シンママナースの マリアンナ です。
この記事では、インフルエンザや腸炎などの「感染症」による発熱、全身麻酔後に起こることがある、体の震え「シバリング」について、原因~対応まで解説しています。
シバリングとは
シバリングとは、発熱時や全身麻酔直後に起こる全身の「震え」のこと。
人間のからだに備わる「自律性体温調節」による、体温を一定に維持しようとするからだの反応のひとつ。
シバリングが起きる原因・・・体温の上昇×ホメオスタシス=シバリング
人間の体の体温は、36.89±0.34度になるよう設定されています。
個人差はありますが、この温度が一番電解質バランスを保つことが出来るし、からだにとって一番コンディションを保てる良い温度なんです。
ですが、ひとはなんらかの原因がきっかけで、36.89±0.34度の体温を保てなくなることがある。
体温が上がりすぎたり下がりすぎたりしたときに、体温を正常に保とうとする反応、それがホメオスタシスです。
ひとは運動をして体温が上昇すると汗をかいて体温を下げようとしたり、寒くなるとからだ震えて熱を発生させようとする「仕組み」が備わっています。
体温が下がりすぎたら震える、逆に体温が上がりすぎたら発汗する、などのからだの反応は、体温を一定に保とうとするこの仕組みが「ホメオスタシス」です。
体温の上昇「発熱」
ひとは感染症や腫瘍、アレルギーなど様々な理由で体温が上昇することがあります。これがいわゆる発熱です。
からだにトラブルが起こったとき、ひとは体温が正常を越えて上昇する「発熱」を起こすことがあります。
感染を起こすと、ウイルスや菌と戦う白血球やマクロファージがサイトカインを生み出します。サイトカインは発熱物質を生み出し体温を支配する視床下部へ体温をあげるよう働きかけます。
視床下部に発熱物質が届くと、体温を設定する「セットポイント」の基準値が高くなる。からだが「この体温でいこう!」と指標にしている体温が高くなるってことです。
なので、からだは目標とする体温「セットポイント」に体温が達するまで、体温をあげようと働く結果、震えて熱産生を起こそうとする「シバリング」がおきます。
からだが感染を起こすと発熱するのには理由があります。
感染しているとき発熱することは、「免疫力を高め、発熱の原因菌やウイルスの増殖を抑えることが出来る」からです。
風邪や腸炎など感染症を起こしたときに起こる発熱には、以下のようなメリットがあります。
- 病原菌・ウイルス増殖を抑制する
- 白血球の機能が促進される
- 免疫反応が強くなる
発熱はからだが戦っている証拠、と言われるようになりましたが、本当にその通り。
発熱には脱水や痙攣などのリスクもありますが、むやみに解熱剤で熱を下げようとするのもよくない。
患者の訴えや状態をしっかり観察しながらのケアが大事になります。
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全身麻酔
全身麻酔を行うと、
- 侵襲から発熱物質を出すサイトカインが分泌される
- 術野の露出・長時間ほぼ裸で室温に露出されることによる低温の低下
が起こります。
術中は麻酔薬によってセットポイントが下がっているのでシバリングは起きません。
麻酔から覚醒したとき、
- 低下した体温をあげるため
- サイトカインによる発熱物質の働き
が相まって、シバリングが起きることがあります。
術中は低下していたセットポイントも、麻酔覚醒後には正常な体温を保とうと正常な設定値に戻る。おまけに裸で長時間術野を露出していたから体温は下がっている。
麻酔から覚醒したと同時に、もとの体温に至るまで、からだは振戦(シバリング)を伴って、体温をあげようとします。
発熱とは「シバリング」が起こるメカニズムが少し違いますが、原点は同じ。
からだにとって一番良い体温に設定するために、震えを起こして体温をあげようとしている状態です。
術中はこのシバリングが起きないように体温管理することが大切といわれています。
シバリングのポイントは視床下部のセットポイント
前述でも少し触れてますが、人のからだは体温を一定に保つための「目標体温」を持っています。それは脳の視床下部で設定されている。
それを「セットポイント」と呼びます。
風邪やインフルエンザ、腸炎などの感染症や、侵襲の大きい全身麻酔の術後シバリングが起こるのは、
現在の体温が、視床下部で設定される「セットポイント」の体温に達していないことが原因です。
体温が上がろうとする、下がろうとする「体温」のすべてを管理しているのは、視床下部のなかにあるセットポイントがキーになります。
シバリングのデメリット
シバリングは目標とする体温になるために起こるからだの反応ですが、本来起こらない方が良い現象です。
その理由は以下の通り。
- 酸素消費量が増加
- 代謝性アシドーシスや低酸素血症の原因になる
- 眼圧・脳圧・血圧の上昇をきたす可能性がある
- 術後疼痛の増悪
- (術後創部などの)縫合不全の原因になる
- 患者にとって精神的不安が大きい
- 正確なバイタルサイン測定ができない
- 安静安楽を保てない
こうやって見るだけでも、シバリングとはからだにとってロクなことがないことがわかります。
いくらからだの正常な反応とはいえ、極力シバリングを起こさず体温コントロールできることが大切。
したがってシバリングを起こしているひとがいれば、シバリングを起こさない環境整備が重要になります。
シバリングの対応と看護
シバリングの看護:保温する
シバリングが起こっているときには、セットポイントで設定される体温に近づけ、患者が感じる寒気を最小限に抑えるために電気毛布や室温調整、温罨法などを使って保温に努めます。
発熱しているとしても、シバリングが起こっているときにクーリングすると、シバリングがさらに増強します。シバリングが起こっていれば、まず保温して患者の安楽が保てるよう努めましょう。
正確なバイタルサインを把握する
シバリングを起こしているときは、様々なリスクが伴います。
呼吸抑制がかかり、酸素飽和度(SPO2)が低下したり、血圧が変動したり。
シバリングによってSPO2が低下するなら酸素投与を医師に相談する等、正常なバイタルサインを把握することで、シバリングによる苦痛やリスクを最小限にすることができます。
保温に努めるととともに、シバリングから患者のからだにどんな負担がかかっているかを早めに把握することが、スピーディな必要なケアの展開につながります。
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