シンママナースの マリアンナ です。
ドレナージとは、治療や予防のために貯留する体液を排出することです。この記事では外科手術に共通しているドレーン管理のポイントについて紹介しています。
ドレーン管理とは
浸出液や膿瘍等浸出液が貯留した閉鎖腔内の排液や、浸出液の排出不良部位、今後貯留が予測される部位にドレーンやチューブを挿入し、体液を体外へ排液する方法をドレナージといいます。
ドレーン管理とは、このドレナージを目的に挿入するドレーンを管理することです。
体内に挿入される主なドレーンやチューブ
体内に挿入される主なドレーンやチューブの以下のようなものがあります。
- 脳室ドレーン
- 経鼻チューブ
- 器官内チューブ
- 胸腔ドレーン
- 胆道チューブ
- 胃瘻チューブ
- 小腸瘻チューブ
- 腹腔ドレーン
- 尿道カテーテル
ドレナージの種類
ドレーン管理には、閉鎖式と解放式があります。それぞれ管理方法や観察方法が違います。
ドレーン管理の目的
ドレーン管理の主な目的は、以下の3つに絞られます。
- イレウス等治療そのものを目的に行う
- 術後合併症の予防として行う
- 術後の病態把握として行う
具体的な管理方法は目的・方法・挿入部位によって異なりますが、基本的なドレーン管理の看護は同じです。
以下からドレーン管理の基礎知識と、看護のポイントについて説明します。
閉鎖式ドレーンと解放式ドレーンの違い
解放式ドレーン
閉鎖式ドレーンとは、体内に挿入したドレーンが体外に出たところで切断されているドレーンのタイプです。排液はドレーン周囲に流出し、多くの場合、ガーゼなどで吸収します。
メリット
- 浸出液の正常が細かく観察できる
- 貯留物の粘調性が高いものに適している
- 排液の量や性状の確認がしやすい
デメリット
- 逆流性感染の合併症を起こすリスクが高い
- 排液の量、正常の確認の都度ガーゼ交換をする必要がある
閉鎖式ドレーン
閉鎖式ドレーンとは、体液を体内に挿入されたドレーンから自然の圧差やサイホンの原理によって、体外のバッグやボトルに排液が誘導される仕組みのドレーンのことです。ドレーンの内容物が外界に通じることはない構造になっています。メラサキュームなどの低圧持続吸引器やポータブル持続吸引器に接続して積極的に陰圧をかけて行うドレナージもあります。
メリット
- 逆流性感染をおこしにくい
- 排液量の測定や体液採取の管理が簡単
- ドレナージ圧を調節しやすい
- 排液の量・性状の確認がしやすい
デメリット
- ドレーンの折り曲げ、閉塞に注意が必要
- 患者が動きにくい
ドレナージを疾患別・目的別に詳しく知る
ドレナージにはそのドレナージをする原因によって目的が変わります。つまりそのドレナージをすべき疾患や状態によって、行うドレナージの種類(治療的ドレナージとか、予防的ドレナージとか)も変わるんです。そのため体液を排出するドレナージでも、そのドレナージをする原因によって目的は変わります。
治療的ドレナージ
減圧ドレナージ
体腔に体液が貯留して体腔の本来の圧よりはるかに高い内圧が生じているときに行います。
適応疾患や症例
- 水稲圧の脳室ドレナージ
- 緊張性帰郷の胸腔ドレナージ
- 心タンポナーデの心ドレナージ
等
閉塞性疾患に関するドレナージ
流動物が通過する管腔臓器に閉塞をきたした場合や閉塞上流部に流動物が停滞した場合に使用します。
適応疾患や症例
- 胃の幽門狭窄の胃管
- イレウスのイレウスチューブ
- 閉塞性黄疸の経皮経肝胆道ドレナージ
等
排膿ドレナージ
濃が多くの場合感染巣であり、有害な貯留物である濃を排出するために行います。
適応疾患や症例
- 皮下腫瘍
- 膿胸
- 肝腫瘍
等
予防的ドレナージ
術後合併症の因子
患者側の因子
低栄養状態(低たんぱく血症、ビタミン欠乏症等)、糖尿病、肝硬変といった疾患を合併している場合に行います。
手術手技の因子
乳がんの術後等死腔をもたらす可能性があるときに使用します。
インフォメーションドレナージ
排液の観察が術後の病態把握に役立つ場合に挿入します。
適応疾患や症例
- 消化管手術時の吻合部ドレーン
等
ドレーン管理の看護目標
ドレナージの目的は、そのドレーンを挿入する理由によって変わりますが、基本的にドレーンを挿入する目的には、以下のようなものが考えられます。
- 瘻孔の貯留液排出促進
- 浸出液貯留や膿瘍時の排出
- 通過障害の減圧
