シンママナースの マリアンナ です。
この記事では、発熱の原因とメカニズム、考えられる看護問題、必要な看護ケア等について解説しています。
発熱とは?発熱が起こるメカニズム
発熱とは、ひとことで言えば「体温の異常上昇」のこと。
視床下部にある体温調節中枢が、体温の設定を高くしてしまった結果起こる、からだの反応です。
発熱がある・ないの判断基準は、37度。(個人差はありますが)
一般的には37度をこえると、「熱がある」と判断します。
そもそも「体温」ってなに?体温について理解する
体温とは、脳内にある視床下部に支配される、からだの体の温度のこと。
からだに異常がない限り、人間の正常な体温は36.89±0.34度に設定されています。
ただ、一概に平均的な体温が36.89±0.34度と言っても、代謝が良いひとや生理後の女性だと体温は高めですし、高齢だと低めの体温のひともいます。
体温は、一日のうち午前2時から3時頃がもっとも低く、午後3時から5時頃が一番高くなります。
からだにトラブルがない限り、ひとの体温は一定になるよう調整されます。
寒ければ震えが起こって体温をあげようとしたり、逆に熱いと汗をかいて体温を下げようと働いたりします。
いわゆる人間が持つ「ホメオスタシス(恒常性)」です。
人間のからだは常に良いコンディションでいられるために、体温を一定に保つための様々な機能が備わっているんです。
発熱の原因
体温を一定に保とうとする「ホメオスタシス」が備わった人間でも、体温が高くなる「発熱」を起こすことがあります。
これは、おおまかに4つの原因に分類されます。
- 感染症
- 全身性感染症
- 呼吸器感染症
- 消化器感染症
- 中枢神経感染症
- 生殖器感染s尿
- 皮下、軟部組織などの感染症
- 悪性腫瘍
- 膠原病・アレルギー
- その他
発熱のメカニズム
感染症、悪性腫瘍、膠原病・アレルギーetcになると、体内で発熱物質が作用し、脳の体温をコントロールする部位「視床下部」で、保つべき体温が「高く」設定されます。
発熱物質には、外因性発熱物質と内因性発熱物質があります。
発熱物質のはなしはとても深い解剖の話になるので、ここでは割愛しますが、テルモさんのサイトでとてもわかりやすく解説されていたので、リンクを貼っておきます。
発熱から考えられる看護問題
発熱を放っておくとどうなるのか。発熱から考えられる二次的問題(看護問題)を紹介します。
- ADLの低下
- 電解質バランスの不均衡
- 脱水
- 褥瘡、肺炎などの二次感染
- 不穏、意識障害
- 心機能低下、ショック
- 解熱に関連する低血圧、ショック、けいれん、副作用
- 精神的不安
ちょっとあげるだけでもたくさんありますね。
「発熱」とひとことで言っても、看護問題は年齢層や患者個人の個別性によって変わってきます。
発熱から考えられる看護問題のなかでも、このひとの一番問題になるのはこれだ!っていうのをピックアップして、看護計画を立案してあげるようにしましょう。
発熱の看護計画:OP・TP・EP
発熱の看護計画を立案するとき、看護目標は
- 健常時の体温に戻せること
- 発熱に伴う倦怠感や頭痛など「随伴症状」が軽減・消失できること
- 安静安楽を保てること
- 二次問題を起こさないこと
を軸にして考えます。
本人が安楽で、苦痛が軽減され、できるだけ早く元の状態に戻る。
そのために看護師としてなにができるかを考えて、プランを立案します。
観察項目:OP
- 発熱含むバイタルサインの変化
- 発熱の随伴症状
- 発熱の原因の変化
- 発熱の二次問題の有無・程度
- 発熱に関連する診察・検査結果
- 発熱に対する治療の副作用・効果
- 職業や海外渡米歴、使用した薬や動物との接触など
発熱を起こしている患者さんの観察は、まず発熱自体の変化はもちろん
- 原因
- (治療と看護の)結果
- 発熱と治療に関連するその他の症状
は必ず観察するようにします。
発熱の「原因」自体が改善しないと発熱が収まることがありません。
もし肺炎が原因の発熱であれば、原因である「呼吸器」症状の変化は経時的に捉えておくべきだし、
肺炎に対する検査結果(採血データとかレントゲンとか)の変化は知っておくべきです。
また、発熱に対して行う日々のケアや、抗生剤等の治療で、望まない症状がでていないかチェックが必要です。
例えば、抗生剤のアレルギー症状は出ていないか、とか、
脱水症状が出ていないか、とか。
また、感染症を疑う情報として「海外渡米歴」や「動物との接触」「職業」の情報は有力ですし、アレルギーを疑う情報として、薬物の使用歴は大切なO情報です。
