下部消化管内視鏡検査「CF」の看護と観察項目



シンママナースの マリアンナ です。

 

食生活の欧米化とともに大腸腫瘍性疾患が増加し、下部消化管内視鏡検査の需要が増えています。

この記事では下部消化管内視鏡検査、いわゆるCFの看護と観察項目について解説しています。

 



下部消化管内視鏡検査(CF)とは

 

概要

肛門から直腸、結腸にスコープを挿入し、病変部の観察と撮影を行う検査です。

 

目的

  • 直腸と結腸、一部小腸の観察と撮影を行い、病理病変部組織を採取します。
  • 消化器疾患および他疾患の大腸に及ぼす影響を精査し、確定診断を行います。

 

適応

  • 腹痛、便秘、下痢、血便などから大腸疾患を疑い精査が必要なひと。
  • 治療効果の評価・経過観察や術前精査。
  • その他理由により内視鏡治療が必要と考えられる場合。

 

禁忌

  • 腹膜刺激症状がある患者。
  • 消化管穿孔の疑いのある患者。
  • 腸閉塞の疑いがある患者。
  • 中毒性巨大結腸症患者。
  • 腹部大動脈瘤症例、妊娠中、あるいは重篤な炎症性腸疾患、腹部手術後の癒着既往症例などは相対的禁忌になることがある。

 

大腸の構造

大腸は、全長約1.5~2mの長さで、間膜ひも、大網ひも、自由ひもの3列の結腸ひもを有しているのが特徴です。

大腸は、盲腸、結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸の3つに分けられます。

 

 

 



CF検査の流れ

検査後の看護を実践するために、ここで簡単に検査がどういうものか理解しましょう。

 

下部消化管内視鏡検査の前処置

前処置が不十分だと観察に支障をきたし、病変を見落とす可能性があります。検査を行うには、腸管内の便をすべて排出させる必要があります。

 

出血やイレウスなど、出血部位の確認が急がれる場合や、前処置をすることで症状が悪化する可能性がある場合(腸管閉塞、腸管穿孔、中毒性巨大結腸症は前処置禁忌)などを除いて、前処置は確実に行います。

異常がある場合は、前処置をはぶいたり、浣腸のみで検査を行うこともあります。

 

CFの前処置とは?

前処置は、検査当日に1,000~2,000mlの腸管洗浄液を飲む方法が一般的。この洗浄液で大腸の便を出し切ってしまいます。

各施設で検査当日に下剤の服用や食事制限を行うなど、当日の飲用量を少なくする工夫を行っています。

腸管洗浄液にはニフレック、モビプレップ、マグコロール、ビジクリア配合錠などいろいろ種類があります。

飲用量は便秘や器質的疾患など、患者の背景によって異なりますが、排液(便)が透明に近くなれば飲用を中止することもあります。

 

 

下部消化管内視鏡検査の実施

 

  1. 患者は左側臥位になる。上半身は検査着・下半身はディスポーザブルのパンツ(お尻側に穴が開いています)を着ていただきます。
  2. 鎮静剤(各施設によって使用している薬剤は異なりますが、一般的にドルミカム、プロポフォールなど)や鎮痙剤(ブスコパンまたはグルカゴン)を投与する。
  3. 内視鏡挿入前に潤滑剤を肛門に塗布し、直腸診を行う。
  4. 観察部位により左側臥位や仰臥位など体位変換を行うため、患者に声がけしたり、鎮静剤使用の患者は看護師再度で体位変換を行う。(S状結腸の通過終了までは疼痛を伴うことがあります。)
  5. 空気をたくさん注入しながら挿入・観察するため、腹部膨満感・腹痛が生じやすくなります。回盲部まで到着したら、大腸内を観察しながらゆっくり抜いてきます。
  6. 観察中に病変や出血源があれば、色素液の投与(インジコカルミンなど)、生検、ポリープの除去(EMR)、止血処置を行います。(肛門内反転時には、違和感を感じることがあります。)
  7. 検査が終了したことを患者に伝え、衣類を整えます。

 

検査前・中のリスク

 

  • 前処置に伴う腸閉塞や腸管穿孔
  • 出血

 

腫瘍病変の生検やポリープ切除に伴い出血することがあります。問診時には、抗凝固剤の内服の有無や検査のために内服中止しているかの確認が必要となります。

穿孔とは腸に穴があくことです。特に腸がもろい高齢者に起こりやすい合併症です。

検査前、検査中はバイタルサインや主訴等から、合併症のサインがないか観察が必要です。

 

  • 使用する薬剤(鎮静剤、鎮痙剤)によるショックなど

薬剤の使用により、一時的に低血圧、不整脈、徐脈となることがあります。

 



