【看護記録】SOAP:基礎からわかるSOAP記録の書き方【カルテ】



シンママナースの マリアンナ です。

看護記録SOAP(ソープ)は、看護展開における分析方法です。新人看護師や看護学生のとき、一番頭を抱えるのはSOAPの書き方・記入方法です。まずS・O・A・Pそれぞれが何の項目か、SOAPの概念や目的は何かを理解しないとSOAPは書けません。なのでSOAPをかなりかみ砕いてまとめています。SOAPを知り、簡単な症例からSOAPの書き方を学びましょう。

看護記録:SOAPとは~SOAPの概要と目的~

まずSOAPの概要と目的を知りましょう。



看護記録:SOAPとは

看護過程におけるSOAP(ソープ)とは、看護過程におけるカルテ入力の書式のことです。

現在の日本の医療で主流である看護記録は、「問題志向型システム(POS:Problem Oriented System)」が主流。「問題志向型システム(POS)」とは、治療の軸を患者の持つ「問題」とし、その問題に沿って治療や看護展開がされていく治療過程のことです。看護記録のSOAPは、この「問題志向型システム(POS)」をベースにしています。つまりSOAPとは、患者の問題にフォーカスした看護師の記録ともいえます。

 

もう少し深めていきましょう。SOAPの構成をひとつずつ理解していきます。

看護記録のSOAPは以下の項目から成り立ちます。

S(Subject)=主観的情報

患者の訴えていること。

O(Object)=客観的情報

所見や診察・検査から得られたS以外の情報。

A(Assessment)=アセスメント

SとOの情報に対し、看護師が考えたこと。

P(Plan)=看護計画

Aに対し看護師が必要だと思ったケアや処置、行動等。
看護記録SOAPの形に乗っ取って看護介入していくと、おのずと患者の問題を考察するようになり、患者の持つ問題に対する看護計画が立案されていくようになります。



医療チームが患者情報を共有しやすいよう意識して書こう

SOAP記録は、患者の問題に対し看護師がなにを考えて何を行ったかパっと見るだけでわかる記録でもあります。医師やコメディカル等の他職種がその看護記録のSOAPを見ても、「今その患者の問題はなにか」がわかるように記録することも大切。SOAPをしっかり理解してそのルールにのっとって看護記録がされていれば、看護師だけでなく、医療チーム全体で、患者の医療問題にフォーカスして、治療をいっていけるのです。



理解するまで難しいSOAP、その必要性って何なの?

新人看護師や看護学生が、看護記録のことで注意される場面をいつも見かけます。わたしもたくさん注意されてきました。看護記録で指摘されるたび「なんでSOAPかけてるじゃん!」「細かすぎるよ!」って何度思ったことか。でも今になって思います。看護師として臨床で働くなら、SOAPの基礎をしっかり理解することはとても大切です。

ひとくちにSOAPといって頭でSOAPを理解しているつもりでも、新人看護師のうちや看護学生の間は、何が「S」で何が「O」なのか、いざ臨床にたっていると混同してしまったり、あれこれと指導者に指摘されるうちに混乱してしまい、内容が支離滅裂になってしまうものです。よく新人看護師さんが、「O:客観的データ」に「A:アセスメント(自分の考え)」を書いていたりするのを見かけます。別に見ていて何が言いたいのかは充分わかるんですけどね。ただ、やはり看護学生や新人看護師さんに理解してほしいのは、「看護記録SOAP」は法的文書であって、自分が何を考えてなにをしたのか、証明する文書でもあるんです

SOAPの概念や設計、目的の理解をあいまいなまま臨床に出てしまうと、いざ医療訴訟や医療事故が起こったとき、看護師を守る武器である看護記録が役に立たなくなることだってあるわけです。そうならないためにも、まずはSOAPが患者の問題にフォーカスした看護記録であることを理解する必要があります。SOAPの基礎は、まずどんな場面でも何が「S」で何が「O」なのかをしっかり理解して、「A」と「P」はどのように捉えていけばいいのかをふまえることです。簡単な症例から、SOAPの成り立ちや、流れを理解していきましょう。

読みやすい看護記録SOAPを早く書けるコツについては、以下記事にまとめているのでぜひ参照にしてください。

【看護記録:SOAP】早く書ける・伝わる記録のコツと書き方 看護学生のレポートや看護カルテ入力で使うSOAP。SOAPで看護記録を書くにあたり、「なにを書いたらいいのかわからない」「早く書けない」という問題にぶつかっていませんか?誰にでも伝わるSOAPを早く書

 

