誤嚥性肺炎の看護で注意したいポイント~常に潜在する窒息のリスクを知りましょう~



シンママナースの マリアンナ です。



高齢者の入院の中でとても多い症例、誤嚥性肺炎

高齢化社会に入って、実際入院する患者、救急搬送されてくる患者のほとんどは高齢者ばっかりです。60歳以下がきたら、お、若い。って思ってしまうほど。

高齢者が入院してくるのって、たいてい骨折、脱水、肺炎が多いです。腎盂腎炎とかCOPDとかもあるんだけど、圧倒的に肺炎が多い気がする。っていうかみんなすぐ肺炎になってしまう。まぁ、免疫も落ちている上に、嚥下反射とか咳嗽機能も低下しているので、誤嚥性肺炎を起こすのは仕方ないのかもしれない。

 

症例が多くなると、看護も慣れてきます。あ、また誤嚥性肺炎か、みたいな。でもそうなってきたときって本当に危ない。誤嚥性肺炎って本当はめっちゃ怖いんですよ。確かに絶食して点滴で栄養管理、抗生剤投与していけば、たいがい症状はよくなっていくんだけど、怖いのは誤嚥性肺炎患者の窒息なんです。突然起こるし急すぎて対処できないことが多い。

 



誤嚥性肺炎で一番怖いこと:窒息

誤嚥性肺炎で一番注意したいのは、窒息です。これはあくまでわたしの主観ですが。

わたしは今まで誤嚥性肺炎患者の窒息を2~3件みたことがあります。(そのときは受け持ち看護師じゃなかったけど)いずれも急死されました。今まで見た誤嚥性肺炎患者の窒息での死亡率は正直100%です。まだまだターミナルではない患者でも、窒息を起こすとすぐに呼吸停止、心停止してしまう。

 

まだ経験の浅い看護師のわたしが2~3件窒息死の症例をみているから、きっと世間ではもっとあるんだろうし、誤嚥性肺炎の患者はほんと窒息のリスクが高いんだろうと思います。そもそも解剖学的にも嚥下機能、咳嗽反射機能とかが低下しているひとだから、そら窒息のリスク高いわ、って冷静に考えたら思えるんだけどね。なんか慣れてくるとそういった意識がなくなっていくこともあるんです。

 

窒息を起こすことで怖いのは、いくつか要点があります。看護師が知っておくべき、理解しておくべきことです。

  • 窒息したら声がでない
  • 安全帯している患者、認知が強い患者は助けを呼べない
  • モニタリングしていない患者は急変に気づけない

この3つが誤嚥性肺炎の窒息で怖い要点だと思います。

 

窒息したら声がでない

苦しいとか痛いとか、何か症状があれば自己表現できる患者なら、訴えがあります。

「この人しゃべれるし、訴えが出来るから大丈夫だ」っていう先入観は、窒息のリスクがある患者に持ってはいけません。

油断しがちですが、どれだけ大きな声をだせる患者でも、そもそも窒息したら声が出せません。呼吸気道がつまるわけだから。

だから、この人普段Nsコールすごく押すし。とか、すごく大声だすし。とか訴えができる患者でも、誤嚥性肺炎を起こしている患者なら、嚥下機能が低下しているわけだし、窒息リスクは常に潜在していることを覚えておいてほしい。

窒息を起こした地点で、患者は呼吸停止する恐れがあるのに、声で訴える機能もなくなっているんです。すごい怖いですよね。

 

安全帯している患者、認知が強い患者は助けを呼べない

嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎を起こしてる高齢者って、言い換えれば嚥下機能が低下してごはんがまともに食べられなくなったくらい、老化が進んでいるってこと。つまり、認知機能も低下していたり、ADLも低下している患者が割合多い。だから、誤嚥性肺炎の患者さんって安全帯を使用していたり、自分で何かあったらナースコールを押して看護師を呼ぶっていう行動がとれないことも多い。

でもそうなると窒息しているのに助けを呼べないっていう負の連鎖が起こる。転倒転落のリスクがあって安全帯を使うなら、転倒転落以外に何かリスクはないのか考えるべきだし(ナースコールが押せない、押しにくくなるからね)、認知症がある患者ならモニタリングなりなんなりで窒息が起こらないようにしたい。

 

モニタリングしていない患者は急変に気づけない。訪床しない限りは。

看護師が大丈夫だろうって思っているときの看護ほど怖いものはない。だけどその上にモニタリングしていない患者ならなおさらその患者の看護は怖いものになると思う。

基本、入院しているってことは何かしら体に異常があるから入院しているわけで、何かをトリガーにして、急変する可能性はないなんて言いきれない。まぁ、めっちゃ若くて体力もあって、ただの検査入院。とかだとわかる気もするけど、基本何で入院しようが高齢患者は何か起こると思って接するべし、ですよ。

だけどすべての高齢者にモニターってつけれるわけじゃない。誤嚥性肺炎の入院ってよくあるけど、モニターが足りない、つけてないなんて日常茶飯事です。いつものことだからそれが当たり前のように慣れてしまうけど、これって本当に怖いことで、看護師がすっごく注意しないといけない。いつ窒息するかわからない人間に、モニターついてないんですよ?すんごい怖いことだとおもいませんか?わたしが思うに、窒息リスクがあるような患者さんは看護師が頻回訪床して、実際に状態を観察、確認するしかないんだと思います。そうでもしないと、もし窒息とかで急変を起こしていても気づけなかったってことになりますからね。

