CVポート管理の看護~ガイドラインに基づいた「看護技術の根拠」~



シンママナースの マリアンナ です。

この記事では、ヒューバー針交換やドレッシング材張り替えの手技、CVポートの基礎知識、ガイドラインに基づく看護技術の根拠など、「CVポート管理における管理方法」について説明しています。



CVポートとは

CVポートとは、中心静脈カテーテルの一種で、皮下埋め込み型ポートとも呼ばれています。 上腕や鎖骨下あたりの皮膚の下に100円玉くらいの血管とリンクしているポートを埋め込み点滴を行います。

CVポートを挿入すると、常に太い静脈へのルートが確保された状態になるので、高カロリー栄養や長期間にわたる点滴栄養等を簡易に行うことができるようになります。

CVポートの適応

CVポートは以下のような症例において、適応されます。

  • 末梢血管が細く、もろくなり点滴ができない
  • 末梢点滴を維持できないが長期点滴栄養を必要とする
  • 化学療法で頻回に注射を行う必要がある

 

 

CVポートの構造

CVポートは針を刺入する部位となるシリコンゴムでできたセプタムという部分と、血管に挿入するカテーテル、大枠となるポート本体から成り立ち、CVポート専用のヒューバー針から成り立ちます。

  • CVポート本体
ポート本体

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  • ヒューバー針
ヒューバ―針

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ポートを挿入する場合、局所麻酔下(全身麻酔ですることもある)手術室で本体を体内に挿入します。カテーテルを鎖骨下静脈・内剄静脈等ポート挿入予定部位と近く太い血管に挿入し、そのカテーテルをポートと接続して皮下に埋め込みます。手術自体は局所的で侵襲も比較的少なく抑えられます。認知症等が強く安静が守れそうにないなら、全身麻酔等も考えらえますが、局所麻酔で挿入することが多いです。

  • ポートのカテーテルを血管に挿入する図
ポートのカテーテルを血管に挿入する図

ポートを挿入したら、ヒューバ―針をポートのセプタムに差し込み、点滴を行います。末梢血管より安定してルートを確保でき、患者の痛みも少なくできます。

・ポートのセプタムにヒューバ―針を挿入している様子

ポートのセプタムにヒューバ―針を挿入している様子

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CVポートの説明に関して、このサイトの動画がビジュアル解説を行っていて、とてもわかりやすく説明してくれています。

http://chemo-support.jp/medical-apparatus/cv-port.html

 



CVポート管理:ヒューバー針とドレッシング材の交換

CVポートを挿入したら、CVポートの合併症を予防するためにもCVポートの管理が必要になります。定期的な針とドレッシング材の交換、ルートのフラッシュ等です。ちなみに、どれくらいの頻度でヒューバー針を更新したらいいのかってなるんですが、「CVポート管理:望ましい交換頻度って?「CDCガイドライン」から抜粋」にも掲載している通り、CVポートのヒューバー針更新頻度は明確なガイドラインは公表されていません。これくらいに更新したほうが良い!っていうエビデンスみたいなのはまだないんですね。現状CVポート管理については、たいてい病院や訪問看護のルールや医師指示に基づいて行われています。

 

ただどんな頻度でヒューバー針を更新するにしても、ポート針を交換するときは清潔操作がとても重要になります。上記ガイドラインからの抜粋です。

 

手指衛生と無菌操作

  • 普通の石鹸と水で手を洗うか擦式アルコール製剤(ABHR:alcohol-based hand rub)を用いて手指衛生を行う。手指衛生は、血管内留置カテーテルの挿入、交換、アクセス、修復、ド
    レッシングの前後だけでなく、カテーテル挿入部位の触診の前後にも行わなければならない。無菌操作が守られない限り、消毒薬の塗布後に挿入部位の触診は行ってはならない。
  • 血管内留置カテーテルのドレッシングを交換するとき、清潔手袋か滅菌手袋のいずれかを着用する。(P7より抜粋)

 

