CO2ナルコーシスがわかる!わかりやすい図解で解説。原因、症状等



シンママナースの マリアンナ です。

CO2ナルコーシスってわかりにくい!

CO2ナルコーシスがどうしても理解できない!

この記事では、

CO2ナルコーシスがどうしても理解できない!

という方のために、わかりやすい図解でCO2ナルコーシスを解説しています。



co2ナルコーシスって何?

CO2ナルコーシスとは、以下の3つの条件を満たした状態の症候群のこと。

  1. 重症呼吸性アシドーシス
  2. 意識障害
  3. 自発呼吸の減弱
CO2ナルコーシスの3つのポイント

観察点としては、

  • 自発呼吸が弱まっている
  • 意識レベルが低下している
  • 検査結果上、呼吸性アシドーシスが認められる

の3つがそろっている状態だと、

このひとはCO2ナルコーシスだ!

ってなるわけです。

 

ナルコーシス(Narcosis)とは、直訳すると昏睡状態。CO2ナルコーシスとはCO2による昏睡という意味です。

CO2ナルコーシスの判断材料となる「重症呼吸性アシドーシス」って何?

呼吸性アシドーシスとは、呼吸機能が低下してPhが酸性に傾いた状態のこと。

呼吸性アシドーシスの場合、血ガスで以下のような検査結果になります。

呼吸性アシドーシスの血ガス結果

呼吸性アシドーシスは、

Phが下がって、PaCo2が上がる

特徴があります。

 

Co2が吐き出せないからCo2が溜まる

酸であるCo2が貯まるから、血液が酸性になってPhが下がる

という機序ですね。

Ph(血中の酸塩基平行:正常値は7.35~7.45)

↓低下

Phは下がります。

PaCo2(動脈血二酸化炭素分圧。動脈血中の二酸化炭素の圧力のこと:正常値は35~45Torr)

↑上昇

Co2は溜まっています。

 

重症呼吸性アシドーシスの症状ってどんなの?

重症呼吸性アシドーシスには、特徴的な症状があります。

意識障害自発呼吸の減弱です。

 

Co2ナルコーシスの条件「重症呼吸性アシドーシス・意識障害・自発呼吸の減弱」のうち、

意識障害自発呼吸の減弱は、呼吸性アシドーシスが進行することで起こる症状なんです。

その原理は以下の通り。

 

「意識障害」が起こる理由

呼吸機能が低下することで二酸化炭素分圧が上昇。

二酸化炭素が血中に溜まった状態になる。

二酸化炭素の中枢神経抑制作用により意識障害が起こる。

「自発呼吸の減弱」が起こる理由

高炭酸ガス血症によって呼吸中枢が抑制されることで起こる。

※高炭酸ガス血症・・・二酸化炭素が吐き出せず、動脈血中の二酸化酸素濃度が著しく上昇した状態のこと

 



co2ナルコーシスはなぜ起こるのか「病態と原因」のメカニズム

co2ナルコーシスが起こるのはどうして?

そもそも論で、なぜCO2ナルコーシスが起こるのかをみていきましょう!

co2ナルコーシスが起こる病態ってなに?

CO2ナルコーシスに陥る多くの原因として、COPD(肺気腫)があげられます。

COPDといえば、肺が硬くなって息を吐きだせない閉塞性換気障害の代表。

息が吐きだせず、慢性的に二酸化炭素が体に溜まっている状態です。

「COPD患者に高濃度酸素を投与してはいけない」のはなぜ?

COPD患者の投与酸素量をむやみに上げるのは危険です。

呼吸抑制がかかり、呼吸停止してしまうこともあるからです。

 

COPDは肺が硬いので、慢性的に息を上手に吐き出せていません。

慢性的に二酸化炭素が貯まっている状態なので、COPD患者のからだは二酸化炭素が貯まった状態に適応します。

呼吸刺激は血中の「二酸化炭素の量」で促される

本来呼吸中枢は、二酸化炭素分圧(PaCO2)によりコントロールされています。

血中に二酸化炭素が貯まると、呼吸中枢がそれを察知して「やばい!呼吸しなきゃ!」と呼吸を促します。

健常者は二酸化炭素が貯まると呼吸が促されるメカニズムが備わっています。

COPD患者のように慢性的に高いCO2分圧状態が続くと、呼吸中枢がそれに慣れてしまう。

呼吸コントロールをCO2分圧ではなく酸素分圧(PaO2)に応じて行うようになります。

慢性的に二酸化炭素が多いCOPD患者の呼吸刺激は「低酸素状態」であること

慢性的に二酸化炭素分圧(PaCO2)が貯まっているCOPD患者は、二酸化炭素分圧(PaCO2)が多い状態が当たり前になっているので、呼吸中枢が二酸化炭素分圧(PaCO2)で刺激されません。