看護記録:症例からSOAPの意味を理解しよう

そもそも看護記録におけるSOAP(ソープ)とは、看護記録の手法のこと。疾患を持つ患者に対して、その患者の問題は何か?というところにフォーカスして看護展開していく分析方法です。看護師が、見て、聞いて、触れた情報から、その患者にとって今なにが問題なのかをアセスメントし、看護プランを立案します。

 



SOAPそれぞれの意味

・S=Subject(主観的)の例

Sは主観的データのこと。

つまり、患者が実際に訴えてきた、患者自身の訴えです。以下の漫画でいう吹き出しに入るような部分です。

SOAP症例

この漫画のシチュエーションでいうなら、この患者のSは、「お腹が気持ち悪い~ 今日ご飯要らない」がSになるわけですね。ちなみにSOAPにおけるS情報とは、患者が話した言葉以外にも、筆談や手話などの非言語コミュニケーションも含まれます。看護の対象は患者の家族も含まれるので、療養に関係することであれば患者家族の訴えもS情報に含まれます。

・O=Object(客観的)の例

Oは客観的データのこと。

看護師が見たこと、触れたこと、診察したこと、検査データの結果など、その患者のS(訴え)以外で、見たり聞いたりして得た情報です。主観的情報以外の看護師が五感で確認した情報です。

SOAP症例

 この漫画でいうなら、この患者のOは、

 

ソファに右側臥位になり腹部を両手で押さえている

JCSⅠ-0  腹部不快感訴えあり

顔面蒼白  流涎あり 食思不良

腹部不快感訴えあり 嘔吐なし

 

といった感じでしょうか。ただただ見たもの、触れたもの、測定したもの等患者さんが訴えた以外のことを端的にあげていきます。

このときのポイントは、考えられる問題に関連する情報をえらんで記載します。(これが新人看護師とか学生のうちはすぐ出せなくて難しいんだけどね)

すべての情報を記載するのではなく、考えられる問題に関連する情報だけ、取捨選択します。これがポイントです。たくさん見たままにあれこれ書くと、たいがい先輩看護師や臨床指導者に「この情報はなに?」とか突っ込まれてたりします。(余談)

だから、その患者の看護師問題がわかってないままO情報をかこうとすると、情報のまとが絞りきれず無駄な情報のオンパレードになったりします。O情報を描くときは情報に統一性を持たせるためにも、看護問題をある程度頭に描けた状態で書き上げていった方が良いでしょう。

・A=Assessment(アセスメント)の例

Aはアセスメントです。

この患者の訴えと、訴え以外の情報から、なにが問題だと感じたか。問題なければ、なぜ問題ないと思うのか。その理由を書いてください。その理由があなたのアセスメントです。

新人看護師だったり、看護学生だと、この部分を一番指導者にあれこれといわれるかと思います。でも本当にこの「わたしはこの患者をみて、こう思いました!」っていう思考過程がアセスメントであり、看護で一番大切ですうなところでもあるんですよ。結局看護に何が大切とか答えはないけど、アセスメント記録って、患者の安全を守れる思考(つまりアセスメント)があるか。患者の人権を尊重した思考を持てているか。がアセスメント内容に現れてくるわけなんです。だから細かく指導されてしまうんですね。

アセスメントはまず、S情報とO情報から、「患者の状態を問題と思うか」「患者の状態を問題と思わないか」を明らかにしてください。この患者をほっておいていいか、何かすべきか、きっと自分の中では考えがあるはずです。

 

この男の子をアセスメントして看護プランを立案する場合、あまりにも情報が少なすぎるので難しすぎるため割愛しますが、詳細なSOAPの例分は下記で説明していきますね。

 

・P=Plan(看護プラン)の例

アセスメントの結果から、この患者に必要なケアを記載します。看護師が実際に患者に行う内容です。安楽肢位への体位交換介助 とか、2時間おきにバイタルサイン測定を行う とか、自分が行う具体的な内容を記載します。次の章から実際に例文でSOAPを組み立てていきます。

看護記録を上手に書けるようになりたいなら

 

看護記録:SOAPの記録の書き方 ~例文でトレーニング~

習うより慣れろ、症例を用いて、SOAPの看護記録をしっかり理解しましょう。

 

症例:

A子さん(28歳 女性)。過去に大きな既往歴はない。本日夕方ごろから突然の悪寒戦慄、倦怠感を認め来院された。来院時のバイタルサインは、体温38.9度、血圧132/78mmHg、脈拍72回/分、SPO2 98%(ルームエア)、現在悪寒戦慄は消失、体熱感がある。1週間前同僚がインフルエンザに感染している。

A子さんS情報:

仕事中突然体がだるくなって、寒気を感じました。ブルブルふるえるようになって。今は寒気がおさまったけど、体があつい感じがします。しんどいです・・。 関節がすこし痛いですね。ときどき咳がでるんです。食欲もなくって、昨日からほとんど食べれませんでした。職場ではインフルエンザが流行っています。