背景

  • カテーテルの挿入前や維持管理前の手指衛生は、カテーテル操作時の適正な無菌操作とともに、感染予防に役立つ。手指衛生を正しく行うには、アルコール系製剤か 石鹸を使って水で十分に洗う。適切な無菌操作では、末梢カテーテル挿入の場合、滅菌手袋は必ずしも必要ではなく、新しい使い捨て非滅菌手袋を「ノータッチ」操作とともに末梢静脈カテーテルの挿入に使うことができる。中心静脈カテーテル留置の場合は、「ノータッチ」操作ができないため、必ず滅菌手袋を着用しなければならない。(P22より抜粋)

 

看護師も慣れてくると注射なんか素手でペペっとアルコール綿で拭いてスっとさしてしまうのが現実かとおもいますが、CVポートを管理する場合、ポートが埋め込まれているからといって普通の注射のように扱ってはいけないんですね。CVポートの管理をする上で、CVポートは中心静脈に直接アクセスしているルートであることをふまえて、清潔操作で管理をする意識が必要です。

 



CVポート管理

CVポート管理において、CVポートのヒューバー針交換と、ドレッシング交換の手技について説明します。

必要物品

  • ヒューバー針
  • ドレッシング材
  • 消毒物品(0.5%クロルヘキシジンアルコール製剤を使用する。前途が禁忌の場合、ヨードチンキ、ヨードフォア、70%アルコールのいずれかを代替消毒薬として使用する)
  • 固定用テープ
  • 清潔手袋 もしくは 滅菌手袋(2回分)
  • シリンジ(20ml)
  • 生理食塩液(20ml)
  • 滅菌ガーゼ

準備

  • 手洗い、手指消毒を行ったうえで、患者へヒューバー針を交換することを説明する。
  • ヒューバー針を生理食塩水で満たしておく。
  • カーテンを閉めプライバシーに配慮し、ポート部分を露出する。

観察項目

  • 刺入部、ポート周辺にトラブルがないか
  • バイタルサインに感染兆候はないか

 

手技

現在のヒューバー針を抜針する

手袋をつけてドレッシング剤をはがします。

  • アルコール綿を出しておいてから、挿入されているヒューバー針を抜針する。この時しっかりポートをつかんだ状態で、ゆっくり行うこと!※勢いよく抜くと針刺し事故を起こすことが結構あります!慎重すぎるくらいゆっくり抜きましょう!
  • 抜針できたらアルコール綿で止血します。
観察項目
  • 過剰な出血はないか
  • ヒューバー針が当たっていたところに皮膚トラブルを起こしていないか

 

消毒して新しいヒューバー針を挿入する

  • 消毒物品でポート挿入部を、中心から外へ円を描くように消毒します。
  • ポートが動かないようにしっかり抑えて生食で満たしたヒューバー針をゆっくり直角にさします。針の先がコツっと奥にぶつかる間隔があるまで、針を進めます。この時、前に挿入していた部位とずらして挿入するようにしましょう。
  • ヒューバー針を挿入したら、褥瘡予防のためにヒューバー針の根元の下に滅菌ガーゼ等を小さく切ったものをクッションにしてドレッシング材で保護しましょう。透明のドレッシング材で保護するときは、観察しやすいよう刺入部が見えるように貼付します。
観察項目
  • 患者が自制不可な痛みを訴えていないか

 

固定する

  • ルートはテンションがかかったときに抜けにくくするよう、ループにしてテープで2か所以上固定します。オーム型で固定するようにしましょう。また、以前ルートを固定していた部位からずらして固定するようにします。
ループ固定

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オーム型テープ固定方法については、以下記事中「ドレーンの自己抜去・自然抜去を防止する」に掲載していますので参考にしてください。

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CVポート合併症:セプタムあたりの痛みはなぜ起こる?

