心肺蘇生の胸骨圧迫~BLSにおける心臓マッサージのポイント~



シンママナースの マリアンナ です。

心肺蘇生における胸骨圧迫(心臓マッサージ)について、圧迫する部位や回数、圧迫する速さなど、ガイドラインをもとにまとめています。

※実際に胸骨圧迫の知識を得る時は、しっかり最新のガイドラインを読み込んで、ガイドラインを参照にしてくださいね。



胸骨圧迫とは

胸骨圧迫とは、別の言い方で心臓マッサージのことを言います。一般的には心臓マッサージと言われることが多いですが、医療現場では胸骨圧迫と言われることもあります。

実際医療現場で働いていても、心肺停止の患者が運ばれてくると結構あせります。こないだ心肺停止で運ばれていた患者さんに心臓マッサージしてたんですけど、あせりすぎて回数を数えていなくて、救急隊員に「アンビューバッグ揉ましてください」って頼まれました。救急隊員さん失礼しました。

心臓マッサージ30回に対して、人工呼吸(アンビューバッグでの呼吸介助も含む)2回とか、いろいろルールがあるんですね。急変ってなかなか予定してあるもんじゃないから、手技を忘れてしまいます。わたしのおさらいも含めて、この記事では心肺蘇生における胸骨圧迫圧迫について紹介していきます。



胸骨圧迫の目的

胸骨圧迫の目的は、心停止したひとの心臓を外部から圧迫して、適切な医療処置を受けられるまでの間、そのひとの血流を助けるために行います。心停止しているってことは、その間体中に血流が流れていないわけで、そうなると、凄まじい速さで体の細胞たちは死滅していきます。とくに脳に血流がいかないっていうのは致命的で、脳細胞が死滅した場合、仮にその後医療処置をうけて蘇生できたとしても、脳細胞の死滅によって重篤な障害が残ることもあるんです。だから心肺停止したときは、医療処置が受けれる環境になるまでの間、いかに血流を維持し細胞の死滅を防ぐかってことが重要になってきます。



BLS(一次救命処置)の胸骨圧迫の手順

JRC 蘇生ガイドライン 2015 オンライン版(一般社団法人 日本蘇生協議会)では、BLS(一次救命処置)での胸骨圧迫について以下のように記載されています。

胸骨圧迫する心臓の位置

胸骨圧迫する位置は、胸骨の下半分と言われています。心臓の位置は胸骨圧迫の真下にあります。

 

CapD20170125

動画 胸骨圧迫イメージより

 

 

JRC 蘇生ガイドライン 2015 オンライン版では、

3) 胸骨圧迫の部位 CQ:胸骨圧迫で圧迫すべき最適の部位はどこか?

p13

という議題に対して、

推奨と提案

成人の心停止では、胸骨の下半分を圧迫することを提案する(弱い推奨、非常に低いエビ デンス)

っていう結論が出ています。

心臓マッサージする位置は、昔は乳首と乳首の間なんて言われていたこともありますが、乳首の位置ってひとによって違うし、加齢とともに下がるから、実際にふれてみて胸骨の位置を確認したほうがいいですね。

ガイドラインには心臓マッサージする位置は「胸の真ん中」や「胸骨の下半分」と表記されていました。

 



胸骨圧迫のやり方

胸骨圧迫のやり方について、JRC 蘇生ガイドライン 2015 オンライン版(一般社団法人 日本蘇生協議会)には以下のように記載されています。

 

1) CPR の開始手順

CPRは胸骨圧迫から開始。傷病者を仰臥位に寝かせ、救助者は傷病者の胸の横にひざまずく。

2) 胸骨圧迫の部位・深さ・テンポ

胸骨圧迫の部位は胸骨の下半分とする。深さは胸が約 5cm 沈むように圧迫するが、6cm を 超えないようにする。1分間あたり 100~120 回のテンポで圧迫する。小児における深さは胸の厚さの約 1/3 とする。

