膀胱洗浄とは~看護技術:手技と手順の説明~



シンママナースの マリアンナ です。

 

 

膀胱洗浄とは、尿道カテーテルを経由して、生理食塩水などで膀胱内を洗浄する技術のこと。

膀胱洗浄の技術は種類があり、

用手膀胱洗浄(手動で水を入れて洗浄する)

持続膀胱洗浄(生食等を持続的に滴下して洗浄する)

の二通りがあります。

 

いずれにせよ、膀胱洗浄は滅菌操作がとても大切。

なおかつそれぞれの観察ポイントがあります。

 

この記事では、用手膀胱洗浄と持続膀胱洗浄の手技や観察ポイント等について解説しています。

 



膀胱洗浄ってなに?

 

膀胱洗浄とは、その名のとおり膀胱を洗浄すること。

 

がんや尿路感染、膀胱穿孔など様々な理由で尿道カテーテルを挿入している患者が、正常に尿カテーテルを経由して尿を排出できないとき、もしくは閉塞リスク高いときに、この「膀胱洗浄」が役立ちます。

 

  • 浮遊物が詰まって尿カテーテルが閉塞したとき
  • TURーBT術後に組織やコアグラが詰まって閉塞リスクが高いとき
  • 膀胱内コアグラが詰まりやすいとき

 

などなど。

入院中の患者さんは、尿道カテーテルのトラブルに見舞われることがあります。そのなかでもよくあるのが、「閉塞」。ほんとよく詰まるんです。ときどきミルキングだけでは流出してこないような、大物な患者さんがいるんです。

 

なにしてもおしっこが流れない。このままじゃ膀胱がパンパンになって、膀胱破裂しそう。患者さんも苦しい思いをしてしまう。

 

そういったときに、尿カテーテルを経由して清潔な生食などで膀胱を洗浄すると、尿の流れがスムーズになり、膀胱テネスムス(頻回な尿意)を予防したり、安全に持続的な尿路を確保することができます。

 

膀胱洗浄とは本来、CDCガイドラインからも、感染予防のために極力施行しないことが推奨されています。つまり、膀胱洗浄しか方法がないような状況でない限り、あまり積極的にしないほうが良いとされているんですね。

 

カテーテルの閉塞が予測されない限り膀胱洗浄は推奨しない。(例:前立腺手術や膀胱手術後に出血するかもしれないような場合に限り膀胱洗浄する)

参考URL:カテーテル関連尿路感染予防のためのCDCガイドライン2009

 

それでも閉塞するリスクを考えると、膀胱洗浄が必要なら、清潔操作をしっかりして行わないといけない。っていうような看護技術のひとつなんです。

 

 

 

 



用手膀胱洗浄とは

 

用手膀胱洗浄とは、看護師や医師が手動的に膀胱を洗浄すること。

 

どんなときにするの?

 

対象は、

なんらかの理由で

一時的に留置中の尿道カテーテルが閉塞している、閉塞しかかっている

ようなときです。

 

尿が出ず、膀胱がパンパンになって、緊急性が高いときに施行することが多いので、外来看護師や病棟看護師、訪問看護師はしっかり理解しておくべき看護技術です。

 

 

目的

その「詰まり」を解消すれば、安全に尿路が確保されそうなときに、膀胱洗浄を施行します。

 



用手膀胱洗浄の手技と観察ポイント

 

必要物品

  • 生理食塩水
  • 滅菌カップ
  • 50ccシリンジ
  • ネラトンカテーテル(膀胱留置カテーテル患者じゃない場合)
  • 消毒液
  • 綿球
  • セッシ
  • 処置用シーツ
  • 潤滑剤
  • ディスポーザブルエプロン・手袋
  • 陰部洗浄用タオル
  • ゴミ袋
  • 尿破棄用の畜尿ビン

 

 

必要物品準備時の注意

膀胱留置カテーテルを挿入していない患者さんで、膀胱洗浄後も尿カテーテルを留置しそうな患者さんなら、導尿用のネラトンカテーテルではなくて、膀胱洗浄前から留置用の尿カテーテルを準備して挿入してあげると患者さんの苦痛を減らすことが出来ます。

例えば、

  • 尿混濁が強すぎる患者さん
  • 血尿やコアグラが強い患者さん

等は、以降も尿道留置カテーテルを挿入する可能性が高いので、膀胱洗浄前に医師に確認しておくといいですね。

 

 

 

コラグラや血尿が多い患者さんは?