炎症によるもの

針の刺入時は仕方ないですが、セプタムあたりに患者が痛みを訴えたとき、もしかしたら炎症を起こしている可能性があります。感染兆候がまだなくても、今後感染が広がる可能性があるので、消毒とドレッシング材の交換、ヒューバー針の交換を行うことが望ましいかもしれません。

圧迫や固定によるもの

セプタムあたりに痛みがある場合、ヒューバー針の固定によって皮膚に圧力が加わって痛みを生じている可能性があります。そのまま放置すると皮膚トラブルや剥離の原因になるので、再固定が必要になります。

 



CVポート合併症:閉塞・感染等

閉塞

CVポートを長期的に挿入していたり、管理が届いていないと閉塞したりすることがあります。フラッシュしても通らない、滴下も落ちないような状態になります。

感染

CVポート管理で清潔操作が十分でないと感染を起こすことがあります。CVポートを入れているひとで、原因不明の不明熱が出ていたら、CVポートが原因だったりしますね。カテーテルによる感染をCRBSIといいます。CDCガイドラインでは、CVポートの感染予防のためには、保清ケアの徹底と、CVポート管理における清潔操作の重要性が明記されています。保清の重要性については根拠とともに下記「CVポート管理:CVポート挿入中、入浴はしていいの?」「CVポート管理:毎日清拭しよう!~CDCガイドラインから促されている清拭の重要性~」に記載しています。

 

CVポート管理:CVポート挿入中、入浴はしていいの?

CVポートを挿入している患者さんの入浴について、ポート部分をドレッシング材などで正しく保護するなら、入浴が可能であることが「「血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011」に明記されています。以下抜粋です。

カテーテルやカテーテル部位を水に浸さない。カテーテルへの微生物侵入の確率を減らす対策(例:カテーテルと接続器具をシャワーの間、不浸透性カバーで保護する)を講じることができる場合、シャワーを浴びることは差し支えない。(P25より抜粋)

以下「CVポート管理:CVポート挿入中、入浴はしていいの?」「CVポート管理:毎日清拭しよう!~CDCガイドラインから促されている清拭の重要性~」にも記載していますが、CVポートやCVカテーテル問わず、中心静脈カテーテルを挿入している患者の保清ケアってCRBSI(カテーテル感染)予防のためにもとても大切です。保清を行うときは、CVポート部分が水で濡れないように正しく保護して行うようにしましょう。

 



CVポート管理:逆血がないとき、これって閉塞なの?

CVポートで逆血を確認したけど、逆血がない。これって閉塞なの?ってなるんですけど、ポートの閉塞って一概に逆血がないから閉塞っていうわけでもないんです。CVポートは挿入したてのときは確かに逆血確認ができるんです。でも、時間の経過とともに滴下は良好でも逆血がなかなか確認できなくなるんです。不思議。恐らく体内に挿入されたカテーテルもしなりがなくなって狭くなっていくのかもしれませんね。動脈硬化みたいに。逆血がなくてもフラッシュしたら結構すいすいシリンジを押せたりします。シリンジも押せなくなったり、滴下もできなくなれば閉塞だと考えていいと思います。

 

 

CVポート管理:毎日清拭しよう!~CDCガイドラインから促されている清拭の重要性~

CVポート管理において「血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011」では、カテーテル感染予防には毎日の皮膚清拭が有効であることをエビデンスとして説明されています。

以下抜粋です。

勧告
CRBSI(カテーテル感染)を減らすために2%クロルヘキシジンで毎日の皮膚清拭を行う。
背景
2%クロルヘキシジン含浸タオルでICU患者の清拭を日常的に行うのは、原発性BSIの割合を低下させるのに単純で効果的な対策かもしれない。ICU患者836人を対象にした単一施設研究では、クロル
ヘキシジン介入を受けた患者は、石鹸と水で洗われていた患者よりも原発性BSIに罹る確率が有意に低かった
(1,000患者日あたりの感染例4.1 vs 10.4、発生差6.3[95%CI 1.2~11.0]。

 

つまり毎日行っている保清という看護ケアも、患者の治療や有意義や療養生活に貢献できているってこと。改めて、看護の一環である保清の重要さを感じる根拠です。

 

 

CVポート管理:望ましい交換頻度って?「CDCガイドライン」から抜粋

余談になりますが、「血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011」では、CVポートのヒューバー針交換頻度について以下のように述べられています。

 

  • 皮下埋め込み型ポートにアクセスするための針の交換頻度に関して勧告することはできない。
  • 皮下埋め込み型ポートにアクセスするために使用される針を留置する期間に関して勧告することはできない。

