看護過程:基本的な関連図の書き方とコツ



シンママナースの マリアンナ です。

看護過程における関連図とは、患者の全体像を理解するために使うツールです。個別性がある複雑な患者情報を図にして示すことで、より全体像を理解しやすくなり、アセスメントに役立ちます。この記事では看護関連図を書くのが苦手なひとのために、関連図の基本的な書き方とコツについて紹介しています。



看護過程における関連図とは~関連図って何?知っておくべき看護関連図の目的~

関連図とは

看護過程における関連図とは、看護に視点をおいた様々な情報を線で結んだ図のことです。その情報とは、患者の病気や個別性、背景、性格、スピリチュアル、治療における看護問題など、看護に関係する全面的な情報すべてを含みます。看護を学ぶうえで、教科書的な病態や看護展開に加え、どうしてもそれらに合わせた患者の個別性の理解が重要になるんですね。患者の様々な側面を含む個別性が、わたしたちが提供する看護過程や看護計画に影響してくるからなんです。だから看護を学ぶときは必ずこの全体像を捉える関連図を学びます。関連図にも病態だけに焦点を絞った病態関連図や全体像をのせる全体関連図とかいろいろ言い方がありますが、基本的に看護実習で使ったり、実習の看護展開で使う関連図とは、患者の情報・病態・看護展開すべての情報を載せた全体関連図を指すことが多いですね。

関連図の目的は何なの?

看護展開における関連図の目的は、その関連図を見れば以下のようなポイントが一目でわかる内容に書き上げることです。

  • 患者の全体像
    • 患者に起因する何と何が関連しているのか
    • 患者の看護問題の原因となっている部分は何か
  • 患者の看護問題と成り行き
    • 患者の看護問題は何か
    • その看護問題から考えられることは何か

上記のようなポイントは、看護するうえで看護師が理解しておくべきポイントだから、関連図の目的はそのポイントを図にして学ぶ看護思考のトレーニングとも言えますね。現在の看護思考って問題解決型思考が主流になっていて、患者の問題を考えて看護介入するのがスタンダードです。だから関連図では絶対看護問題があがるはずで、関連図とは具体的な看護問題を明確にするために描くものと言ってもいいくらい、関連図と看護問題は密接な関係にあります。そしてもうひとつ。関連図を学ぶべき理由をしっておいてほしいと思います。

問題解決型思考について詳しく知りたい方は以下のPOSに関する記事を参照してください。

【看護記録】POSとは~POSがわかる5つのカテゴリーとは~ この記事では看護記録「POS」について説明しています。看護は何を焦点にして展開していくの?何を枠組みにして、どのように患者を捉えて看護計画を立案・実行していくべきなの?看護展開の基礎となるPOSと、P

 

関連図で看護を学ぶ理由

看護展開で関連図を書くとき、上記のようなポイントが抑えられていることがとても大切なんですけど、その理由は「看護師として絶対この思考過程がのちのちとっても看護業務に重要になってくるから」なんですよ。

わたしは看護学生のとき、新人のとき、ほんと関連図とか勉強とかいやでいやで仕方なかったです。きっと同感してくれる看護師さん、看護学生さん結構いてると思います(笑)。でも看護師も3年、4年って経験してくると、今になってあの関連図がすっごく大切だったって思うんです。患者と接する中ですごく感じます。実際の臨床で患者と接するとき、その人特有の看護問題にたくさんぶつかります。転倒転落リスクとか、褥瘡リスクとかいろいろあるんですけどね。もし患者の状態を全体的に捉えられていなかったら、このような看護問題の原因がしっかりわかっていないまま不適切なアセスメントやケアをしてしまうことがあるんです。これこそ看護師側の問題。不適切なアセスメントやケアは、時に患者の状態を悪化させることもあります。

関連図を頭に描けていないときの看護、描けているときの看護

関連図を頭に描けていないときの看護、描けているときの看護の違いは何か、例を用いて考えてみましょう。

もし不安定な歩行で今にも転倒しそうな認知症のおばあさんが目の前にいたらどう思いますか?看護者としてなにをすべきでしょうか?

