身体拘束77日間は不当=損害賠償を求める裁判。患者にもモラルの普及が必要じゃないですか



シンママナースの マリアンナ です。

 

びっくりしたニュース。

入院の女性が病院提訴 「77日間身体拘束」で

 

引用

14歳の時に摂食障害のために入院した病院で77日間にわたって不当に身体拘束され、精神的な苦痛を受けたとして、東京都の女性(24)が17日、病院の運営母体に約1100万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。女性側は「自由を奪われ、屈辱的、非人道的な処置を受けた」と訴えている。

訴状などによると、女性は2008年5月19日、摂食障害の治療のため、総合病院の精神科に入院した。ベッドから起き上がることや足を下ろすことが認められず、音楽すら聴けないなどの行動制限に納得できなくなり、5日後に自分で点滴を抜いた。病院側は治療を拒絶したなどの理由で、本人の同意がなくても保護者の同意があれば入院させられる「医療保護入院」に切り替え、女性の両手両足と肩を帯状の布でベッドに縛り付けたという。栄養は鼻に通したチューブから取らされ、トイレに行くことも認められなかった。全ての拘束が解かれたのは8月8日だった。

女性は同年11月に退院したが、拘束されて手足が動かなくなる夢を見るフラッシュバックなどに悩まされ、うつ病と診断された。

精神保健福祉法にもとづく基準では、生命に危険が及ぶ恐れがある場合などに限定的に身体拘束が認められているが、女性側は「拘束が認められるまでの危険はなく、代替方法も十分にあった」と指摘する。

病院は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。【成田有佳】

「毎日涙止まらなかった」
「ベッドに両手両足をひもで縛られ、手首を少し動かせるだけ。毎日涙が止まらなかった」。記者会見した原告女性(24)は病院で拘束された当時をこう振り返った。「訴える力のない子どもに対する身体拘束は許せない。同じような非人道的行為を一件でも減らしたい」と怒りを表した。

女性とともに会見した杏林大学の長谷川利夫教授(精神医療)が2015年に11の精神科病院を対象に行った調査によると、身体拘束の平均日数は96日で、欧米諸国の数時間や数十時間と比べて長かったという。長谷川教授は「精神科の病院で拘束を受けている患者は約1万人おり、10年間で倍増した。不当な形で拘束された人もいると推察される。治療の名を借りた暴力はあってはならない」と強調した。【山田麻未】

 



いや、じゃあ入院をやめなよって話で

この記事を読んでいる限り、患者が命の危険にさらされる行動をとったことに対し、致し方なく家族の同意のもと安全帯を使用した背景がみえます。特に、看護師や医師の意図的な暴力や暴言が訴訟のテーマでなく、訴訟の主軸は「身体拘束された苦痛」に対してみたいですね。

 

もし看護師や医師が、危険行動を把握したうえで、それ以外に対策がなく、そのままでは命の危険にさらされる可能性があったなら、身体拘束は正しい判断だと思います。それに対して「辛かった」とか「怖かった」とかいう気持ちがあるのはわかるけど、それ以上に危険な行動をとっていたのは自分なわけで、医療側を訴訟するのは間違ってると思うんですね。その辛かった身体拘束をするもともとの原因はなんなんだ、って話で。身体拘束が苦痛で、非倫理的なことくらい、医療従事者だって理解しています。だからこそ慎重に、同意書までとったうえで施行します。基本身体拘束なんて最悪の手段のときしか使いません。

 

拒食症なのに、点滴を自己抜去したら、栄養補給する手段がなくなります。つまりそのままでは死を意味する。拒食症のひとは、安静を指示しないと、やせたいがために有酸素運動とかしてしまう。だから安静を強要したんではないでしょうか。点滴を自分で抜くほどだから、だいぶ治療を拒否的で、栄養状態も悪いとこまでいってたんでしょう。いつ心不全をおこしたり、ショックバイタルになるかわからない。やせ細っている栄養状態が悪いからだには、鎮静剤は危険で使えないんじゃないでしょうか。この状態での身体拘束は、当然の治療だと思います。

 

こういったケースの症例では、厳しくとも患者自身が、痛い事、苦しいことを乗り越えないと治療はできません。もし治療がすすまなければ、摂食障害は悪化し、最悪命を落としていた可能性もあるでしょう。一時的に精神疾患の急性期で身体拘束を使用したとしても、最終的に完治し社会復帰をとげているのなら、そのときの治療方法は正しかったんだと思うんです。