3) 胸骨圧迫解除時の除圧

毎回の胸骨圧迫の後には、胸を完全に元の位置に戻すために、圧迫と圧迫の間に胸壁に力がかからないようにする。ただし、胸骨圧迫が浅くならないよう注意する。

4) 胸骨圧迫の質の確認

複数の救助者がいる場合は、救助者が互いに注意しあって、胸骨圧迫の部位や深さ、テンポが適切に維持されていることを確認する。

5) CPR 中の胸骨圧迫の中断

CPR 中の胸骨圧迫の中断は最小にすべきである。人工呼吸や電気ショック(後述)を行う ときに胸骨圧迫を中断するのはやむを得ないが、これらの場合でも胸骨圧迫の中断は最小にすべきである。

6) 救助者の交代

疲労による胸骨圧迫の質の低下を最小とするために、救助者が複数いる場合には、1~2 分ごとを目安に胸骨圧迫の役割を交代する。交代に要する時間は最小にする。

 

 



胸骨圧迫と人工呼吸

人工呼吸と胸骨圧迫に関しては、以下のとおり。

1) 胸骨圧迫のみの CPR

訓練を受けていない市民救助者は、胸骨圧迫のみのCPRを行う。訓練を受けたことがある 市民救助者であっても、気道を確保し人工呼吸をする技術または意思がない場合には、胸骨 圧迫のみの CPR を行う。

2) 気道確保と人工呼吸

救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意思がある場合は、胸骨圧迫と 人工呼吸を 30:2 の比で行う。とくに小児の心停止では、人工呼吸を組み合わせた CPRを行うことが望ましい。

人工呼吸を行う際には気道確保を行う必要がある。気道確保は頭部後屈あご先挙上法で行う。1回換気量の目安は人工呼吸によって傷病者の胸の上がりを確認できる程度とする。CPR 中の過大な換気量は避ける。送気(呼気吹き込み)は約1秒かけて行う。

3) 感染防護具

口対口人工呼吸による感染の危険性はきわめて低いので、感染防護具なしで人工呼吸を実施してもよいが、可能であれば感染防護具の使用を考慮する。ただし、傷病者に危険な感染症があることが判明している場合や血液などによる汚染がある場合は、感染防護具を使用すべきである。

 

つまり、心肺蘇生のポイントは、

  • 圧迫部位は胸骨の下半分
  • 5cm沈むくらいに1分間あたり 100~120 回のテンポで圧迫
  • 心マと人工呼吸(アンビューバッグの呼吸介助含む)の比率を30:2で行う

を覚えておかないとですね。(成人の場合)

いつもその場面になると、すぐ思い出せないんです。やっぱり普段からやり慣れてるってすごく大事だなーって思います。やってないと忘れちゃう。これ覚えとかなきゃ。

 



心臓マッサージするときの速さをつかむコツ

ちなみに余談ですが、

心臓マッサージする速さについて、分あたり100回〜120回とか言われても、イマイチイメージできなくて、昔うけた赤十字の心肺蘇生の研修で質問したとき、

「もしもしかめよ亀さんよ」のうたのテンポに合わせて心臓マッサージをすると、だいたい分あたり100回〜120回になりますよ。

って教えてもらいました。

おお!そうか!って納得して。実際心臓マッサージするときに、1分で何回とかっていう概念でリズムなんか測れないですからね。それを知ってから、わたしが実際心臓マッサージするときは「もしもし亀よ亀さんよ」を心の中で口ずさみながら心臓マッサージするようにしたら、結構速さのリズムが遅くならずに胸骨圧迫できるようになりましたね。リズムのイメージって大事だ。リズムが遅すぎても、速すぎても心臓から血液が十分に送れなくなるからね。

でも一回あせりすぎて、胸骨圧迫中にポロっと口から小声で「もっしもっしかめよ、かめさんよ〜。。♪」を歌ってしまったことがあって、そんときは緊迫した空気だから、ちょっと周りから「はぁ?」みたいな顔されましたね。

「もしもし亀よ」に合わせて心マするときは、声に出さないように気をつけてください。

胸骨圧迫についてはこの辺で。