転倒リスクがある女性高齢者

もちろん、転倒しないように見守りや付き添いをおこなうことは必要ですが、それだけでは看護展開における関連図を意識しなくても行える介護者視点のケアになります。

看護師として患者と関わっていくとき「転倒転落リスク」がある患者が、なぜ転倒転落を起こしそうになるのか、原因を理解して看護介入していく必要があります。この患者さんがフラついてまで歩いていきたいところはどこなんでしょうか?

もっと深く情報収集してみましょう。仮説としてこの患者さん、失禁していたとします。認知症によってなかなかトイレの場所を覚えられない、トイレへ行くまでの動作が遅くて間に合わない、排泄したくても誰に協力を依頼して良いのかわからない等の原因が背景にあって、排泄が間に合わなかったことが考えられますよね。この患者をアセスメントすると、認知症や加齢に伴う運動能力の低下、判断力の低下などがあいまって、排泄行動が自立して行うことが出来ず、結果徘徊による転倒転落リスクを高くしてしまっている状態です。排泄行動がトリガーになって転倒転落リスクが高くなるので、2時間おきにトイレ誘導するとか、ベッドサイドでポータブルトイレを使用するとか、何かしらの排泄ケアを介入していけば、転倒転落リスクを軽減できそう。

このように、もしこの転倒転落リスクの原因を全体的に捉えて考えなければ、具体的な排泄ケアプランが立案できません。ただ付き添いをするだけでは、根本的な転倒転落リスクの解決にはならない。関連図を頭に描けていないときの看護は、常に看護問題が継続したまま、患者の状態が良くなりません。この患者さんも、ただふらついて歩いている場面を見つけたときだけ付き添いをしても、根本的な「転倒転落リスク」の解決にはならないですよね。

関連図を頭に描けているときの看護は、なぜ転倒転落リスクがあるのか原因を頭で理解できることで、具体的で個別性に合った看護計画があがってくるんです。患者個人に合った看護問題とその関連図が頭に描けるようになれば、患者個々にあった看護ケアが提供できます。

看護問題の原因を理解できる関連図

患者に起こっている看護問題に対して、患者の状態、病態、年齢など全体を理解しながらアセスメントを行うことって本当に大切なんですね。これを簡単に理解するために用いられるのが、看護関連図です。

関連図は患者の情報から考えられることをつなげていき、看護問題をあげていきます。つまり、関連図で看護問題を描くとき、必然的に看護問題の原因を理解していなければ、関連図が描けない構造になっているんですね。看護師として千差万別の患者を見るとき、教科書通りのことを行っても適切な看護はできません。個々患者の個別性に合った看護プランを提供するためには、患者の属性や病態、ADL等々いろいろな側面から患者を捉える視点が必要なんです。個別性を捉えた看護問題とその原因がわかれば、看護プランはもうわかったようなもの。看護関連図を描けることは、個別性を捉えた看護問題を理解することであり、結果その患者に適した看護計画を立案できる原点になるんですね。

前置きがとっても長くなりましたが。

この記事では看護過程における関連図の書き方を紹介していきます。

まず病態関連図であれ、全体関連図であれ、看護過程における関連図の基本を最初におさえておきましょう。

 



看護過程:関連図の書き方と基本をおさえる

さきほど前置きで、看護過程における関連図は、看護問題とその原因が描けていることが前提にあることをお話ししました。

関連図の書き方の基本は、以下のようなポイントがあります。

  1. 一目で看護問題が何かわかる
  2. 看護問題の原因がわかる
  3. 看護問題の成り行きがわかる

看護過程における関連図は、誰が見てもその患者の看護問題が何なのか、そしてその看護問題の原因は何なのかわかることが大切です。そこが看護の介入ポイントになるからです。そしてその看護問題をほっておいたらどんなことが起こるのか、その成り行きを理解することも大切。成り行きから考えられる問題を予測できれば、その看護問題の優先順位が理解できるようになります。