唯一、COPD患者が呼吸を自発的に行う刺激になっているのは、低酸素状態であることです。

COPD患者は低酸素状態であるから、呼吸中枢が「やばい、酸素がない!呼吸しなきゃ!」と反応して、呼吸機能が保たれているわけです。(末梢化学受容器の低酸素換気刺激)

低酸素状態が呼吸運動をキープさせている図~COPDの呼吸中枢~

低酸素状態だからこそ、呼吸中枢が働くCOPD患者に酸素を多量投与すると・・

COPD患者にとって呼吸刺激になっている低酸素状態。

過剰に酸素を投与して低酸素状態を普通に戻してしまうと、呼吸中枢への刺激がなくなり呼吸抑制がかかります。

そうなると余計にまたCO2が貯まる。

呼吸中枢が「あ、酸素あるじゃん。呼吸しなくてもいいや♪」と判断してしまう。

そうなると肺胞低換気や呼吸性アシドーシスが悪化して、意識障害を起こす。

酸素投与で呼吸抑制

COPD患者に高濃度の酸素を投与すると、低酸素血症は改善するが、O2が充足したと認識した呼吸中枢は呼吸を弱めてしまう。このため換気機能が低下し、血液中の二酸化炭素濃度が著しく上昇するため、CO2ナルコーシスを引き起こす。

 

これがCOPD患者がCO2ナルコーシスを起こす原理です。

なので基本的には

COPD患者に、過剰な酸素投与や医師指示量以上の酸素投与は禁忌です。

高濃度酸素投与をされることでCO2ナルコーシスを発症するからです。

 

CO2ナルコーシスのその他の原因

慢性呼吸不全患者が気道感染を併発するケース、喘息発作や呼吸抑制作用のある薬剤を投与された場合(精神薬等)でも、CO2ナルコーシスが発症することがあります。

 



co2ナルコーシスの原因と症状がわかる関連図

わかりやすいようco2ナルコーシスが起こる原因と特異的症状を関連図にしてみました。不備があったらごめんなさい。

CO2ナルコーシス関連図

 



co2ナルコーシスの特異的症状

co2ナルコーシスを起こしている患者の特異的な症状と原理は以下の通りです。

発汗

co2ナルコーシスが起こると、不可逆的に二酸化炭素が貯まっていく。ホメオスタシスの原理で、PaCO2(血中二酸化炭素)が蓄積してきたら、末梢臓器へ酸素を供給しようと体が働くので、血管が一気に拡張する。皮膚血管拡張して皮膚からの放熱が盛んになり、同時に皮膚汗腺が活動して発汗が著明になる。

頭痛

発汗に記載した原理で、CO2ナルコーシスが原因で血管拡張をおこすことにより、頭蓋内圧亢進が起こり頭痛を生じる。

顔面紅潮

CO2ナルコーシスによる血管拡張で、皮膚が顔面紅潮がみられる。

振戦及び痙攣

急激にCO2が蓄積して高炭酸ガス血症が進行することによって、中枢神経が抑制されて、中枢神経障害が起きます。そのため、振戦や痙攣などが起こります。痙攣や振戦の種類は、企図振戦(意図振戦)、羽ばたき振戦など個人差があります。

傾眠・昏睡

急激にCO2が蓄積して高炭酸ガス血症が進行し中枢神経抑制作用が起きることで、意識障害がおきます。

自発呼吸の減弱

換気刺激になっている低酸素血症が、酸素投与などによって改善されることにより、呼吸中枢への換気刺激がなくなり呼吸抑制がかかります。

縮瞳(瞳孔のピンホール化)

呼吸抑制に伴い副交感神経優位になることで、瞳孔が縮瞳して1㎜以下になりピンホールになります。