P43より

 

ヒューバー針の適切な交換頻度の定義がないっていうか、どうもCVポートヒューバー針の適切な交換頻度について十分な研究がされていないため、「何日に1回はヒューバー針を交換しなさい!」っていう定義がまだ作れないみたい。早く作ろう。

実際のその根拠を示す文章がこちら。

「背景

静注点滴セットのルーチン交換についての最適な間隔は十分な対照研究とメタ分析で調べられている。これらの研究から得られたデータから、使用開始後72~96時間毎よりも頻回にならないように点滴セットを交換するのが安全で費用効果の高いことが明らかにされている。最近の研究では、抗菌物質含浸カテーテルとの関連で使われる場合、または、微生物増殖を助長する液体(例:中心静脈栄養輸液または血液)が使われていない場合、点滴セットが最大7日間安全に使用できることが示唆されている。微生物増殖を助長する液体(例:脂肪乳剤、血液製剤)が注入されるときは、これらの製剤がCRBSIの独立リスク因子と特定されていることから、点滴セットをさらに頻繁に交換する必要がある。埋め込みポートへのアクセスに使用される針が留置されている期間とCRBSIのリスクに関してデータがあまりない。いくつかの施設では針を数週間留置させてもCRBSIの発症を招かなかったところもあるが、この処置はまだ十分に研究されていない。

ちなみにCRBSIとは、カテーテル関連血流感染のこと。

頻回に交換するからといって良いとも言えないし、数週間放置してから交換するからだめっていうわけでもないけど、ひとつ言い切れるのは、CVポートに触れる時、つまりヒューバー針を更新したり、ドレッシング材を張り替えたりするときは、絶対的な清潔操作を守ることがカテーテル感染を予防するのに大事になるわけですね。

 



CVポートのヒューバー針交換時の望ましい消毒薬は?「CDCガイドライン」から抜粋

CVポートのヒューバー針交換時の消毒方法について、「血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011」では以下のように述べられています。

 

「背景

十分に設計された2件の研究において、血管内留置カテーテル挿入部位のケアに関して、ポビドンヨードまたはアルコールとの比較でクロルヘキシジン含有の皮膚消毒薬による処置を評価したところ、クロルヘキシジンの使用と関連してカテーテルコロニー形成またはCRBSIの割合が低いことが明らかになっている。(ちなみに、グルコン酸クロルヘキシジンアルコール製剤とポビドンヨードアルコールとの比較は行われていない。)0.5%クロルヘキシジンチンキは、10%ポビドンヨードと比較して、中心静脈カテーテル(CVC)コロニー形成またはCRSBIの差は見られなかった。 3つの消毒薬の比較研究(2%グルコン酸クロルヘキシジン水 vs 10%ポビドンヨード vs 70%アルコール)では、2%グルコン酸クロルヘキシジン水は、10%ポビドンヨードまたは70%アルコールと比較して、CRBSIを減少させる傾向があった。カテーテル事例4,143件についてのメタ分析では、ポビドンヨードと比較して、クロルヘキシジン製剤はカテーテル由来感染リスクを49%(95%CI 0.28 ~0.88)低減していることが示唆された。入手可能なエビデンスに基づく経済的決定分析では、CVCケアにポビドンヨードよりもクロルヘキシジンを使用することで、CRBSI発生率の1.6%低下、死亡発生率の0.23%低下、使用カテーテル1本あたり113ドルの節減につながることが示唆された。クロルヘキシジンは中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル両方の挿入のための皮膚消毒で標準消毒薬となっているが、70%エタノール含有の5%ポビドンヨード液も、10%ポビドンヨード液と比較して、CVC由来のコロニー形成と感染の大幅な低減と関連していた。」

 

うーん、つまり現在最新の根拠としてはCVポートのヒューバー針交換に理想的な消毒液は、

  • クロルヘキシジン
  • 70%エタノール含有の5%ポビドンヨード液
  • 2%グルコン酸クロルヘキシジン水

あたりといえるのかもしれない。

このあたりは患者の皮膚状態と見合わせながら、選択していきたいですね。