検査前に必要な情報(問診内容)

  • 下部消化管内視鏡検査の経験、経験時の苦痛の程度
  • ブスコパン使用に際しての問診
    • 心疾患の有無
    • 糖尿病の有無
    • 緑内障の有無
    • 前立腺肥大の有無
  • 薬剤アレルギーの有無
  • 抗凝固剤内服の有無、休薬の有無

 

マリアンナ
ポリープ切除や生検が予定されている検査時には、抗凝固剤を検査3日~1週間前から休薬する必要があります。

 

  • 睡眠薬・安定剤・てんかんの薬の内服の有無と薬剤名

鎮静剤の拮抗薬(フルマゼニル)をベンゾジアジピン系の薬剤を内服している患者に使用した場合に副作用が生じることがあります。

 

  • 検査時にポリープや病変組織があった際には、医師の判断で検査中に切除してよいか

事前に確認しておかずに検査中に切除をして、検査後にトラブルになるケースもあるため。

 

  • 鎮静剤使用の有無

鎮静剤を使用する場合には、検査当日は車の運転ができないため、公共交通を利用していただくかご家族に送迎していただくよう説明します。

また、検査・鎮静剤使用後に仕事に行かれる場合には、重大な決断をする業務を避けていただくよう説明します。

万が一、検査当日に車で来院された場合には、代行を利用して帰宅していただく、車を置いて帰宅していただき後日車を取りに来ていただく、ご家族に来院していただきご家族に車を運転していただくことを了承得て、鎮静剤を使用します。

 

ブスコパン注20mg(イーファーマ)の添付文書には以下の注意事項が明記されています。

 

【慎重投与】

1.前立腺肥大のある患者[尿を出にくくすることがある]。

2.うっ血性心不全のある患者[心拍数を増加させ、症状を悪化させる恐れがある]。

3.不整脈のある患者[心拍数を増加させ、症状を悪化させる恐れがある]。

4.潰瘍性大腸炎の患者[中毒性巨大結腸を起こす恐れがある]。

5.甲状腺機能亢進症の患者[心拍数を増加させ、症状を悪化させる恐れがある]。

6.高温環境にある患者[汗腺分泌を抑制し、体温調節を障害する恐れがある]。

 

 

 



下部消化管内視鏡検査(CF)後のリスクと注意点

 

 下部消化管内視鏡検査は、上部消化管内視鏡検査に比べて、偶発症の発生頻度、死亡頻度ともに高率です。

偶発症の内容としては穿孔が最も多く、穿孔部位はS状結腸が半数以上を占めています。

その他の偶発症として心筋梗塞脳梗塞などの例も報告されており、検査に関連した脱水が原因となる可能性も考えられます。

特に高齢者は脱水傾向に陥りやすい。十分な全身状態の観察のもとに前処置から検査・治療、さらには検査後の生活とフォローしていく必要があります。

 

出血

ポリープや生検で太い血管が存在した場合や、高周波装置による凝固が不十分で切開した場合にみられます。

また、抗凝固剤・抗血栓薬の服用歴(休薬していても)、出血傾向がある場合でもみられます。

 

穿孔

高周波装置の過度な通電により凝固が作用しすぎた場合や、筋層以下の深い組織をスネアで絞扼する際に巻き込んで切除した場合にも生じます。

内視鏡経験の浅い医師が、内視鏡操作時、無理に内視鏡をすすめることでも穿孔することがあります。

 

使用する薬剤(鎮静剤、鎮痙剤)によるショック

薬剤の使用により、一時的に低血圧、不整脈、徐脈となることがあります。

 



下部消化管内視鏡検査(CF)後の観察項目の根拠

 

偶発症 観察項目 根拠
ガスによる

腹部症状

腹部膨満感、腹痛、嘔気、嘔吐、排ガスの有無、ゲップの有無 内視鏡挿入時にたくさんの空気を注入しながら検査を行うため、検査後は腹部症状が出現する確率が高いです。腹部症状の観察が必要になります。
出血 下血の有無、血圧低下、頻脈、動悸、めまい 生検やポリープ切除によって止血が不十分であったり、クリップがはずれてしまい、出血する可能性があります。出血があると、ショック状態となるため、ショックの観察が必要となります。
穿孔 腹痛、発熱、血圧低下、意識レベル、腹膜刺激症状(反跳痛、痛みが限局しているか)、レントゲン画像

 

 

