看護研究テーマの決め方~看護業務で感じた疑問が研究のテーマになる~



シンママナースの マリアンナ です。

看護研究のテーマの決め方のポイントは、看護業務で感じた疑問です。看護で疑問に思ったことが、研究テーマを決める原点になります。この記事では看護研究テーマの決め方について説明しています。

 



看護研究のテーマはどうやって決めるのか

看護研究というと難しく感じるのではないでしょうか。そもそも研究とは、自分が興味、関心を持った事柄について、いろいろな角度から調べてみて、その結果、皆が納得できるような答えを得ることです、と言うとイメージがわかりやすくなると思います。研究したいと言う気持ちや動機が生じるためには、まずその研究テーマに対して何らかの興味関心を抱くことが必要です。言い換えると取り組みたいテーマがあるからこそ研究を実践するのです。臨床の現場において看護研究を行う最も理由の多い1つが、自分の病棟に看護研究の順番が回ってきたから、または上司に勧められたから、が主に挙げられます。これらは自分の意思ではなく受動的な理由です。自分たちの看護実践を振りかえりたいから、といった能動的な理由もあげられるかもしれませんがその割合は非常に少ないです。研究することが前提として決まっていて、看護スタッフはある意味強制的に研究チームメンバーとして参加させられていると言う構図です。
理想としては取り組みたいテーマあるいは解決しなければならない問題が先にあって、それから研究チームが構成されるのが自然な流れです。ところが現実には、先に研究チームが決められていて、そこに集められたメンバーが取り組みたいテーマを探すと言う、本末転倒な状況が存在しているのです。研究する上で大切な事は同じ研究テーマに興味関心を持つ人たちが、自発的に研究チームに参加するところから始めてもらいたいものです。
看護研究に挑戦するのは勇気が要ります。しかし[今までこうしてきたのだから…]といった、前例主義にとどまっていたのでは、いつまでも発見はできません。まずは新しい方向性に向かって第一歩を踏み出してみましょう、看護研究はそこから始まります。

 



看護で疑問に思ったことが「看護研究」のテーマになる

看護研究のテーマを探す際には、看護業務のなかで身の回りにある[おや❓]と感じる出来事に目を向けて、それについて出来る限り情報を集めて考えてみましょう。より研究しやすい看護研究のテーマを作るには、情報を集める必要があります。それには疑問に思ったことがらに関する当事者に理由を聞くとか、またはその疑問に対して本で調べるなどの手段が考えられます。
特に、人間の行動に関心を持つという事は、人間観察と言う看護師の基本的資質を磨くことにも有効です。なんにでも関心を抱くこと、自分で手を動かして調べてみること、いろいろな場面で得られる情報を比較してみること、以上これらの行動を習慣化できれば、知的好奇心が活性化し、ひいては研究と言う活動に主体的に参加してみようと言う動機付けとなります。
もう一つ、看護とは関係ない、という言葉の問題点を上げましょう。この関係ないという言葉の根底に、違う領域の事とは関心を持たなくても良いと言うニュアンスを感じてしまいます。しかし、看護学との関わりの深い医学について見ると、その発見は、他の学問領域の知識を貪欲までに吸収してきた歴史の上に成り立っていると表現しても過言ではありません。看護とは関係ないと言う発想から、むしろ看護とどのように関係付けるか、という考え方に転換をしてみましょう。他の領域の情報や知識、技術などをどんどん吸収していくことで、やがてそれは学際的と呼ばれる研究につながります。
研究に取り組もうとする看護師の気持ちを縛り付けてしまう言葉、それは[意味があるの?]という問いかけです。これは[その研究をやって何の役に立つのか]つまり[研究の意義]を問い掛けてるとも解釈できます。でも[意味があるの]と聞かれると事実上[やっても意味がないよ]と言われてるような気分になってしまいます。看護学は実践を伴う[応用科学]に含まれます。いわゆる[実践できてなんぼ]の世界なのです。せっかく時間と労力、ときにはお金も費やして研究するのだからその成果を実践に役立てたいこの姿勢は大切です。しかし[役にたつ]という考えにとらわれすぎると思考が先に進まなくなってしまうのも事実なのです。この約に立つというのはあくまでも他人の評価です。役にたつかどうかはやってみなければわからないのです。自分が興味関心を抱いたことに、まずは取り組んでみましょう。すべてはそこから始まります。

 