- 情報収集
- 浸出液貯留防止
また、看護の視点で考える「ドレーン管理の看護目標」は以下のようなポイントが考えられます。
- ドレーンの自己抜去・自然抜去を防止する
- ドレーンの閉塞を防止する
- ドレーン排液を管理する
- ドレーン圧を管理する
- ドレーンからの感染を防止する
- ドレーン挿入中患者の安楽を助ける
上記に列挙した「ドレーン管理の看護目標」の項目ひとつひとつについて、具体的な看護のポイントを以下に記載します。
ドレーンの自己抜去・自然抜去を防止する
ドレーン挿入中は自己抜去・自然抜去を防止するよう努める必要があります。
ドレーンの自己抜去・自然抜去を防止するの看護のポイント
- ドレーンの固定部位は2~3か所にし、固定する位置は体動によって屈曲しない場所にする。
- ドレーン固定をはがれにくくするために、テープを一枚貼った上に、下図のようにオーム型にテープを貼付する。
はがれないテープ固定貼り方(オーム型に貼付する)
- 接続部(コネクター)は布製テープで巻いて固定する。
- ドレーンバッグはベッド柵のルートにゆとりをもたせ固定する。
- ドレーンキーパーがあれば使用する。
ドレーンの閉塞を防止する
ドレーンの閉塞防止は、どんな目的のドレーンでも必要な管理項目であり、効果的な排液を行うために必要な看護です。
ドレーンの閉塞を防止する看護のポイント
- ドレーン開通の観察は頻回に行う。
- 胸腔ドレーンの場合、ドレナージバッグの水封室の水面で、脳室や腹腔ドレーンの場合呼吸性波動でドレーンの閉塞有無を観察する。
- 体位変換により排液を促す。
- 粘調性の高い排液や濃液、コアグラの排液などはドレーン閉塞の原因になるので、適宜チューブのミルキングを行い、排液を促す。
ドレーン排液を管理する
ドレーンの排液管理は、患者の状態をアセスメントするのに役立ちます。
ドレーン排液を管理する看護のポイント
- 排液が急激に減少、もしくは停止している場合、閉塞している可能性がある。
- 排液が急激に増加している場合、出血している可能性がある。
- 漿液性から血性に変化するなど出血の要因がないか観察する。
- 浮遊物、汚臭があれば、感染兆候がないか観察する。
ドレーン圧を管理する
閉鎖式ドレナージの場合、効果的な圧が継続的にかかっているか、看護師による観察が必要です。
ドレーン圧管理の看護ポイント
- エアリークの有無を観察する。
- カテーテル挿入部、接続部の観察をする。
- メラサキュームなどの低圧持続吸引器やポータブル持続吸引器にシステムトラブルが起こっていないか観察する。
- 陰圧式のドレーンは、各勤で必ず陰圧がかかっているか観察する。
ドレーンからの感染を防止する
ドレーンからの感染は、ドレーン刺入部からのよるものと、排液の逆流による逆流性感染のタイプがあります。これらの予防に対する看護が必要です。
ドレーン挿入中における感染予防の看護ポイント
- 創部が無菌の状態であれば、ドレーンとその回路は閉鎖式のものを使用する。
- 排液バッグやボトルを創部より上にあげない。
- 外部から細菌の侵入を防ぐため、接続部がゆるまないようテープなどで巻いて固定する。
- バイタルサインや全身の状態を観察し、感染兆候の早期発見に努める。
ドレーン挿入中患者の安楽を助ける
ドレーン挿入中の患者は、精神的、身体的な負担が大きく、これらに対する援助が必要になります。
身体的苦痛における看護ポイント
ドレーン挿入中の患者は、ドレーン挿入部の痛みや、固定や体動に伴う痛み、処置に伴う不快感などがあることが考えられます。
- ドレーンのずれによる痛みを軽減するために、固定は二か所以上の部位にする。
- 鎮痛薬を使用する場合、使用前の痛みの程度、使用後の薬効に関するアセスメントを行って、効果を評価する。
- 安静制限内で可能な安楽体位、ドレーンの固定方法等、評価と提案を行う。
精神的苦痛における看護ポイント
ドレーン挿入中の患者は、体に挿入されているドレーンに対する不安や違和感、手術による不安など、精神的な負担を大きく感じています。ドレーン挿入に関して伴う患者の精神的苦痛が緩和できるよう、看護師は随時の説明や指導を行い、不安の軽減に努める必要があります。
- ドレーン挿入によるボディイメージの変化や、他者からの視線が気になる心理的苦痛を最小限にできるよう、傾聴を行い、患者のニーズをタイムリーの捉えて、関わりを持っていく。