高周波装置の過度な通電に

より凝固が作用しすぎた場

合や、筋層以下の深い組織

をスネアで絞扼する際に巻

き込んで切除した場合に、

穿孔する可能性がありま

す。大腸穿孔は、上部消化

管より細菌が多く、早くショックになりやすくなり

ます。穿孔の際には、腹膜

刺激症状が起こります。腹

膜刺激があれば腹膜炎を起

こしているので、かなり緊

急性が高いです。

脳梗塞 頭痛、視覚障害、嘔気・嘔吐、意識障害の有無、失語・失認、しびれ・感覚障害・麻痺、構音障害、バイタルサイン(特に血圧) 検査のために絶食・水分制限に関連した脱水が原因となり、脳梗塞・心筋梗塞を起こす可能性があります。

検査のために抗凝固剤を休薬している患者は、検査後の内服再開日を確実に伝えるようにしましょう。

心筋梗塞 胸痛、嘔気・嘔吐、呼吸困難、ショック症状(顔面蒼白、チアノーゼ、冷汗、脈拍微弱、徐脈、不整脈、尿量減少、血圧低下)、発熱、心雑音
使用する薬剤による影響

および

ショック

低血圧、不整脈、徐脈、呼吸困難、めまい、ふらつき、頭痛、手のしびれ、一過性の記憶障害、眠気 検査当日は、絶食や検査への緊張などもあり、普段薬剤へのアレルギーがなくても検査中に使用した薬剤の影響を受けることがあります。

 



下部消化管内視鏡検査(CF)後の看護のポイント

観察のポイントとして

  • 検査後の安静が保たれているか(リスク予防)
  • 腹部膨満感や腹痛などの異常がないか(リスク徴候)
  • 検査後の生活の注意点について説明されているか(リスク指導)

の3つになります。

 

薬剤・大腸内のエアに関する注意

 

鎮痙剤

まれに、目がチカチカする、のどが渇く、動悸がする、尿が出にくいなどの症状が出ることがありますが、しばらくするとよくなります。目の症状が続いている間は車の運転は控えてください。

 

鎮静剤

眠気が続いたり、判断力が低下することがあります。検査当日は車の運転や大事な仕事はしないでください。

 

拮抗薬(フルマゼニル)

鎮静剤を投与した場合は、一般に検査終了後にフルマゼニルを静注し、鎮静の解除をはかります。ただし、鎮静薬の中には消失半減期がフルマゼニルの半減期(約50分)より長いものがあり、患者が帰宅してから鎮静薬の作用が再出現する可能性があるので注意が必要です。その旨を患者に説明し、具合が悪くなったら連絡するようにしてもらいます。そのため、フルマゼニルを使用せず、検査後は十分に休んでもらって回復を待つ場合もあります。

 

大腸内のエア

検査中に空気を入れました。おなかの張りや軽い痛みを感じることがありますが、時間と共に治ります。ゲップやおならをすることでも解消します。

 

色素観察を行った場合

青い色素を使っているので、便や尿に色がつくことがありますが心配いりません。

 

生検を行った場合

出血を予防するため、検査当日は、アルコールや刺激のあるもの、油分の多いものは避けて消化の良いものにする必要があります。また、入浴はシャワー程度にし、運動も控える必要があります。

 

検査のために中止していた内服がある場合

中止している抗凝固剤の内服開始日を伝えます。

 

ポリペクトミーを行った場合

・切除した翌日までは自宅で静養していただく必要があります。

・翌日から、日常の家事や仕事は行って大丈夫です。1週間は、重いものを持ったりする仕事は腹部に力が入るので避ける必要があります。

・どのような運動も少なからず腹圧がかかります。1週間はゴルフや水泳、ジョギングなどといった運動は行わないようにしていただく必要があります。

・1週間以内の海外出張(長時間の飛行機)や旅行などの遠出も避けていただくか、医師に確認して頂く必要があります。

・1週間は消化の良いものを食べていただき、辛い物や刺激物は避ける必要があります。

・アルコールは血行がよくなるため、傷からの出血の原因になります。切除後1週間ほどは飲酒しないでいただく必要があります。

・2日間はシャワー程度で済ませてもらいます。湯船につかると血行がよくなり、出血を促すことになります。

・検査終了後しばらくは、排便時の出血や便が黒かったりしますが、だんだんと出血の量が増えたりしなければ心配はいりません。

・抗凝固剤を服用されている方は、内服開始日を伝える必要があります。

 

水分・食事

・検査後は脱水状態になっています。いつもより多めに水分をとっていただく必要があります。

・消化のよいものから少しずつとり、具合が悪くならないことを確認しながらゆっくりと食べていただく必要があります。

 



参考・引用文献

 

  • 学研:「はじめてでもやさしい内視鏡看護」 椿 昌裕監修 2014年初版
  • ナツメ社:「ナースのためのやさしくわかる内視鏡検査・治療・ケア」 工藤進英監修 2013年初版