 

yahooニュースで、興味深いコメントがありました。

自分が新卒看護師として就職した大学病院に高校の同級生が精神科病棟に摂食障害で入院していました。ダイエットが引き金の発症でした。客観的にはかなりの痩せでガリガリに見えますが、本人には鏡に映る自分が太って醜く見えるのでもっと痩せなくてはと食事を拒否するようになり、腕の血管にする点滴は自己抜去する、足りないカロリーや栄養を補給するために鎖骨下静脈に入れた点滴も自己抜去し、血まみれになりを何回も何回も危険な行動を繰り返していました。このときの彼女の精神状態は普通ではありません。どうにかして栄養を点滴からでも補給しなくてはいけない状態でしたが、上記の行動を繰り返し、残念ですが彼女は亡くなってしまいました。拘束されていたのはそれなりの理由があっての事だったと思います。医療サイドとしては助けたかったのだったと思います。

引用:14歳の身体拘束77日間 「殺された方がましだった」

 

摂食障害になりそうな女性って、結構世間には多いです。摂食障害予備軍みたいな女性結構いますからね。でも、どれだけ怖い病気なのかをもうちょっと理解してほしいです。治療を抵抗するなら、身体拘束も必要な病気なんですよ。このコメント、本当にそれを物語ってくれてます。

 

もし身体拘束が必要なくらいの疾患になっていても、それが受け入れられないなら、入院しないで、って思います。それか家族が24時間見守るか、です。看護師は1人あたり数人~数十人の患者をみているわけだから、いくら危険な状態にあっても、一人だけにつきっきりで看護するわけにはいかないですから。

 



こういうニュースがあるから、看護師や医者のなり手がいなくなるんじゃないの

こういった事例で、病院側が損害賠償を払わなくなったら、看護師や医師のなり手はどんどん減ると思う。治療してくださいってきて、治療を受け入れてくれなくて、命が危ないから致し方なく身体拘束したら訴えられるって、だれがそんな職種つきたいと思いますか?ってなるじゃないですか。この訴訟、病院側が不利な状態にならないようになってほしいし、訴訟にかかわる看護師、医師たちの、今後のモチベーションに影響しないことを願います。

本当に自傷他害の恐れがあった患者にしゃーなし身体拘束をしたのに、訴えられて損害賠償まで出たら、二度とこの仕事したくないって思うからね。

 

これで損害賠償が発生したら、社会的な影響はとても大きいと思います。病院は身体拘束が必要な患者をとらなくなると思いますよ。

 

 



治療の名を借りた暴力はあってはならない。とか失礼極まりないわ、な話です。

長谷川教授は「精神科の病院で拘束を受けている患者は約1万人おり、10年間で倍増した。不当な形で拘束された人もいると推察される。治療の名を借りた暴力はあってはならない」と強調した。

なんか聞き捨てならなくて。

なんかこの症例、看護師と医者が悪いみたいじゃん。

 

確かに看護師側から患者に対する暴力、過剰な身体拘束がゼロとは言い切れないかもしれない。でも実際の件数を数字にしてみたら、患者に暴力暴言をふるわれる医師・看護師のほうがよっぽど多いと思いますよ。それを数字にだしてから言いなさいよ、って思います。働いてる側は殴られてもそうそう訴訟なんてできないししないから。精神疾患や認知症、せん妄やアルコール中毒など、感極まって暴力をふるうことがよくあります。そこそこの経験年数がある医療従事者は、たいてい患者に殴られた経験は一度や二度じゃないはず。ケガすることも結構あります。だからって、訴訟したりしないけど。

 

いつも患者側が殴られたとか、ひどいことされたとか、医療従事者が加害者である報道ばかりが出てますよね。でもその背景に、常日頃患者さんからの暴力や暴言に忍耐している医師・看護師の努力がたくさんあることを忘れないでほしいです。

 

深刻な人手不足の医療業界。社会問題でもあります。なぜ離職率は下がらず、潜在看護師が何百万といるのか。

入院しに来ている以上、医師・看護師には真摯に患者の治療に向き合う必要があります。同時に、患者自身も治療を受け入れる意識も大切じゃないでしょうか。苦痛が伴うにしても、それはその患者の将来のためですから。治療する側のモラルばかりが取り上げられてますけど、治療を受ける側のモラルも、もっと普及していくべきじゃないかと思うこのごろです。