したがって上記の3つが必ずしっかり記載するようにします。

では、で「看護問題が何かわかる、看護問題の原因がわかる、看護問題の成り行きがわかる」の詳細をひとつずつ具体的に見ていきましょう。

一目で看護問題が何かわかる

一目で看護問題が何かわかることは、看護過程の関連図の最大の目標ともいえるかもしれません。看護師として患者をどうい捉えているのか、もう一番腕の見せ所のようなところでもあります。そして一番難しいところでもあるんですよ。関連図を書くとき、どんな患者が、どんな看護問題を抱えている、ということが伝わるように描けないといけません。以下の図を見てみましょう。

看護問題がわかる関連図の書き方

先ほどのおばあちゃんの関連図です。この一連の関連図だけで、認知症がある70代の高齢女性に転倒転落による身体損傷リスクがあることがわかります。

どんな人にどんな看護問題があるかわかることが関連図のポイントです。

 

看護問題の原因がわかる

上記の関連図を参考にしてください。

看護問題として、「転倒転落による身体損傷リスク」があることがわかりますが、この原因として「不安定な歩行による頻回な徘徊」が存在していることがわかります。この原因がなくなれば看護問題である「転倒転落による身体損傷リスク」が低下するので、患者の療養環境をより安全なものにしていくことができますね。

関連図に看護問題をあげることは必然ですが、看護問題の原因が何なのか、明確にわかるように情報と線を引いていく必要があります。看護問題の原因が明確にされることで、看護介入が必要になるポイントが具体的にわかるようになします。

看護問題の成り行きがわかる

関連図を書くとき、看護問題から考えられる成り行きが描けていれば、看護問題が複数ある場合でも、その優先順位がわかりやすくなります。

 

 

看護問題の成り行きがわかる関連図の例

上記の関連図では、「転倒転落による身体損傷リスク」から、実際に転倒転落を起こした場合に考えられる「転倒転落による外傷性ショック、骨折等の恐れがある」をあげています。外傷性ショックを起こした場合、重度の後遺症や死に至る致命的な外傷になることもあるため、この「転倒転落による身体損傷リスク」の生命の危機リスクは高い。だから、「転倒転落による身体損傷リスク」は比較的優先順位が高くなるべき看護問題であると考えます。

このように、関連図に看護問題をあげるときは、その看護問題がなぜ問題なのか、どれくらいの問題なのかを示す「看護問題の成り行き」が見えているとよりアセスメントが深い内容になります。

次から実際に例を使って、関連図の書き方とコツを見ていきましょう。



看護過程:関連図~例を使った書き方とコツ~

患者の全体を捉えた関連図では、前章で「一目で看護問題が何かわかる、看護問題の原因がわかる、看護問題の成り行きがわかる」の3つを抑える必要があることを述べました。実際にこれらにフォーカスした関連図の書き方を、例を使って紹介していきます。先ほどの転倒リスクがあるおばあさんを使って、「一目で看護問題が何かわかる、看護問題の原因がわかる、看護問題の成り行きがわかる」を抑えた関連図を実際に展開していきましょう。症例として、以下のような設定とします。

症例

  • 患者:

70代女性

  • 既往:

アルツハイマー型認知症

誤嚥性肺炎

  • 現在までの経過と状態:

施設入所中の患者。誤嚥性肺炎にて12/1より入院。入院後絶食と点滴加療にて肺炎症状は改善してきている。3日前よりとろみ食から食事を開始。食事中はムセなく経過している。バイタルサインは体温36.5、

血圧135/75mmHg、脈拍75~85回/分、SPO2 98%(ルーム)。CRP0.9mg/dl。ADLは独歩可能だがふらつきや徘徊行動あり、注意が必要である。排泄はリハビリパンツ使用し、トイレもしくはパンツ内失禁。保清は軽介助~見守りにて入浴、清拭を行っている。状態安定認めており、退院調整を開始した。

関連図を書く前の準備

この症例の高齢女性ですぐ思いつく看護問題は何ですか?関連図を書くときは、おもむろに書き始めるよりまず「この患者の看護問題は何か」を明確にしてから取り掛かるとよりスムーズです。関連図は看護問題を明確にするために作業といってもいいですから、関連図に取り掛かる前に看護問題をイメージしておくことはすっごく大切です。

