【看護】寝たきり患者の観察項目~部屋持ちするなら知っておきたい患者の基本的な観察の知識~



シンママナースの マリアンナ です。

寝たきり患者における観察項目の共通点って知ってますか?どんな患者さんであっても、看護師が共通して見ないといけない観察項目ってあるんです。早く、的確に看護を提供するのは、観察項目の要点をいかにおさえるかが肝。先輩を見てるとわかると思いますが、ベテラン看護師は観察が早い。特に寝たきり患者の観察は、見落としてしまうとすごく状態が悪化することがあるので、ポイントをおさえることが大事です。部屋持ち看護師になったら、ぜひ知っておいてほしい寝たきり患者の観察項目を紹介しています。

 



寝たきり患者の観察力は超重要。ひとつの見落としが時に命とりに

まだ新人看護師時代、先輩にこっぴどく怒られたことが多々ありますが、たいてい怒られるのは寝たきり患者の看護についてでした。(ちなみにまだ時々怒られるときがあります)

というのも、看護師がひとつその患者の観察すべきポイントを見落とすだけで、寝たきり患者は状態が劇的に悪化することがあるからです。ここ最近では高齢者が増え、延命治療を希望しない方も多くなり、一般病院では状態が仮に悪化しても、緊急処置を施さないことが多いです。三次救急レベルとかだとまた話が違ってくるかもだけど、わたしが働いているのは二次救急レベルの病院なので、高齢者の入院といえばほぼ終末期に近く、寝たきりの患者も結構います。病院や訪問看護で勤める多くの看護師が対象とする高齢者患者は、寝たきり患者の割合も多くなってきているんじゃないでしょうか。

 

どうして寝たきり患者は観察が重要なのか

本題に入ります。寝たきり患者の観察はなぜより重要になるのか。

わたしの寝たきり患者における看護の失敗エピソードはいっぱいあります。(いっぱいあっちゃだめなんだけど)

新人看護師時代、えらく尿量が乏しい寝たきり高齢者の尿を破棄したあと、その内容をカルテに記録したんです。その後その患者の受け持ちナースから呼び出されて怒られました。「尿量が8時間で20とか30とかだと、おかしいと思わないの?」って。うん、おかしいと思ったけど、わたしがカルテに記録してるし、受け持ちならその記録を見たらわかるじゃん、って内心思いながら(でもそんなことクチにはもちろん出せずに)、すいませんとあやまったことを覚えています。尿量が劇的に減るってことは、ショック状態かもしくは尿路閉塞とか腎不全とかそういった何かしらよきせぬことが起こっているということ。尿量が乏しいとわかったらすぐ対応が必要なわけで。そのときはまだ新人すぎて、その時間当たりの尿量がどれだけ良く無い事をサインしているかなんて、予想もつきませんでした。まぁ、その患者さんは尿路閉塞を起こしていたんですけど、もうちょっと気づくのが遅かったら腎盂腎炎とか起こしてたかもしれない。

寝たきり患者の点滴漏れなんて、何度経験して、何度呼び出されて怒られたことか数えきれません。でも、すごくベテランの看護師さんでも、時々やっぱり点滴漏れや褥瘡等に気づけないことがあります。

それはなぜか。

寝たきり患者が自分の状態を自ら訴えることができないからです。

 

痛いとか、苦しいとか、痒いとか、しんどいとか、何かしら訴えられたらいいんですが、寝たきり患者の多くは自分の状態を正確に他者に伝えることができないことが多い。ナースコールだって、なかなかうまく押せません。

声に出すことができない。表現することができない。決して痛みや苦しみを感じていないわけではないはずですが、それを訴えることができないからなんですね。そんなことはわかっとるわい。ってお思いのあなた。そこからもう一歩踏み込んで、看護師としてじゃあ何が必要なのかってとこを考えてみましょう。寝たきり患者の看護で何が必要になるのか。寝たきり患者は状態を自分で訴えることが出来ないから、より看護師の細やかな観察力が必要なんです。看護師が気づいてあげないと、その寝たきり患者の状態の悪化に誰も気づくことができないからです。訴えることができる患者に対しては、看護師が苦痛や不快感の訴えを引き出してあげるようなコミュニケーション能力も必要になってくるんでしょうが、寝たきり患者の看護において、看護師に必要な能力は観察力のウエイトが重きを占めているわけです。

 

寝たきり患者の観察項目には共通点があるんだよ

でも寝たきり患者の観察なんて、いっぱいありすぎてわかんないよ!診断された疾患に加えて既往だっていっぱいあるのに!って新人のときは何度思ったことか。

そう。寝たきり患者の観察は大変なんですよ。全部丁寧に見ていたら、時間たりねーよ。でも時間内に観察して、問題があったら対処しないといけない。

でも大丈夫。ベテランの看護師さんの仕事が早いのって、やはり要領を得て仕事をしているんですね。

 

わたしは数年看護師を経験してきて、どんな疾患の患者でも、寝たきりの状態であるなら、ある程度観察項目に共通点があることに気づきました。

以降からひとつずつまとめていきます。

 

 

患者の何を観察したらいいの?看護における基本的な観察項目を理解しよう!

