シンママナースの マリアンナ です。
透析患者の心電図モニターに突然テント状T波(T波が突然増高)が。同時にNsコールあり、「胸が苦しい」と。
こまったポンコツナースのわたしは、T波の増高と透析患者に起こる高カリウム血症の関係について、調べてみました。
透析患者×高カリウム血症×テント状T波についての忘備録です。
ある日突然起こったびっくりするくらいの高いT波
ある日勤の日。
高カリウム血症・腎不全で透析中、状態が悪い患者の心電図モニターのアラームが。
VPCとかでてるけど、なんか違う・・。
ん?異常なくらいT波が高いぞ・・?
すぐに心電図モニターの本を読み漁って、
劇的なT波の増高は、高カリウム血症によるテントT波だということがわかった。
あぁ、なんか心電図研修とか循環器の授業でもいってたな・・。(すぐ思い出せない)
テント状T波の心電図波形(ECG-cafeさんから引用させていただいております)
そうそう、こんな感じ!
t波が異様に高い・・。
気持ち悪い波形ですね。
高カリウム血症によるテント状T波とは
テント状T波の機序
なんで高カリウム血症だと、T波が異常に増高するんだって話。
血中のカリウム値が正常値より高くなると、
細胞内にカリウムと血中のカリウムのバランスが取れなくなる。
すると細胞は脱分極しにくくなる。(詳細は知識の卵さんに掲載されていました)
そもそも心臓が動くためには細胞の脱分極によるエネルギーが必要。
血中カリウムが高値なことで、細胞のイオンバランスに変化をもたらし、
細胞が再分極(エネルギーを作る工程みたいなもの)する時間が短くなってしまう。
それが原因で、収縮した心臓がフワっともとに戻る時間がなくなる。
つまりT波の間隔が短くなって、T波が増高するらしい。
もう難しいし細胞とか分極とか違う世界だから、簡潔にまとめよう。
要は
⇒カリウムが高値
⇒心臓を動かす細胞のエネルギーに異常が起こる
⇒収縮した心臓がもとの形に戻りにくくなる
⇒収縮した心臓をもとに戻すために力強く心臓が拡張する(←これが増高T波!)
T波って、収縮した心室がフワっと広がるとき(拡張するとき)を表した波ですからね。
心臓が勢いよく元の形に戻っているイメージでしょうか。
高カリウム血症によるテント状T波のポイント
さっきの画像をまたおさらい。
- 心電図の幅がなんだか広くなる
・・・QRS波幅が延長する。
- P波がない、もしくはやたら高い
・・・P波が減高 もしくは 消失する。
- STが低すぎ+高すぎ
・・・STが上昇 もしくは 下降 する。
- T波が異常に高い
・・・T波の増高(テント状T波)
テント状T波が現れたら~観察ポイントと判断~
高カリウム血症によりテント状T波が現れたら、
まず致死的な心停止等にならないことにポイントをおいて、
観察が必要になります。
血中カリウム値によって、目安になる心電図波形は以下のようにかわります。
カリウム値 | 心電図 |
5.5 – 6.5 |
テントT波 |
6.5 -8.0 |
P波消失 PR延長 QRS幅拡大 徐脈 ブロック 等 |
8.0以上 | 正弦波(sine wave) ↓こんなやつ VT(pic:コウメイ塾さん) VF(pic:オペ・ナース養成講座さん) 心停止 |
テント状T波があらわれた地点で、血中カリウム値が5以上ある。
患者の血中カリウム値が上昇していけば、
やがて心電図モニターはP波消失やPR延長、QRS幅拡大、、徐脈、ブロック波形等を示すようになり、
カリウム値が8を超えるようになれば、いずれはVT・VF波形を生じるようになる。
たぶんそんなことがあればこの地点で、循環不全状態だから患者さんは意識を失っているか、失いかけているかっていう状態でしょう。
テントT波が現れて、高カリウム血症だ!っていうのが予測できた地点で
看護師としてできることはまず、
患者がこのVF波形やVT波形にならないよう、早期発見して医師に指示を仰ぎ、予防すること。
テント状T波がでた地点で、
胸部症状や倦怠感などの訴え、心電図モニターの変化やバイタルサインの観察が重要になってきます。
観察すべきところは、
・患者自身の症状の訴え(胸部症状や嘔気、倦怠感等)
・バイタルサインの変化
・患者の意識レベル変化
・心電図モニターの変化
・脈リズムなどの身体的情報
とかは最低限みておきたいところですね。
それらをある程度おさえていれば、
ドクター報告もある程度スムーズにできるかと思います。
透析患者と高カリウム血症は関係があったのか?
わたしが今回受け持った高カリウム血症の患者さんは、腎不全の透析患者でした。
透析患者は腎機能が低く、健常者であれば尿中に排泄されるカリウムが、正常に排泄されない問題を抱えています。
透析患者さんは基本腎機能が悪いので、電解質トラブルをかかえやすいんですね。
今回テント状T波を生じわたしを悩ませた患者さんは、
テント状T波と同時に強い胸部症状と高値の血圧を伴っていたので、
すぐドクターコールして、12誘導と血液検査をしてもらいました。
検査だなんだってしている間に、なぜか胸部症状はおさまり、
血液検査の結果もカリウムは6前後でした。(まぁ高値は高値ですけどね)
良い勉強になりました。
看護師って、本当にいろんな知識が必要になる仕事なので、
大変さをつくづく身に染みている今日この頃です。