 



人の目が少なくなる夜勤帯は注意して

いつでも患者に対して、目を配ることは看護師の努めだけど、とくに注意してほしいのは夜勤帯です。

誤嚥性肺炎ならなおさらです。わたしが今までに知っている窒息での急死を起こした症例は、いずれも夜間帯(しかも夜中の2時とか3時とか)でした。

 

いろんな条件が重なって、夜勤って怖いんです。だからこそ、しんどいけど看護師ならよりいっそう気合いをいれて、患者を見てほしい。

夜勤が怖い条件は以下のような要点があげられます。新人看護師さんなら、なおさらしっかり心して覚えてください。

 

夜勤が怖い原因

  • 日勤帯ならいるはずの掃除婦さんやヘルパーさんがいない、もしくは少ない
  • 看護師の数が劇的に少ない
  • 看護師の体力が著しく低下する
  • 患者が寝ているのとレベル低下の見分けが付きにくい

そんな条件が重なって患者の観察に抜け目がでる、って感じでしょうか。

 

もう読んでるだけで怖くなってきた。わたし。

そう、夜勤っていろんな意味で怖いけど、わたしは上記の4つがほんとこわいので、夜勤のときは患者の観察を入念に頻回にするようにしています。

日勤帯ってなんだかんだいって看護師やヘルパーや掃除婦とか従業員がいっぱいいるし、なにかあったとき誰かが気づくチャンスがあります。しかも朝ごはんや昼ご飯、保清とかイベントがいろいろあるから、患者が急変したとしても誰かが気づくっていうのがあるけど、夜勤はほんとそういったイベントがないし人も少ないから、看護師が注意して患者を観察するしかないんですよね。

窒息とか起こしてても、声も出してないし、寝てるのかレベル低下しているのかもわかりにくい。看護師がしっかり見てないと、何が起こっているのやらわかりませんから。

 



大丈夫だな、と思うときが一番危ない

看護師として仕事しているときに、「うん、大丈夫だな」って思うことないですか?

いや、大丈夫じゃないですよ。

基本高齢者とか特に大丈夫なんて言葉、ないですよ。

 

医療事故はいつ起こるのか。

わたしの中で医療事故が起こる原因は「看護師が大丈夫と思って油断したとき」だと思う。

わたしが今までみてきた窒息とか急死とかが起こっているとき、それは看護師がたいてい「大丈夫」って思って油断していたときでした。

 

っていうか看護師の仕事に大丈夫とかない。どの患者でも、なにが起こるかわからない。

もし先輩看護師とかが、大丈夫って思っていたり、みんなが大丈夫って思ってそうな雰囲気でも、何が起こるかわからないという気持ちで患者を観察しましょう。

看護師の仕事に大丈夫って言葉は悪魔のささやきのようなものですから。

大丈夫なら、入院はしてこない。それか、退院してるから。

 



看護師としてなんとしても患者の急死だけは避けたい、わたしの看護観

看護師としてなんとしても患者の急死だけは避けたい。当たり前のことなんですけどね。

でもたとえ致し方のない死ってあるじゃないですか。もうターミナルで死を目前にした人でも、その死の瞬間を看護師として逃したくないんです。

 

家族が到着したときに、「もうすでに死んでました」っていうシチュエーションがいやなんです。

すでに亡くなっている患者をみたときの家族の顔、なんともいえない後悔の念みたいなものを感じる。「間に合いませんでしたか」と患者の家族に言われる看護師の辛さ、なんて表現したらよいのかわからない。すごく申し訳なくなるんです。「もっと早く気づいて、もっと早くに連絡したらよかった」とか思う。

患者さんがもう死を迎えるってとき、家族に連絡したけど、到着が間に合わなかった。よくあることかもしれないし、患者の家族によっては、その患者の最期を一緒に過ごすかどうかに重きを置いていないひともいるけど。

でも、患者との最期を一緒に過ごしたかったって思っている家族さんにとっては、人生のなかでもすごく重要なワンシーンですよね。

だからその時が訪れるのを、看護する立場として早めに察知して、家族と患者さんがちゃんとお別れをできる場面を作ってあげたい。

大切な家族が亡くなる前に「ありがとう」や「さよなら」を伝える機会があるのは、残された家族が精神的に「家族の死」っていう過酷な体験を受け入れるのに、とても重要なシーンになると思うんです。

だから看護師として、そのタイミングを見逃さないようにしたいんです。

 

でもそれ以上に、ターミナルじゃない限り「急死」を起こさないようにするのが看護師の仕事です。

急死って患者さん自身の人生も変わってしまうし、家族もお別れの準備ができていない上に、最期のお別れも言えない。なおさら悲しい別れのシーンになります。

誤嚥性肺炎って高齢者によくある病気だけど、窒息っていう怖いリスクも持ち合わせる病気です。よくある病気とはいえ油断は禁物。

そうならないように、頻回に訪床して、患者の状態を観察してます。

 

看護師の仕事って大変だなー。。