ドレナージとは:ドレナージの概要・目的・適応・注意点がわかる



シンママナースの マリアンナ です。

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ドレナージとは、

手術や打撲など様々な理由で体内に溜まる体液や血液、膿などを体外へ排出するために、からだにチューブを挿入して排液すること

です。

 

 

この記事は、ドレナージがまったくわからないって人向けに、以下の目次項目に絞ってまとめています。

 

 

 

 



ドレナージとは「何か」がわかる

 

 

ドレナージって何ですか?

 

 

ドレナージとは、

手術や打撲、褥瘡などの理由で、

体内に溜まる進出液、血液、膿などの体液を

体外へ排出する処置

のこと。

 

 

排液するために、からだのドレーンチューブというチューブを挿入します。

 

 

 

 



ドレナージの「目的」がわかる

 

 

ドレナージの目的って?

 

 

では、ドレナージは何のために行うのか。その目的を理解していきましょう。

 

 

ドレナージを行う目的は、大きく分けて3種類。

  • 予防的ドレナージ
  • 情報的ドレナージ
  • 治療的ドレナージ

です。

 

 

 

「ドレーン」のすべてが初心者でもわかりやすくイラスト中心に解説されたテキスト。症例別解説もあり。

 

 

 

予防的ドレナージ

 

 

予防的ドレナージとは、

体内に浸出液が貯留することで、それが感染源になり、感染症を起こすリスクがあるときに行われる予防的処置

のこと。

 

 

本来、血液、浸出液、膿等が溜まるはずのないところに溜まっていくと、その部分は感染源となり、感染を起こします。

手術後や褥瘡などにおいては、感染は治癒の遅れの原因にもなる。そうなる前にドレナージを行って排液をし、予防的に感染源を取り除いておこう。というわけです。

それが、予防的ドレナージ

 

 

 

情報的ドレナージ

 

 

情報的ドレナージとは、

OP後の創部等をドレナージすることで、創部出血、縫合不全に伴う浸出液や消化液の漏れなど早期発見するために行う処置

のこと。

 

 

縫合部、吻合部、切離部や皮下に対するドレナージに行われることがあります。

 

 

OPなどで創部を縫合してしまうと、縫合した脂肪の下の部分でどれくらい排液しているのか、膿はでているのか、出血しているのか、など目視で確認することができなくなりますよね。

OP後に創部にドレーンチューブを入れて、ドレナージしておけば、体内の浸出液や出血具合が目で確認することができ、治癒の進行具合を正確に把握することができます。

目には見えない体内の排液状態を知りたい。

そういう意味と目的で、情報的ドレナージは行われます。

 

 

 

治療的ドレナージ

 

治療的ドレナージとは、

体液や血液の貯留が原因で、すでに感染や臓器不全を起こしている部位をドレナージ(排液)して、治療を行う処置

のこと。

 

感染源になっている体液を排出して、治療を行いたい場合に施行されます。

 

胆汁うっ滞による胆道ドレナージや、腸閉塞に対するイレウスチューブ等が代表的な例ですね。

 

 



ドレナージの「適応」がわかる

 

 

ドレナージってどういう時に挿入するの?

 

ドレナージを行う「適応条件」は、

体内に溜まった(もしくは溜まる可能性がある)体液・膿・血液等を排液する必要がある状態

であること。

 

OP後の創部や、体内に溜まった体液が原因で治療がうまく進まない時など、ドレナージを行う目的は違えど、

溜まるはずのない体液が体内のどこかに溜まっているとき、もしくは溜まることが予測されるときに、行われます。

 

 



ドレナージの「注意点」がわかる

 

ドレナージの注意点って?

 

ドレナージするときの注意点は、症例やドレナージする部位、目的によって個別性はありますが、共通する基礎的注意点(いわゆる観察項目)は以下のようなものがあげられます。

 

  • ドレナージの閉塞
  • 抜去やチューブ外れ
  • 排液の状態
  • 固定部分の皮膚トラブル
  • 感染兆候
  • 疼痛の有無と程度
  • 精神的苦痛

 

ドレナージの閉塞

 

ドレナージで起こるトラブルでよくあるのが、「ドレナージの閉塞」

チューブの屈曲・圧迫や、凝塊や組織片が詰まったりすることで、ドレナージが阻害され、正常に排液できていないことがあります。

ドレーンチューブの挿入部から、ドレーンバッグまでの経路が、正常に排液できる状態になっているか、定期的な観察が必要になります。

 

 

ドレーン閉塞予防の対策って?