発熱だけを観察するのではなく、発熱から考えられる二次問題を予測しながら、二次問題に関する観察も行う。
検査結果などタイムリーな患者の情報を得ることで、現在の患者に応じた看護計画が立案できるので、発熱に関連する情報も、日々収集してアセスメントしていきます。
看護ケア:TP
発熱に対して看護師が行う看護ケアは、以下のようなものがあげられます。
- 冷罨法
- 衣服、寝具の調整
- 環境整備
- 水分摂取、食事介助
- 清潔援助
- ADL介助
- 体位・ポジショニングに対する援助
- 治療に対する管理
- 輸液管理
- 精神的支援
発熱に対するケアは、根拠を理解しながら選択できることが大切。
各援助の「根拠」について解説します。
発熱のTP(看護ケア)の根拠
1.冷罨法
氷枕、冷シップ、冷水、清拭などを行い、クーリングを図ります。
からだの熱の流れは熱い方から冷たい方へ流れていきます。動脈に近い部位(頸動脈、腋下動脈、大動脈部)を冷やすことで、クーリングの効果を高めることが出来ます。
また、熱くなったからだを冷やすことで、気持ちよさを感じることができ、発熱に関する随伴症状を軽減する可能性もあります。
2.衣服、寝具の調整
発熱時の衣服、寝具は調整は重要です。
体温の上昇ともに、発汗や蒸れが生じ、皮膚のトラブルや不快感を生み出します。
また、熱が上昇する前におこる悪寒(シバリング)時は、本人は寒気を感じているので、保温してあげ安楽を保てるよう努めます。
逆に体温が上がりきって、からだが熱くなってきたら掛物調整を行い、冷罨法等を併用して熱がこもらないようにします。
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3.環境整備
悪寒時には部屋の温度を温かく、体温上昇時には室温をやや低めに。
正常範囲を超える体温の患者の負担は、とても大きいものです。
また、発熱に伴う倦怠感から、自分で空調をコントロールするもの困難です。
発熱患者の場合、掛物、衣服、環境から体温を適切に保てるよう配慮します。
4.水分摂取、食事介助
発熱患者の栄養管理には、以下のふたつのポイントを意識します。
- 水分・電解質の補給
- 食欲が増す工夫がされた、栄養値が高い食事
発熱時は、エネルギー消費量が高くなります。
発汗や不感蒸泄から、脱水のリスクも高くなる。患者の口渇感の訴えだけでなく、検査データや尿の色など、主観的データ以外からも脱水リスクに関してアセスメントが必要です。
「喉が渇いていない」っていっても、実際体内では脱水状態の患者ってたくさんいますからね。
水分は一気に摂取すると、排尿されてしまい有効に水分摂取できないので、少量ずつ、頻回に摂取できることが望ましい。
なので、患者が水分を摂取しやすい環境(手が届く範囲にコップがある、ストローを利用して寝ながらでも飲める、いつでも冷たい飲み物が用意され、飲みやすいetc)を整備していくことが大切ですね。自分で飲水できない患者なら、数時間おきに訪床して、飲水を介助する。とか、看護師として患者が水分摂取しやすい環境を整える必要があります。
発熱時は健常時と比べて、たんぱくの燃焼が3~4倍になるといわれており、またビタミンの消耗も激しくなります。
糖質だけでエネルギーをカバーすると、代謝亢進をきたして体重減少を伴ったり、脂質は食思低下・消化機能低下しているので、摂取しにくい。
これらのことから、発熱時の栄養は、高カロリー、高たんぱくな食べ物を選び、積極的なビタミン摂取を心掛ける必要があります。
5.清潔援助
発熱を起こすとADLは低下し、患者のセルフケア能力は低下します。
不感蒸泄、発汗が伴う発熱は皮膚トラブルを起こす恐れがあるし、乾燥しがちな口腔、鼻腔、眼瞼なども、適度な観察とケアを介入していかないと二次問題を引き起こす可能性があります。
からだが弱っているときに清潔を保つことは、二次感染を予防することにつながり、患者本人へ爽快感や安楽を提供できます。皮膚・粘膜は発熱により乾燥しやすく、傷つきやすくなります。また、眼脂の分泌増加が起こると、目が炎症を起こす原因になることも。
発熱患者には、
- 口腔ケア
- 口唇・鼻腔・眼瞼の清潔、保護
- 陰部、臀部、全身の保清
の清潔援助を行き届いているか、しっかり観察しながらケア介入します。
6.ADL介助
体温は1度上がると、代謝が13%増加するといわれています。
