイント

 

術前のケア

 

  • 全身状態の観察

他の手術と同様、全身状態の観察や管理、必要な術前ケアを行います。

 

  • 術前の食事管理

術中、腸を操作するため腹腔内を清潔にする必要があります。このことによって術後合併症の予防と早期回復につながります。

具体的な方法としては、術前数日前より低残渣食(ごぼうやキノコなど食物繊維の多いものや脂質の多いもの、乳製品は避ける。

やわらかく消化のよいものが主)とし前日より絶食。医師の指示通り輸液管理を行います。

緩下剤を内服してもらいますので、排便状況をかならずチェックしましょう。

 

  • 術前オリエンテーション

術前よりストーマについての説明を行いイメージしやすいようにオリエンテーションを行います。

ただし病気や手術、ストーマ造設という人生を揺るがすような体験をしている患者にとって、この時期は混乱しやすく説明自体がストレスになることもあります。

必ず患者の言葉に耳を傾け、気持ちに寄り添って思いを表現できるよう心がけましょう。

急ぎすぎず、患者の理解度や精神状態に合わせて説明を行います。

家族も同様に接するようにします。

説明には絵やパンフレット、おおよその進行計画を使って目でみてわかりやすい工夫をしましょう。

ただし他の患者のストーマ写真を見せるのは、同じようなものが造られるとは限らないためおすすめしません。

模型などを使って説明するほうが効果的です。

説明内容として以下のようなことを話します。できるだけ前向きに患者が受け入れやすい言葉や姿勢で説明を行いましょう。

 

  • ストーマには括約筋がないため、排便を我慢することはできない
  • 直腸の代わりとなるものがストーマ装具であり、これをつけることで排泄のコントロールができる
  • 手順をマスターすればセルフケアができる
  • 日常生活にはさほど支障はない
  • ストーマがあっても仕事をしながら生活ができ社会参加は可能である
  • 身体障がい者として認定されるのでさまざまな福祉サービスが受けられる

 

 

  • 術後のセルフケアの情報収集

患者の成育歴や仕事の状況、日常生活や家族のサポート環境について情報収集をし、術後のストーマリハビリテーションに活用しましょう。

医師と患者の橋渡し役になるよう、手術の説明には同席し患者や家族の反応を確認しましょう。理解が不十分なところは補足したり、質問がないか問いかけてもいいでしょう。後々わからないことがあればいつでも伝えてもらうように話しておくことも重要です。

 

  • 認定看護師との連携

最近では認定看護師が活躍しています。皮膚・排泄ケアの認定看護師(WOCナース)がストーマケアについても専門的な質の高い看護を提供しています。勤め先に認定看護師がいれば力を借りながら、患者の看護をすすめていきましょう。認定看護師は看護実践を通して看護職に対しての指導も職務としていますから、ケア方法について疑問や質問があれば聞いてみるのも勉強になります。

 

術後のケア

  • 術後の観察項目

術後の全身状態のケアを行います。またストーマの状態や異常がないか観察をします。術後考えられる合併症をいくつか挙げておきます。兆候がないかしっかり観察をしましょう。

  • ストーマ壊死、出血、瘻孔、陥没、狭窄、穿孔、感染などストーマ自体のトラブル
  • 小腸閉塞…術後癒着、腸捻転、食物残渣による閉塞などで起こります。
  • ストーマ周囲膿瘍
  • ストーマ傍ヘルニア…ストーマ造設に伴って、腸管を引き出すため腹壁に造られた口から腹腔内の小腸や大網(胃の下側から腸の前に垂れ下がった腹膜のこと)が脱出して、ストーマ周囲の皮膚が膨れ上がること。

 

軽度はベルトで固定したり、圧迫で対応します。重度では外科的手術が必要となります。

 

  • 術後の食事管理

ストーマがあっても基礎疾患で制限がない限りは、基本的に食事制限はありません。ただ太りすぎるとストーマが体形に合わなくなり、陥没やケアのしにくさにつながるため暴飲暴食はやめるよう説明します。回腸ストーマの場合は先ほども述べたように、食物繊維の多い食事をとると狭窄の原因になりますので避けるよう指導します。