 

 

ドレナージが閉塞しないようにするために、以下のような予防策があります。

 

  • ミルキング

ドレーンチューブを外側からもんだり、しごいたりして排液を促します。

 

  • 体位ドレナージ

体位変換をすることで、体液が動いてうっ滞せず、排液を促すことができます。

術後指示の体位などを守った上で、患者の状態に合わせて行う必要があるので、その点は注意が必要。

 

 

抜去やチューブ外れ

 

ドレーンチューブ挿入中に、ドレーンが抜けてしまうことがあります。

患者が自分で引っこ抜いてしまう「自己抜去」と、固定不足やその他原因で抜けてしまう「事故抜去」があります。

 

抜去予防にはどんな対策がある?

 

看護ケアとして、

 

  • チューブをテープで固定する際、オウム型で固定する
  • 引っ張られても十分な余裕があるチューブの長さを確保する
  • 患者が動きやすい生活環境を整える

 

などの対策があります。

 

参考リンク:ドレーンの自己抜去・自然抜去を防止するの看護のポイント

 

他にも、患者の認知レベルや年齢など個別性に応じて、他の対策を行うこともあります。

 

 

「ドレーン」のすべてが初心者でもわかりやすくイラスト中心に解説されたテキスト。症例別解説もあり。

 

排液の状態

 

ドレナージされた排液は、からだのなかで何が起こっているのか、予測する材料になります。

排液の量は、部位や術式によって違うため、「この手術と部位なら、これくらいが正常範囲の量だな」っていう正常範囲と異常範囲を把握しておくことがポイント。

 

排液の量が正常より「増えた」OR「減った」

 

  • 増えた場合

排液の量が急激に増えた場合、まず以下のような項目を情報収集して、患者の状態をアセスメントし、状況によっては医師への報告が必要です。

  • 体液や出血の漏れはないか
  • バイタルサインに急な変動はないか
  • 検査データに変化はないか
  • 排液の性状に変化はないか

 

  • 減った場合

排液の量が急激に減った場合、以下のような項目を観察してみます。

  • ドレーンチューブが抜けていないか
  • ドレーンチューブが閉塞していないか
  • ドレーンチューブが屈曲していないか
  • ドレーンチューブの接続が抜けていないか
  • 排液が詰まっていないか
  • 排液の性状が変化していないか
  • 三方活栓の向きは正しいか
  • ドレーン挿入部から排液漏れが起こっていないか
  • バイタルサインに変動はないか

 

排液の性状がおかしい?

 

排液の性状は、ドレーンが挿入されている部位や術式によって異なります。

排液の性状が急に変化した場合、からだのなかで何かが起こっているサインです。

 

急な変化を生じたときは、排液の色や性状から状態をアセスメントします。

 

排液の性状が急変したアセスメント症例

 

  • 排液が急に潜血様に変化した
  • 今まで漿液性だったのに、血性に変化した

 

・・・OP部位の出血、損傷の可能性がある

 

 

  • 膿、混濁や浮遊物が現れだした
・・・感染の可能性がある

 

 

  • 消化液や便汁様の液体が混ざっている
・・・縫合不全、消化管損傷などの可能性がある

 

排液の色の書き方

ドレナージされた排液は、その色によって呼び方があります。

 

    … 血性

    … 淡血性

    … 淡々血性

    … 漿液性

    … 淡黄色

    … 黄色

    … 乳び様

    … 濃黄色

    …赤ワイン色

    … 濃緑色

 

 

 

固定部分の皮膚トラブル

 

ドレナージのために一定期間チューブを固定することで、かぶれや炎症など皮膚トラブルを起こすことがあります。ドレーンチューブ固定による皮膚トラブルを予防するために、以下のようなケアを行うことがあります。

 

皮膚とドレーンの間に、ドレッシングフィルムやハイドロコロイド剤を貼付

 

ドレーンチューブによる圧迫や褥瘡を予防するために、ドレーンチューブの間にいわゆる「クッション」を貼付する方法。
★PIC

皮膚に直接ドレーンチューブが接触しないことで、圧迫による皮膚の血流障害や、褥瘡を予防するのに役立ちます。

 

固定による皮膚トラブルが起こりやすい場面は?

