看護過程アセスメントの書き方:症例でわかる3つのコツ



シンママナースの マリアンナ です。

看護過程のアセスメントの書き方は、看護師を目指す誰もがぶつかる壁です。この記事では、症例を使ったアセスメントを書くときのコツや、具体的にどのようにアセスメントを書き上げたらいいのか、ポイントに絞って説明しています。



看護過程とは:看護師の思考過程

アセスメントとは何か、に入る前に、まず看護過程って何でしょうか。少しだけ触れておきます。

看護過程とは、看護師が患者に行う看護の流れのことを言います。基本的に以下のような流れで看護を展開していきます。

  1. アセスメント
  2. 看護診断
  3. 看護計画立案
  4. 看護計画の実施
  5. 看護評価

 

1:アセスメント

患者さん適切な治療をうけるために弊害となるような、持っている問題は何でしょうか?知識不足、認知機能の低下、セルフケア能力の低下とか患者個人によっていろいろあります。

患者さんの情報を収集して、その患者さんにどんな看護問題が起こっているのかを考えましょう。

2:看護診断

看護診断はその患者の看護問題をあぶりだす工程です。

「1:アセスメント」で分析した結果、その患者さんの看護問題を列挙しましょう。ここでは●●によるセルフケア不足、●●に関連した転倒転落の身体損傷リスク、みたいに「●●による~」「●●に関連した~」という看護問題の原因もしっかりあげていれば、あとあと看護展開が楽になります。

3:看護計画立案

看護計画では「2:看護診断」であげた患者の看護問題に対して、具体的にどんな看護を行うか、看護の計画をあげていきます。

例として「●●に関連した転倒転落の身体損傷リスク」という看護問題に対しての看護計画であれば、「移動時付き添いを行う」「トイレ移動時はナースコールを押すよう指導する」などの具体的な計画が上がってきます。ここでは大切なのは、だれがみてもその看護を実践できるように看護計画を明記することです。

4:看護計画の実施

4:看護計画の実施では、「3:看護計画立案」で立案した看護計画を実践します。

5:看護評価

「5:看護評価」では、「4:看護計画の実施」で実際に行った看護がどうだったのか評価します。看護計画の足りなかったところ、良かったところ、不要になったところなどを見直して、今の患者の状態に一番適切な看護計画に修正するのです。この一連をクリアえすことで、看護に必要な「看護診断」と「看護計画」は、常に今の患者の状態に応じた最新のものにすることができます。

 

 



アセスメントとは:看護展開の土台

本題に入ります。

看護展開におけるアセスメントとは、 前述でも述べたとおり、患者さんの情報を収集して、その患者さんにどんな看護問題が起こっているのかを考える工程です。

看護展開:アセスメント

看護展開は上記に示したとおり、5つの段階から成り立ちます。そして患者の情報収集をしてアセスメントすることから始まります。つまり、看護過程においてアセスメントは看護展開というピラミッドの土台のような部分になるわけです。言い換えればめちゃくちゃ大事な部分でもあるんですね。看護師のアセスメント能力で、あとあとの看護診断、看護計画、看護実施にも影響していきます。すなわち、看護展開の肝はアセスメントだ!って言ってもいいくらい大事なところ。

 

アセスメントに何を書いたらいいのかわからない

看護学生や新人看護師になると、看護展開を理解することは必須になりますが、たいがいこの「アセスメント」の書き方でつまづいてしまいます。そもそも、アセスメントに何を書いたらいいのかわからないんです。わたし、看護学生時代、このアセスメントがほんっとわからなかったです。本を読みあさりましたが意味がわからない。アセスメントとは何かを調べると、「評価」って出てくる。いや、評価はわかるけど何を評価するんだ??ほんとちんぷんかんぷんでした。結局看護師になった今漠然と「アセスメント」ってこういうことだったのか!ってやっと少し腑に落ちてきたところです。(←遅い)

でも看護学生とか新人看護はわからなくて普通だと思います。まだ患者を見たこともないのに、看護過程のアセスメントを考察するなんて、無理に決まってますから。24時間患者をみたことがない新人看護師が、患者の全体像を理解することも難しい。患者がいて、患者の状態をみて初めて看護者としての思考過程ができるんですよ。スマホを見たことないひとが、スマホの使い方を先に座学で勉強したって、すぐに使えるわけないですよね。それと同じで看護師のアセスメント能力も臨床ありき、やってみなくちゃなるようにならない。

おっと話がそれました。

アセスメントに何を書いたらいいのかわからない。それはある程度経験が浅ければ誰にでも起こりうることです。でも看護師になるなら、「アセスメント」とはこういうことをするんだっていうニュアンスをしっかり理解しておく必要があります。アセスメントを理解しているかしていないかで、臨床は全然違ってきます。

 

じゃあ、アセスメントって一体何なの?

看護過程におけるアセスメントとは、言い換えれば看護師が患者の状態をみてどう思っているか、の看護師の考えそのもの、思考過程そのものです。

発熱でぐったりしてるひとをみたらどう思いますか?多くのひとは「しんどそうだな・・」と思いますね。

でもそれが思考過程です。それでもうアセスメントはできているんです。「しんどそうだな・・」と思ったその思考がアセスメントなんです。

 

その「しんどそうだな・・」と思ったことを看護師のアセスメントっぽく書き換えると、

「発熱による倦怠感が著明であり、食思低下による栄養低下状態、および脱水状態が懸念される」

とか書き換えます。ただの「しんどそうだな・・」の思考も、書き方ひとつでアセスメントっぽくなったでしょ?

