シンママナースの マリアンナ です。
看護師の方には知っておいてほしい事実です。看護師が大幅に余る時代になる可能性がある。看護師が首になる時代がくる。これまで看護師が引く手あまたで高給取りだったのも、7:1看護体制が主流で病院経営のためには看護師の数が必要だったから。厚生労働省は急性期病院を削減すると公表しており、今後看護師の必要数が激減することが予測されています。つまり看護師の仕事が激減、「看護師が職場を選ぶ」時代から、「職場が看護師を選ぶ」時代になってくるといえます。今回は今後の看護師の需要と対策についてまとめています。
診療報酬改定の狙い ~急性期病院の削減から考えらえる問題~
7:1看護体制急性期病院の削減
以前より厚生労働省から「7:1急性期病院の削減」を目標としていることは、公表されていました。度重なる診療報酬改定、看護必要度の追加変更など、7:1急性期病院の評価は年々厳しくなっています。これはそもそも厚生労働省から7:1急性期病院を削減し、10:1看護体制を主流にするのが目的だといわれています。ちなみに具体的な数字としては、36万病床から27万病床、つまり9万病床を削減したいのだそうです。
それはなぜか。
7:1看護体制をとっている病院は、診療報酬が高くなるので、結果利益が大きくなります。利益を増やすために病院は看護師確保に精を出し、看護師争奪戦が行われてきました。しかし、実際は質の良い看護が提供されているわけではないのに、ただ看護師の数だけを確保して、利益を確保する、いわゆる「荒稼ぎ病院」が乱立したのです。
それらを取り締まるべく、厚生労働省は増えすぎた見せかけの急性期病院をつぶしにかかろう、となったわけです。
そのために新設されたのが「看護必要度」です。看護必要度の簡単な概要は以下の記事にまとめています。
看護必要度とは~概要まとめと定義 + 2016年の改定ポイントがわかる!~
基礎からわかる看護必要度のまとめです。
看護必要度を学び始めた初心者向けに、「看護必要度ってなに?」って視点からわかりやすく説明しています。
看護必要度の目的や意味、2 |
急性期病院としての基準を厳しく取り締まり、今まで7:1看護体制と認めていた病院を、次々を10:1に変えていこう、という目標があるんですね。
看護師雇用の変化
7:1看護体制から10:1看護体制になることにより、看護師一人当たり看護する患者数が増えるため、つまりは看護師の数が余ってきます。
その具体的な数字に関してはyuito33さんのブログ「次世代の看護へ! ” NEW NURSING ”」に記載されていました。
yuito33さんの計算では、7:1体制の病床が厚生労働省の目標である9万病床削減され、10:1が主流になることでおよそ2万人弱の看護師余剰が考えられると記載されています。(ブログ記事の正確な数字には17,486人と記載されてました)
同時に7:1看護病床が9万病床削減され、10:1看護体制が主流になることで、病院が約2億円/年間の利益減少になるとのこと。
看護師の雇用が少なくなるとともに、看護師の給与が減少することも考えられます。
今後、病院の利益が減り、看護師の需要が減る。
現在、看護師養成学校や大学が乱立しており、看護師自体の数が増加している状態ですので、
今後看護師の雇用情勢が厳しくなっていくことは、否めません。
看護師が引く手あまたの時代が終わる。「看護師が職場を選ぶ」から「職場が看護師を選ぶ」時代へ
かつて看護師は「引く手あまた」と言われ、どこへいっても仕事がある・重宝される資格として評価されていました。
しかしそれも今年度の診療報酬改定で大きく変わるかもしれません。
そもそも看護師養成専門学校、大学は近年増加する一方で、それに伴い、看護師の数も急増しました。
同時に看護師の数が病院利益を左右していた7:1看護体制の基準も厳しくなってきたわけです。
10:1看護体制を主流にしていくなかで、看護師が余剰するのは必然的な流れといえるでしょう。
他業種と違い、どこへいっても仕事があり、平均して高給で収入が安定していた看護師。
これまでは看護師が強気に職場を選ぶ立場にありましたが、これからは職場が看護師を選ぶ時代に突入していくのかもしれません。
今の収入や待遇を維持することは恐らく難しくなっていくでしょう。
看護師として収入を維持したかったり、雇用を安定させたかったりするなら、今後スキルアップが必然的になってくるでしょう。
看護師として生き残るためのスキルアップ一覧
看護師が余剰し、雇用状態が不安定になるであろう不安に対して、やはりスキルアップは必然的になると思います。
ではこれからどんな看護師に需要が出てくるのか。
何に着目してスキルアップしていけばいいのか。
それは、病院がほしいと思う看護師になることです。
つまり病院の利益になる看護師、「認定看護師・専門看護師」もしくは「特定看護師」です。
以下「認定看護師・専門看護師」について詳しく記載している記事です。
認定看護師・専門看護師になるには?ふたつの資格の違いと役割