 

皮膚トラブルが起こりやすいのは、固定シールを「はがすとき」。

テープ交換等でテープをはがすときに、テープと一緒に皮膚もはがしてしまうなんてこともあります。

 

はがすときに起こる皮膚トラブルを予防するには、

  • 剥離剤を使ってはがす
  • 負担が少ない「はがし方」でテープをはがす

 

負担が少ないテープの「はがし方」って?

皮膚に負担が少なく、痛みを最小限にする「はがし方」は、テープをはがす皮膚を抑えながら、はがすテープの角度を極力180度近くにすること。

 

 

マルチポア™ スポーツ レギュラー伸縮固定テープ より引用

 

感染兆候

 

ドレナージ中は、体内と創部がつながっている以上、「感染のリスク」が伴います。

ドレナージ中の感染には、感染を予測させる「感染の兆候」があります。

 

 

感染の5徴候

感染が起こっている場合、以下のような症状がみられることがあります。

  • ドレーン挿入部周辺の 発赤
  • ドレーン挿入部周辺の 熱感
  • ドレーン挿入部周辺の 疼痛
  • ドレーン挿入部周辺の 腫脹
  • ドレーン挿入部からの 浸出液

 

 

疼痛の有無と程度

 

ドレーン挿入中は、ドレーンチューブ挿入に伴う「痛み」を伴うことがあります。

「痛み」は感染兆候のサインでもあり、ドレナージ管理のなかでも重要な情報のひとつ。

 

痛みの変化を把握できるよう、増減や変化は経時的に記録しましょう。

 

可能であれば、

痛みを評価するスケール(数字評価尺度・フェイススケール等)を用いれば、客観的に評価することができます。

 

精神的苦痛

 

ドレナージ中は体動制限や痛み等から、精神的な苦痛が伴うもの。

ただパスにのってケアをすればいいというものではなく、患者が今なにを辛いと思っているのか、患者の苦痛を引き出すことが出来れば、より個別性に合った、患者の求めるケアを提供することができます。

 

それに一番必要なことは、

患者と「話すこと」。

 

患者のADL、性格、状態によって、今その患者がなににニーズを感じているのかを知る一番の方法は、本人に「聞く」ことです。

別に根ほり葉ほり聞かなくたって、ラウンドの最後に「何か困っていることはないですか?」って聞くだけで、患者にとって言いにくい「お願い」が、言いやすい関わりに変わります。だから、看護師から、患者のニーズを聞きだす関わり方がすごく大事です。

 

一日の関わりの中で、できるだけ患者さんの「困っていること」を聞き出してあげてください。

その患者さんの本当のニーズが明確になるからです。

 

 



ドレナージとは何か、のまとめ

 

この記事で紹介したドレナージについて、カンタンにまとめると以下のようになります。

 

ドレナージとは

ドレナージとは、体内の不要な浸出液や血液、消化液などの体液を、チューブを使って体外へ排出させること。

 

目的

ドレナージの主な目的は3つ。

  • 予防的ドレナージ

感染などを起こさないために予防的にドレナージすること。

  • 情報的ドレナージ

体内の状態を予測するために、排液させるドレナージのこと。

  • 治療的ドレナージ

すでに感染などが起こっている部位に対して、排液を促し治療をすること。

 

 

ドレナージとはなにか、解説についてはここまでです。

ドレナージ管理については以下の記事を参照にしてください。

ドレーン管理の看護~基礎知識と看護のポイント~ ドレナージとは、治療や予防のために貯留する体液を排出することです。この記事では外科手術に共通しているドレーン管理のポイントについて紹介しています。 ドレーン管理とは 浸出液や膿瘍等浸出液が貯留した

 

参考文献はこちら。