関連図を書く前に、簡単なものでいいので考えられる看護問題をリスト化しましょう。

看護問題のイメージと情報整理

考えられる看護問題

以下のような看護問題をあげてみます。

  1. 誤嚥性肺炎の再発
  2. 転倒転落による身体損傷の恐れがある
  3. 徘徊による事故の恐れがある

現在の状態からさっと考えるとこんな感じの看護問題が考えられますかね。

 

ではこの看護問題に関連する必要な情報って何でしょうか?以下に列挙してみます。

  • 誤嚥性肺炎の再発
    • 嚥下時の状態
    • 食事内容
    • バイタルサイン
    • 血液データ
  • 転倒転落による身体損傷の恐れがある
    • ADLの程度
    • 徘徊の頻度や状況
    • 認知力レベル
  • 徘徊による事故の恐れがある
    • 認知力
    • 生活リズム
    • 環境

 

考えられる看護問題に必要な情報を列挙してみて、情報が足りていなければ再度情報収集します。

情報がある程度集まったら、その情報と看護問題をつなげる関連図を作成していきましょう。

関連図の書き方とコツ

前述のとおり、イメージした看護問題と必要となる情報がそろったら関連図におとしていきます。

1:必然的な情報と看護問題をピックアップ

まず関連図に必然的に描かれる情報は、

  • 70代女性
  • アルツハイマー型認知症
  • 誤嚥性肺炎

の基礎情報と、

  • 誤嚥性肺炎の再発
  • 転倒転落による身体損傷の恐れがある
  • 徘徊による事故の恐れがある

の看護問題ですね。

関連図に描く基礎情報と看護問題

 

でもこれだけでは関連図にはなりません。この基本となる情報と看護問題に加え、これらに関連する情報を線で結んでいきます。

線で結ぶときのコツは、「その問題や情報が起こる原因が何か?」に着目しながらつなげていくことです。

2:必然的な情報と看護問題をつなげる情報を線で結ぶ

上記であげた看護問題の原因は何でしょうか。その原因と看護問題をつなげましょう。まず看護問題とその原因をつながるように描いて、基礎情報と関係づけていきます。

看護問題とその原因の関連図

このあたりでだいたいどんな患者が、どんな事情で、どんな看護問題を持っているのか、想像ができるようになってきます。だいたい関連図だけでどんな看護が必要なひとかも、イメージがわいてくるようになってきます。

次は看護問題から考えられる成り行きと、看護問題の優先順位を考えましょう。

3:看護問題から考えられる成り行きを描く

看護問題とその他の情報が関連図に描けたら、看護問題から考えられる成り行きをあげておきましょう。この成り行きの程度によって看護問題の優先順位を決めていきます。

 

看護問題の優先順位がわかる関連図

わたしは以下のような優先順位で看護問題をあげました。

#1:転倒転落による身体損傷リスク

#2:徘徊による事故の恐れ

#3:誤嚥性肺炎の再発

看護問題の優先順位をつける基本は、生命の危機が高い順番で順位をつけていきます。

わたしは転倒転落によって外傷性ショックを起こした致命的だし、徘徊で行方不明になった場合も生命の危機に陥る可能性が未知数にあるので、#1に「転倒転落による身体損傷リスク」#2に「徘徊による事故の恐れ」をあげました。誤嚥性肺炎の再発ももちろん重要な看護問題ですが、生命の危機に直結する問題ではないので、優先順位をあげず#3としました。

 



関連図の書き方とコツ:まとめ

今回は臨床でありがちな「転倒転落による身体損傷リスク」「誤嚥性肺炎」を題材にして、関連図について書き方をまとめました。もちろん実際の臨床は、患者の個別性があるし、実際はもっと病態や年齢による発達課題なども加わってきて、もっと複雑な図になると思いますが、今回は「書き方」に着目しているので、そのあたりは割愛しています。

関連図を描こう!と意気込んでしまうとどうしても目的や目標が見えなくなって、あれこれと情報を並べてしまいがち。最終的に何をいいたいのかわからない関連図になってしまいます。関連図の本来の目的となる看護問題の把握を、しっかり道順にわかるように描く。これを念頭におきながら関連図作成に取り掛かるようにしましょう。