最近取得者も増えてきた認定看護師・専門看護師。だいぶ定着してきましたね。
年をいけばいくほど学校へまた学びなおしたり、また教えてもらう立場になるのは大変だと思うので、マリアン |
病院が「認定看護師・専門看護師」もしくは「特定看護師」を欲しい理由は、
前途の資格を有する看護師を雇用していることで、診療報酬がつくからです。言い方を変えると「儲かる」からです。←やらしい言い方ですいません
保険点数上、「認定看護師・専門看護師」もしくは「特定看護師」がいることで、病院には点数が加算され、利益が増える仕組みになっています。
だから病院経営していく上で、看護師以上に、ワンランク上の「認定看護師・専門看護師」もしくは「特定看護師」が非常に重要なキーパーソンになってくるわけです。
病院にとって保険点数を稼いでくれる「認定看護師・専門看護師」が、重宝される時代になるでしょう。
つまり、普通の看護師と「認定看護師・専門看護師」の間に、待遇や給与の差がでることも十分考えられます。(これはまだ病院によってまちまちなところですけどね)
以下は「認定看護師・専門看護師」別の保険点数加算表です。
認定看護師・専門看護師による診療報酬の算定と配置要件
区分番号 | 診療報酬項目 | 点数 | 配置要件研修要件 | ●認定看護師 ○専門看護師 |
A 226-02 | 緩和ケア診療加算 | 400点(1日につき) ※特定地域 200点 | 専従の常勤看護師専従の緩和ケアチームの設置 | ● 緩和ケア ● がん性疼痛看護 ● がん化学療法看護 ● 乳がん看護 ● がん放射線療法看護 ○ がん看護 |
A 230-04 | 精神科リエゾンチーム加算 | 300点(週1回) | 専任の常勤看護師精神科リエゾンチームの設置 | ● 認知症看護 ○ 老人看護 ○ 精神看護 |
A 233-02 | 栄養サポートチーム加算 | 200点(週1回) ※特定地域 100点 | 専従または専任の看護師栄養管理に係るチームの設置 | ● 摂食・嚥下障害看護 |
A 234-02 | 感染防止対策加算1 | 400点(入院初日) | 専従または専任の看護師 | ● 感染管理 ○ 感染症看護 |
A 236-00 | 褥瘡ハイリスク患者ケア加算 | 500点(入院中1回) ※特定地域 250点 | 専従の看護師褥瘡管理者として配置 | ● 皮膚・排泄ケア |
B 001-23 | がん患者指導管理料1 | 500点(1回に限る) | 専任の看護師 | ● 緩和ケア ● がん性疼痛看護 ● がん化学療法看護 ● がん放射線療法看護 ● 乳がん看護 ● 摂食・嚥下障害看護 ● 皮膚・排泄ケア ○ がん看護 ○ 精神看護 |
B 001-23 | がん患者指導管理料2 | 200点(6回に限る) | 専任の看護師 | ● 緩和ケア ● がん性疼痛看護 ● がん化学療法看護 ● がん放射線療法看護 ● 乳がん看護 ○ がん看護 ○ 精神看護 |
B 001-24 | 外来緩和ケア管理料 | 300点(月1回) ※特定地域 150点 | 専従の看護師専従の緩和ケアチームが設置 | ● 緩和ケア ● がん性疼痛看護 ● がん化学療法看護 ● 乳がん看護 ● がん放射線療法看護 ○ がん看護 |
B 001-27 | 糖尿病透析予防指導管理料 | 350点(月1回) ※特定地域 175点 | 専任の看護師 | ● 糖尿病看護 ● 透析看護 ○ 慢性疾患看護 |
B 005-9 | 排尿自立指導料 | 200点(週1回) | 専任の常勤看護師 | ● 皮膚・排泄ケア ● 脳卒中リハビリテーション看護* |
C 005 | 在宅患者訪問看護・指導料3 | 1,285点(月1回)真皮を越える褥瘡の状態にある在宅療養中の患者であって通院が困難なものに対して、医療機関等の専門性の高い看護師と訪問看護ステーションの看護師が同一日に訪問した場合 | 褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師を訪問させて、他の保険医療機関の看護師等又は訪問看護ステーションの看護師等と同一日に看護又は療養上必要な指導を行う | ● 皮膚・排泄ケア |
C 005-1- 2 | 同一建物居住者訪問看護・指導料3 | 1,285 点(月1回)真皮を越える褥瘡の状態にある在宅療養中の患者であって通院が困難なものに対して、医療機関等の専門性の高い看護師と訪問看護ステーションの看護師が同一日に訪問した場合 | 褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師を訪問させて、他の保険医療機関の看護師等又は訪問看護ステーションの看護師等と同一日に看護又は療養上必要な指導を行う | ● 皮膚・排泄ケア |