安静はエネルギー消費を防いで、回復を助けます。患者の状態に合わせて安静が保てるように、必要であればADLが安楽に保てるよう介助していきます。
7.体位・ポジショニングに対する援助
発熱患者は、腰背部痛や関節痛を伴ったり、倦怠感、脈拍の増加などが起こることがあります。
倦怠感も強く、自立して体位を変える、安楽なポジショニングをとることが困難なことがあります。
長時間の同一姿勢は、褥瘡、皮膚トラブル、沈下性肺炎、腸蠕動低下などの二次問題を起こしやすくなります。
したがって、以下のような援助が必要になります。
- 枕、クッションなどをつかった安楽なポジショニング、体位交換の援助
- 離被架、ギャッチベッドなどを利用した安楽な体位の維持
- 定期的な体位交換の援助
8.治療に対する管理
発熱が原因で、末梢血管の拡張・呼吸数の増加します。この反応が中枢神経や末梢神経を刺激し、頭痛や関節痛が起こります。
発熱によるこれらの症状を緩和するために、消炎鎮痛剤や解熱剤などの薬剤を使用することがあります。
ですが、この薬剤使用が原因で、体温が上下し体力消耗をさらに激しくしたり、ときに解熱に伴う血圧低下・ショックを起こすことも。
薬剤使用したときは、全身状態の観察とアセスメントが重要になります。
9.輸液管理
発熱があるのに、どうしても経口摂取が難しい。このままでは低栄養や脱水を起こして悪循環に陥ってしまう。
そんな患者さんには、点滴療法がおこなわれることがあります。
経口摂取ができないときに行う輸液は、点滴からの水分・栄養補給が重要であるため、点滴刺入部に漏れはないか、正しく滴下しているかをしっかり観察・管理する必要があります。
精神的支援
発熱が続くと、どの年代においても精神的な負担はつきものです。
体力も消耗し、いつもできることができなくなる。患者は精神的な不安を抱えています。
看護者は傾聴姿勢で患者と接し、患者の望むことが最大限実現できるよう援助することが大切です。
患者が発熱したとき、解熱剤を使って解熱し患者の倦怠感や負担を取り除くことは大切ですが、発熱したからといって、すぐ解熱剤を第一選択にするのはよくありません。
というのも、解熱剤自体に副作用があり、体力がない高齢者や小児では特に注意が必要なものでもあるからです。
確かに高熱では解熱をはかって患者の安楽を図ることは大切ですが、一度体温測定して発熱があったからといって、すぐ解熱剤を使用するのはちょっと短絡的です。
発熱を認めるときは、正確な体温や随伴症状を観察して、緊急性をアセスメントすることが大切。ただ日光や空調が原因で熱がこもっているだけだった、なんてことも結構あるものです。
体温測定とともに肌に触ってみて熱さはどうか、発汗はどうか、尿の色、シバリングの有無など、全体的な客観的情報を見て、薬剤使用を考慮していきます。薬剤はできるだけ、「本当に必要なとき」かどうかを見極めてから使用することが大切です。
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指導:EP
発熱患者に行う指導の大枠は以下の2つ。
- 患者が発熱に関する症状を自ら訴えることができる
頭痛、悪寒戦慄、倦怠感・・・。発熱に関する随伴症状を患者自身が把握し、自ら訴えてくれることは、タイムリーな看護ケアに繋げることができ患者の回復を促します。
発熱を起こすとどんな症状がおきるのか。患者に説明し、自ら訴えてきてくれるよう指導することで、状態に悪化を防ぐことが出来ます。
- 患者と家族が発熱に対するケアの必要性を理解し、積極的に治療に参加することができる
患者自身が発熱に関する症状を理解できていたら、次は発熱に対する必要なケアについて、患者と家族自身が自らケアを行えることも大切です。
脱水予防のための飲水の必要性や、安静安楽の必要性、保清の必要性などを理解したうえで、できる部分は自分で判断できるようになるよう、患者と家族の能力にあわせて指導を行います。
発熱の看護 まとめ
発熱はどの年代、どの病棟でも起こりうる症状のひとつ。
高熱を呈した際の患者の倦怠感は強く、どんな健常者でもセルフケアが低下する症状のひとつです。
エネルギー消費が強い発熱時は、安楽が一番大切。安楽をもって、栄養と水分を確保しながら、回復を目指します。
安全に安楽を保てるために、栄養や水分がしっかり確保できるために看護者としてなにができるかを考えながらケアをすることが大切です。
発熱に関する看護に関しては、以上。
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