血尿やコラグラが強い患者は、出血性ショックを起こすリスクもあるので、医師とともに施行することが望ましい。

 

 

用手膀胱洗浄の手順

用手膀胱洗浄の手順はおおまかに5段階。

  1. 患者さんの準備
  2. 物品を準備する
  3. (尿カテーテルがない患者なら)尿カテーテルを挿入
  4. 膀胱洗浄の施行
  5. 観察と記録

です。

 

患者さんの準備

患者の不安を取り除いて、安心して膀胱洗浄を受けられるよう、十分な説明を行い、同意を得ます。

女性の場合は膝をたてた状態で開脚して、タオルケットなどをかけ、プライバシーに配慮します。

男性の場合は仰臥位で膝を伸ばしたまま、軽く足を広げ、股の間に物品がおけるスペースを作ります。男性の場合も同様、タオルケットなどをかけてプライバシーや羞恥心に配慮します。

腰部から陰部の下あたりに処置用シーツをひいておきましょう。

 

物品を準備する

手袋とエプロンを着用します。

作業領域を確保して物品を手の届く位置に配置します。

 

(尿カテーテルがない患者なら)尿カテーテルを挿入

尿カテーテル留置をしていない患者なら、尿カテーテルを挿入します。

尿道を消毒し、滅菌セッシで潤滑剤のついた尿カテーテル挿入します。

 

膀胱洗浄の施行

 

1.(留置尿カテーテル挿入中の患者なら)尿カテーテルの接続を外し、尿バッグは不潔にならないようアルコール綿などで保護して置いておきます。

 

2.滅菌カップに生食を入れ、シリンジに生食を30ccほど吸います。

 

3.尿カテーテルの接続部分を消毒し、10ml/秒ほどの速度で、生食を挿入していきます。このとき、患者の苦痛を確認しながら挿入します。

 

4.挿入した生食を、挿入した量だけゆっくり回収します。このときあまり早く回収すると膀胱に陰圧がかかり、痛みが生じることがあるので、挿入したときより遅い速度で回収するようにしましょう。

 

観察点
  • 回収した生食の色、浮遊物の有無、出血の有無など
  • 挿入した量の生食が回収できているかどうか
  • 生食挿入時、回収時の抵抗はどうか
  • 膀胱洗浄後の尿の流出と量、尿の性状

 

 

5.カテーテルから尿がもれないようしっかりおさえてクランプして、シリンジ内の尿を捨てます。

 

6.膀胱内がの目的が達成できるまで、洗浄を繰り返します。膀胱内が洗浄され、浮遊物やコアグラがなくなってくると、生食挿入・回収の抵抗が少なくなり、スムーズになってきます。

 

7.処置を終えたら、患者に処置を終えたことを伝え、ねぎらいます。

陰部を清拭し、衣服を整え、物品を片づけます。

 

観察と看護記録

上記で紹介した観察点などをまとめて記録します。

挿入した生食が回収できない場合や、多量の出血をみとめる場合は、膀胱穿孔や出血性ショックを起こす可能性もあるので、早めに医師への報告が必要になってきます。

 



持続膀胱洗浄

 

持続膀胱洗浄とは、一時的な処置である用手膀胱洗浄とは違い、3wayカテーテルを使って、24時間持続的に生食を挿入して膀胱を洗浄する方法です。

コアグラや組織片が排出しやすいよう、太めのカテーテルを使用されることが多く、20~22Frの3wayがよく使用されています。

 

 

どんなときに持続膀胱洗浄をするの?

持続的膀胱洗浄は、ときに強い尿混濁、コアグラがある患者にも使われることがありますが、一般的には前立腺や膀胱の術後(TURPやTURBTなど)に使用されることが多い。

 

目的

一時的ではない、比較的長いスパンで膀胱から継続的な出血や組織片の排出が考えられるときに、閉塞予防のために行います。

 



持続膀胱洗浄の手技と観察ポイント

 

必要物品

 

  • 生食1000cc(医師の指示による)
  • 成人用ルート
  • 滴下ポンプ

※3Wayが挿入されている患者前提。

 

患者の準備

膀胱洗浄の必要性について説明します。

洗浄を開始したら、腹圧をかけないようにし、屈曲した体位をとらないよう説明します。

 

還流液のセットと滴下

  1. 生食1000ccに成人用ルートを接続し、ルート内を満たします。
  2. 輸液ポンプをセットし、医師が指示した速度に設定します。
  3. 生食1000ccを輸液ポンプにセットし、3wayの洗浄液注入口に接続します。その際、注入口とルート接続部をしっかり消毒してから接続してください。
  4. 指示された速度で滴下を開始します。

 

観察ポイントと看護記録

持続還流中の観察ポイントと記録のポイントは以下。

  • 血尿がある患者なら、血尿スケールの評価
  • 尿量の変化(尿量=排泄量-注入量)
  • 腹部膨満、不快感の有無と程度
  • 尿の色や性状の変化

 

 



膀胱洗浄の看護まとめ

 

尿カテーテルを留置していると、トラブルを起こすことは多々あります。

そのなかでもよくある「閉塞」を予防、早期発見して対処するためには、「膀胱洗浄」の知識は必要不可欠。

膀胱洗浄はガイドライン上極力しないほうがよいとされるものの、尿カテーテルが閉塞しやすい患者などにとっては重要な看護技術のひとつ。

 

緊急時に備えて、的確に対処できるように知っておきたいですね。

以上、膀胱洗浄の看護についてでした。

 

 

 



参考文献