またもともと牛乳で下痢をしやすいとか便秘になりやすい体質であるなどの場合は注意が必要。

生活習慣の見直しと必要なら整腸剤や便秘薬など医師にお薬を出してもらうことも必要です。

 

  • 入浴

入浴はストーマをはずした状態で可能です。

ただ便が勝手に排出されてしまうため、その点は説明しておく必要があります。入院中に一度は入浴してみるように促します。最近では入浴用のパウチも用意されています。

 

  • 精神面のフォロー

術後は患者がストーマを受け入れられるか、最も大事な時期です。

しっかり患者の思いを傾聴しつつ、ボディイメージの変化について精神的に受容できているかを評価しながら、患者の精神状態に応じた指導を行っていきます。

 

  • 管理指導

 

患者の準備ができたと判断したらセルフケアの方法について指導を行います。

  • <STEP1>まずは看護師がすべて行い説明をします。パンフレットを用いながらゆっくりと理解しやすい言葉で伝えます。
  • <STEP2>患者ができるところはやってもらい、ところどころ補足しながら最後まで行います。
  • <STEP3>すべてのケアを患者自身で行います。看護師は見守り説明を加え、不十分なところは補充します。

急ぎすぎず、患者の理解度を確認しながら進めます。

たとえばSTEP2まで進んだとしても、患者の状況によっては戻ってもよいでしょう。行ったり来たりしながら最終的にひとりでできることを目標とします。

 

患者が積極的に指導を受け入れられる状態なら、「きれいな形ですよ」「よいストーマができました」など患者が「見てみよう、触ってみよう」と思えるような声かけをします。

「〇日までは私がケアをしますが、〇日からは実際に触ってみましょうね」と目安を伝え、患者が心の準備をできるようにします。また術前に説明していたパンフレットや進行計画を再度一緒に確認するのもよいでしょう。

看護師自身もストーマに対する知識をしっかり身に着けておきましょう。便や臭いが漏れると患者自身は屈辱的な感情を抱くこともあります。丁寧で確実なケア技術を身に着けておきます。

ただ便が漏れることはストーマを装着した患者にとってはよくあることで、慌ててはいけません。漏れてもすぐに対処すれば大丈夫、少しの漏れで早めに対策しておけば、未然に防ぐことができ大量に漏れることはないということを説明しましょう。患者にとっては漏れた時のことを体験しておくことも必要です。失敗を重ねることでうまくなるということを話し、励ましてくようにしましょう。

 

 

 

こちらのPDFでは写真つきでストーマ装具の交換方法をわかりやすく説明されています。

ストーマ装具交換

提供元:一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局制作 WEB版ストーマ外来

 

 

 

退院後の生活を支える

患者は退院すれば終わりではなく、今後も生活は続いていきます。

仕事に復帰するひとはどこで装具の交換をするかなど具体的にイメージしやすいようにアドバイスを行います。

高齢のため自分でストーマの管理ができない患者には、協力できる家族に声をかけ、家族指導を調整します。

また独居など他者の介入が必要な場合、訪問看護や訪問介護など万全なサポート体制を作っておくことも重要です。

退院後も安心して生活ができるためには、困ったときはストーマ外来を活用することやストーマをもつひとの患者会の紹介、社会資源の活用などについても紹介し患者が孤立せずにストーマと一緒に生活していける環境作りが大切です。

 

 



ストーマの看護まとめ

 

最近では直腸がんのような悪性疾患であっても適切な治療やストーマによって、長期の生存が可能になりました。

臨床現場でもストーマをもつ患者に出会う機会は多いでしょう。

 

それだけ基本的な看護ケアであり、看護師にとっては欠かせない技術といえます。

皆さんには、ストーマについての知識技術を蓄え、的確な看護を提供していただきたいと思います。

 

ストーマが必要な患者は大きな不安と自分の体が変わってしまうことへの失望や喪失の感情を抱きます。

患者がストーマを受け入れ、そのひとらしく日々を送れるようになるためには皆さんの確かな技術と知識、励ましが必要なのです。

 

 



参考引用文献

Narsing Selection②消化器疾患 (発行所 学習研究所)
監修 飯野四郎(前聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科教授 陣田泰子(聖マリアンナ医科大学病院看護部長)