アセスメントって難しく勉強するけど、実はそんなに難しいことじゃないんです。ただ思考過程を看護用語で文章化すればいいだけ。

患者を見て、誰もが感じるような思考過程を、医学用語を使って文章にすればある程度アセスメントは出来上がります。

 

そしてあと少し、アセスメントするときの書き方のコツがあります。

その点について下記から症例を用いて紹介していきます。

 



看護過程アセスメント:書き方のコツ

看護過程のアセスメントの書き方は、以下のようないくつかのポイントをおさえておく必要がありあます。

  • 患者の今の状態
  • 今の状態の原因
  • 今の状態から考えられる予測

です。

看護師として患者を見る時に、

今の状態(今の状態)がなぜ起こっていて(原因)、この後何が予測されるのか(今後の予測)、を経時的に見る癖をつけてほしいんですね。そしてこの3つのポイントはアセスメントを書く大切な3本柱になります。

すなわちこの3つをアセスメントに書く癖をつけてください。この原因、現状、予測の3つはアセスメントにとても重要な項目です。

アセスメントの書き方のコツ

患者を見たら、まず原因、現状、予測にフォーカスして考えてみてください。

「この患者さんはこのままにしていると何が考えらえるのかな?」

「どうしてこんな状態になっているのかな?」

とか、原因と予測を交えて状態を捉えることが、より有効なアセスメントに繋がっていきます。

 

実際の例がないといまいちわかりにくいので、例を使って原因、現状、予測ふまえたアセスメントをしていきます。

 



看護過程アセスメント:症例でわかる書き方のコツ

症例と状況:転倒転落の身体損傷リスクがある患者のアセスメント

百聞は一見にしかずということで、簡単な症例を使いながらアセスメントの書き方を紹介していきます。

あなたは看護師です。病棟の廊下を歩いていると目の前に杖歩行でふらふらのおじいさんが!!

杖歩行の高齢者

どう思いますか?このままほっとくとこけそうですね。

話しかけてみると、どうも話のつじつまが合いません。

 

おじいさん:「今から仕事にいくんです」

あなた:「今は入院されているので安静にしましょうか」

おじいさん:「入院?そんなのしていません。仕事なので早く帰らないと。」

 

どうも話のつじつまが合いません。カルテには認知症と書かれていました。恐らく安静を伝えても看護指示が入らないことが予測されます。

 

アセスメントの作り方

このおじいさんの現状をアセスメントしてみます。情報整理してみますね。

まずは現状。

このおじいさん、すなわち患者さんの現状は、

  • 杖歩行でふらつきがある
  • 理解力低下があり指示が入らない
  • 高齢である

とかがあげられますね。

 

その原因はなぜ起こっているんでしょうか。

原因は何か考えてみる。

認知症による理解力の低下がある。

加齢に伴う筋力低下でふらつきがある。

などがあげられます。

 

次は予測してみる。

このおじいさんにはほっておいたらなにが起こりそうでしょうか?

わたしだったら、

  • 転倒転落による身体損傷を起こす可能性がある
  • 所在不明になる可能性がある
  • 事故を起こす可能性がある

などのリスクを予測します。

 

これらをくっつけて文章にしてみると、アセスメントが出来上がります。

 

アセスメントの書き方:例

認知症による理解力の低下により看護指示が入らないため、事故を起こす、所在不明になる可能性が考えられ、

加齢に伴う筋力低下でふらつきも認めるため、転倒転落による身体損傷を起こす恐れがある。

 

看護診断と看護計画立案へ

アセスメントで患者の状態とその原因、成り行きが予測できたら、次のステップ「看護診断」と「看護計画」へうつることができます。この症例だと転倒転落の恐れがあっても、アセスメントで認知症や理解力低下で看護指示が入らないとアセスメントしたので、看護計画ではナースコールなどの指導を行うより、TPにあがる「トイレの付き添い」「定期的なトイレ誘導」などが重要になってきます。患者の個別性をしっかりアセスメントしていれば、看護計画をあげていくのがより楽になるわけです。

 

 



アセスメントの書き方のコツ:まとめ

とっても簡単で初歩的なアセスメントの書き方と基礎をまとめました。

あれこれ本を読んでいるとアセスメントがとても難しく感じるようになりますが、看護学生さんをみていてもたいてい患者をみてアセスメント自体は頭のなかでしっかりできていることが多いんです。ただ文章化することが難しい。

アセスメントの書き方のコツは、その患者の個別性にあった患者の

「現状(起こっていること)」

「原因」

「予測(そのままにしていたらどうなるか、予測できること)」

がしっかり経時的に描かれているかどうかです。

 

原因と現状がしっかり理解できれば、予測がつくようになるし、予測ができれば、よりその患者の合った看護診断と看護計画が立案できるようになります。

看護問題のあげ方や看護計画の具体的な書き方については、看護計画の本などを引用したらOKです。

 

アセスメントでは必ずこの3つのポイント「現状(起こっていること)」「原因」「予測(そのままにしていたらどうなるか、予測できること)」がもれていないかを意識するようにしてください。