C 013 | 在宅患者訪問褥瘡管理指導料 | 750点(6カ月以内2回)多職種から構成される褥瘡対策チームが、褥瘡ハイリスク患者(在宅での療養を行っているものに限る。)であって既に真皮まで(DESIGN分類d2以上)の褥瘡がある患者に対し、カンファレンスと定期的なケア等を実施した場合 | 在宅褥瘡対策チームの設置保険医、管理栄養士、看護師又は連携する他の保健医療機関等の看護師が共同して、褥瘡管理に関する計画的な指導管理を行う | ● 皮膚・排泄ケア |
C 005 | 在宅患者訪問看護・指導料3 | 1,285点(月1回)在宅療養中の悪性腫瘍の鎮痛療法もしくは化学療法を行っている患者であって通院が困難なものに対して、医療機関等の専門性の高い看護師と訪問看護ステーションの看護師が同一日に訪問した場合 | 緩和ケアに係る専門の研修を受けた看護師を訪問させて、他の保険医療機関の看護師等又は訪問看護ステーションの看護師等と同一日に看護又は療養上必要な指導を行う | ● 緩和ケア ● がん性疼痛看護 ● がん化学療法看護 ● 乳がん看護 |
C 005-1- 2 | 同一建物居住者訪問看護・指導料3 | 1,285点(月1回)在宅療養中の悪性腫瘍の鎮痛療法もしくは化学療法を行っている患者であって通院が困難なものに対して、医療機関等の専門性の高い看護師と訪問看護ステーションの看護師が同一日に訪問した場合 | 緩和ケアに係る専門の研修を受けた看護師を訪問させて、他の保険医療機関の看護師等又は訪問看護ステーションの看護師等と同一日に看護又は療養上必要な指導を行う | ● がん放射線療法看護 ○ がん看護 |
J 022-5 | 持続的難治性下痢便ドレナージ | 50点(開始日) | 急性期患者の皮膚・排泄ケアを実施するための適切な知識・技術を有する医師又は看護師が便の回収を持続的かつ閉鎖的に行う危機を用いて行った場合に算定する | ● 皮膚・排泄ケア ● 救急看護 ● 集中ケア |
K 939-3 | 人工肛門・人工膀胱造設術前処置加算 | 450点 | 術前の画像診断や触診等により、腹直筋の位置を確認した上で、適切な造設部位に術前に印をつけるなどの処置を人工肛門のケアに従事した経験を5年以上有する看護師等であって、人工肛門のケアにかかる適切な研修を修了したものが、手術を実施する医師とともに術前に実施した場合に算定する | ● 皮膚・排泄ケア |
※特定地域医療提供体制の確保の状況に鑑み別に厚生労働大臣が定める地域に所在する保険医療機関であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出たものについては、規定する届出の有無にかかわらず、算定できる。
*脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の算定要件について・H28年度以降の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程修了者は算定可能。・平成21年度~27年度の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程修了者は「脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程 排尿自立支援に関するフォローアップ研修」の修了証と併せて算定可能。
「特定看護師」は需要未知数、だけど需要増加が見込まれるのは確実
特定看護師は厳密にいうと資格ではありませんが、厚生労働省が指定した、本来看護師では行えない特定の行為を行うことができる、特別な看護師のことをさします。
特定看護師の詳細は以下の記事に記載しています。
特定看護師って何?資格・制度・給料・大学院・今後の需要について調べてみた
認定看護師や専門看護師等、専門分野での上級看護師の需要が高まる中、
平成27年、新たな特定看護師制度が発足されました。
40年ほど前からアメリカでは特定看護師は普及しており、
日本に |
現在特定看護師に関連した診療報酬条件はありませんが、特定看護師は保助看法の法律にも追記された特定の看護師であり、現に厚生労働省は特定看護師を10年間で10万人以上生み出すことを目標としているので、今後需要増加することは確実といえるでしょう。
ただ、制度が始まったばかりで今後資格化されるのか、特定看護師の需要や待遇はどうなっていくのかなど、詳細な詰めどころは今後の議論で展開されていくことになると思います。
特定看護師についてよくある質問は、日本看護協会が以下のページで解答しています。
日本看護協会「特定行為に係る看護師の研修制度」よくあるご質問」
まとめ
・診療報酬改定を皮切りに、急性期病院が激減していきます。
・看護師の需要と供給のバランスに変化が訪れ、雇用情勢も今までと大きく変わります。
・専門分野の知識を有する看護師の需要が増加します。
・雇用情勢を安定させたいなら、専門看護師や認定看護師、特定看護師等のスキルアップする方法があります。
以上、いかがでしたでしょうか。
わたしも肝に銘じて、スキルアップを頑張りたいと思います。