[役に立つ研究]ということと絡めて、[業務改善と研究]のつながり

[役に立つ研究]ということと絡めて、[業務改善と研究]のつながりについて触れておきます。
例えば、与薬内容間違えないために3回確認する、ということを学校や現場できっちりと習います。これは与薬内容の取り違えというミスを回避するための方策であり、業務改善の1種と言って良いでしょう。業務改善では、実際に役に立つ方法が求められるわけです。それに対して研究はこうした問題解決策の背後にある、より一般的、つまり誰にでも当てはまる原則を引き出すことに関心を向けます。この場合なら3回確認すれば知覚から情報記憶として定着することができるということ、これが果たして一般的原則として成り立つかどうかを検証することが研究の目標となります。
別の表現をすると、研究は新しい知識を生み出すこと、また業務改善は既存の知識を応用することを志すと言っても良いでしょう。もちろん業務改善に用いた知識が既存のものではなく、新しい着想に基づくものであれば、その業務改善の成果を研究として発表することができます。いずれにしても役にたつことへのこだわりを捨てて研究に望みたいものです。
研究の動機とは、すなわちなぜ研究をしようと言う気持ちになったかということです。もっとわかりやすく言うと、何に関心があるのかあるいはどんな問題で困っているのかということです。例えるならば登山において、どの山に登りたいのか、あるいは登山をして何を楽しみたいのかということに相当します。少なくとも、この道記載はっきりしていれば、どのルートで山に登り、またどのような準備をするべきかという事は、登山に精通した人に相談すれば、それなりの指針を示してくれるはずです。看護研究もそれと同じです。初めて研究に取り組む、あるいは研究の経験が少ない方は、まず研究の動機を明確にすることに力を集中してください。問題解決の選択は、研究経験が豊富な人に相談するのが賢明です。
研究の相談者、つまりサポート体制を構築してから研究のテーマに取り組むようにすれば、研究計画書を書かないと先に進めないといった不安な強迫観念を抱かずに済みます。



倫理的配慮の必要性

看護研究を進めるにあたって倫理的配慮が重要であることは、改めて申し上げるまでもないと思います。学会の投稿文献においても、大抵倫理的配慮について記載することと書かれています。しかし、何をどうすれば倫理的配慮をしたことになるのか、その具体的内容については意外に明記されていないことが多いのです。ここでは倫理的配慮の本質について、整理してみることにしましょう。言葉の成り立ちから考えると、倫とは人が輪になること、すなわち仲間が集まっている様子を表しているのです。これを踏まえて考えると倫理の本来的な意味は、仲間同士の間で、お互いを尊重し、揉め事を起こさないために取り決められた合意事項、と考えることができます。合意事項なので、その前提となるのはお互いの了承です。まずこのことを記憶に留めるようにしてください。対象者と研究者の間の相互理解に基づいて決めるようにしましょう。

 



看護研究のテーマ作成と仮説の必要性

看護研究をする上でテーマを見つけたら、仮説を立てましょう。仮説とはいろいろな情報を元に導かれる結果の見込みのことです。したがって、仮説が立てられると言う事は、問題解決の方向性が見えていると言うことであり、後はその仮説が本当に成り立つかどうかを確かめる検証だけなので、気分的にも大変に楽となります。仮説に対して動機付けと情報収集を基盤として、仮説が導かれているという思考の流れを作りましょう。ここで質的方法と量的方法という対の言葉があります。量的方法が仮説の検証を目標とするのに対して、質的方法は少数の事例をじっくりと観察し、その作業を通じて仮説を導き出すことを目標としています。もっとも仮説に至る前に、質的方法の段階でひとまず抄録や論文にまとめて発表することも多々ありますが、ここでは割愛します。
また、仮説の妥当性には、時間性、整合性、強固性、一致性、特異性の5つが挙がります。
仮説を立てるときには、何らかの予備知識が必要であると言うことです。この予備知識の収集は情報収集の段階に位置づけられます。情報収集の方法は、観察する、人に聞く、メディアの活用のたかが3つに集約されることになります。動機付けと情報収集の間で行きつ、戻りつしながら、自分自身の置かれた状況を客観的に把握して行く段階、と言い換えることができます。
しかし研究を行う以前に、普段の生活の中からいろいろなことに興味関心を向けて予備知識の蓄積に努める姿勢が大切です。次に仮説を表現するときには AとBの関係 という形で書いておくと、考えが整理しやすいと言うことです。ここで言うAとは原因、Bとは結果という関係が成り立てば、両者の間には因果関係が成立することができます。仮説を立案するときには、その妥当性についても吟味する必要があります。

  • 時間制

原因が結果よりも時間的に先に生じていかなければならない、ということです。

  • 整合性

想定される関係性の根拠が理論的に説明できて、しかも他の関連分野の研究結果と矛盾がない、ということです。

  • 強固性

原因となる事象の値が増えるもしくは減ることに伴い、結果となる事象の値も増加もしくは減少するという関係がある、と言うことです。

  • 一致性

ある条件のもとで得られた結果が、別の状況もしくは場面でも再現できるということです。

  • 特異性

ある原因が存在する時に限って、ある結果が生じるということです。

臨床現場には、こうした経験知がたくさんあるはずです。身近な経験知に目を向け、それを科学的に検証していくことも研究の重要なテーマとなります。