A子さん 症例 SOAP

 

A子さんをSOAPを使い、看護展開していきます。




S情報

仕事中突然体がだるくなって、寒気を感じました。ブルブルふるえるようになって。今は寒気がおさまったけど、体があつい感じがします。しんどいです・・。 関節がすこし痛いですね。ときどき咳がでるんです。食欲もなくって、昨日からほとんど食べれませんでした。職場ではインフルエンザが流行っています。

解説

A子さんは働き盛りの女性で、しごと中からどうやら発熱の兆候があったようです。仕事帰りなので、発熱や倦怠感に対して何もケアしていない状態で、来院されていますね。関節痛や急な発熱など、特徴的な症状に関するポイントは大切な情報になります。またA子さんの環境で、インフルエンザが流行していることも、感染兆候や発熱を生じているA子さんのアセスメントに必要な情報になります。




O情報

JCS 0 体温38.9度

血圧132/78mmHg 脈拍115回/分 SPO2 98%(ルームエア)

発熱している 悪寒戦慄なし 体熱感あり 倦怠感訴えあり 関節痛あり 自制内

1週間前同僚がインフルエンザに感染している 時々咳嗽があると訴え有 前日からほとんど食事摂取しておらず

解説

Aさんは発熱により倦怠感があり、食事も十分にとれていません。発熱という体の症状が問題で、栄養低下や脱水などの二次的問題も浮かんできます。ここで並べるO情報は、「発熱から生じる倦怠感」にフォーカスして、情報を収集していきます。インフルエンザの感染兆候となる、発熱や関節痛、職場でのインフルエンザ流行等、発熱の原因と思われる事象や、実際の体温の値、発熱による随伴症状など。これらはアセスメントにつなげていける情報です。ここでとるべき情報は、最終的に問題として評価したい「発熱による倦怠感」に関する情報を記載していきます。




Aアセスメント

1週間前インフルエンザ感染者と接触しており、感染兆候認めることから、インフルエンザに感染している恐れがある。
発熱から倦怠感や食思低下を生じており、脱水等の二次的リスクもあるため、発熱に対するケアが必要である。

解説

アセスメントでは、
A子さんの病状に対して、何を問題と感じたか」をまとめます。発熱による倦怠感、今後発生し増悪するかもしれない脱水などに焦点をあてました。現在の発熱に対するケアを行う必要があります




P看護プラン

・クーリング施行
・脱水リスクについて説明し、水分摂取を促す

解説

現在のA子さんの問題となる「発熱に関連した倦怠感の恐れ」に対して、看護師としてできるケアを行い、それを看護プランとして記載します。発熱が進行すれば脱水症状になり、さらに倦怠感が増す、という悪循環に陥るので、発熱に対するアプローチとともに、脱水に対する予防的ケアを取り入れています。臨床などであれば、病棟によっては「医師へ解熱剤指示を仰ぐ」など記載するひともいますが、最低限看護プランに記載すべきことは、患者に現在おこっている問題にたいしてアセスメントしてから、自分が何を行ったかです。

 

看護記録:SOAPの書き方のまとめ

SOAPに関して、各項目をまとめます。

S情報:

患者が訴えたこと。

(口頭、筆談など、手段は問わない。患者さんが感じていて、訴えたこと)

O情報:

看護師が見たり、聞いたり、触れたりして得た情報こと。いわゆる視覚(見る)、聴覚(効く)、触覚(触れる)、嗅覚(匂う)ことで、得られる情報と、S情報以外の情報。(患者の家族から得た情報や検査データ、ベッドサイドの環境等)

A アセスメント:

患者の訴えと、看護師が得たO情報から、問題と思われること(もしくは問題と思われること)の根拠を記載します。

P 看護プラン:

Aで問題と思ったことに対して、看護師が行ったこと。

SOAPはこの一連の流れを通して、その患者を評価していきます。P(看護プラン)で行ったことに対して、患者さんが何かを訴えたり、状態が変わればまたSO・・と繰り返されるのです。

習うより慣れろ、と言いますが、看護記録は本当にそうだと思います。SOAPが上手になるコツは、いろんな疾患のSOAPのパターンを学んでおくことです。疾患や状態の何が問題かを予測できなかったら、何を観察したらいいのか、患者からどんなS情報を得たらいいのかわからないですから。看護記録って書き方も個人差があったり、絶対にこれ!っていう決まりもないものなので、非常に難しいものだと思います。大変だけどがんばりましょう。誰が読んでもその場をイメージできるよう、心がけるとよい看護記録が書けるようになりますよ。

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