患者の何を観察したらいいのか。

まずどんな患者にも共通する観察項目をあげていきましょう。

 

診断された疾患の症状

現在その寝たきり患者が入院している理由となる疾患は何ですか?その治療に対して観察すべき点は何でしょうか?

誤嚥性肺炎なら嚥下能力や咽頭の呼吸音など、入院する原因となった疾患に関する状態を観察する必要がありますね。

寝たきり患者じゃなくてもそうですが、看護師としてラウンドするとき、その患者がなぜ入院することになったかエピソードを理解した上で、その疾患の症状に関する観察と記録は必ず必要になります。

 

既往にある疾患の症状

入院する原因になった疾患に加え、大半の患者は既往歴を持っていることが多く、現在も投薬治療中なんてよくある話。

看護師として患者を観察する際、診断疾患に関する部分だけじゃなく、既往歴に関する疾患の症状の観察も必要になります。っていっても既往歴の症状観察となると優先順位もありますが、基本的には現在継続して何かしら治療しているもの(既往に高血圧があって降圧剤を毎朝飲んでるとか)や、現在の生活に影響しているもの(腎不全で週3回透析してるとか)は必須の観察項目ですね。

看護問題に関すること

診断疾患とは関係なくても、入院治療することで転倒転落リスクが高くなっていたら、転倒転落の看護問題と看護計画があがりますよね。つまり、その患者が持っている疾患とは直接関係なくても看護師として観察すべき点になります。患者の看護問題って、患者の状態によって日々変化するため、絶対これ!っていうものはないんですが、少なからず直近のその患者の状態で考えらる看護問題に関するところは、看護師として観察すべき項目になります。

例えばですが、今まで意識レベルが低かったけど治療を進めていくうちレベルアップしてきて、体動が多くなり転倒転落のリスクがある患者なら、ADLや危険行動の観察が必要になるし、入院による環境変化で認知症状が強くなった患者なら、原疾患の観察に加え、認知症状の増悪を疑わせるような所見はないか等観察が必要になります。

 

ドレーン、尿バルーン、酸素投与、点滴・・患者の体の挿入されているもの、装着されているものすべて

見落としがちですが、これすっごく大事!!

慣れてくるほど忘れがちになったり、新人のうちは病気の観察に夢中でこの当たり前の観察項目を忘れてしまうんですよね。そして看護の観察項目の中でも観察を忘れたらあとあとすごくトラブルになるようなところです。

基本、患者の体に本来入っていないもの、装着しないようなものはどんなものでも観察が必要!!!!!!

絶対ですよ!大切なことなので、もう一回!

患者の体に本来入っていないもの、本来装着しないようなものはどんなものでも絶対ラウンド毎に観察する!

それこそ看護師の仕事の肝といってもいいんじゃないだろうかと思うくらい、患者に装着するもの、挿入するものの観察は必須です!!!

 

ドレーンもそう。尿バルーンもそう。酸素もそう。コルセットや松葉杖もそう。包帯もギプスも点滴ルートも、何もかも治療で使うような、患者の体に本来なかったようなものはすべて観察すべきものです。

本来体に入っていない、装着していないはずのものですよね。つまり、管理が必要なわけですよ。これらを指示するのはあくまで医師ですが、管理は看護師の仕事ですね。チラっとでいいから絶対挿入されているものや装着物は必ず観察してください。

っていうか、そもそも患者の体に入っていないもの、装着していないものって、治療で使っているだけで、体にとっては異物だから、ほっといたらトラブルがおこりやすいものなんですよ。基本的に。寝たきり患者だとその不快感や苦痛を訴えることが出来ないから、なおさら見落としたらトラブルになりやすいんです。

例をあげますが、

ドレーンが体のしたじきになっていて褥瘡になったとか、酸素チューブよく見ると延長部分で抜けていて酸素投与されてなかったとか、えらい術後の体動激しいなとおもたら術後継続的に使う硬膜外麻酔(EPI)が抜けてたとか、実は大事な点滴がもれまくってたとか、大丈夫だろうと思ってたらコルセットが蒸れて皮膚トラブル起こしてたとか、なんか熱でてるなーと思ったらバルーンが尿閉塞起こしてたとか、患者さんに挿入されてるもの、装着してるものをちゃんと観察しとかないとびっくりするようなトラブルって本当にありますから!

まぁ、これらの例はすべてわたしが実際に起こした失敗例ですが・・(多すぎ)。

でもね、わたしの経験談からしても、患者に挿入されるもの、装着しているものって絶対見ないといけないです。

見落として患者さんになにかあったとき、その責任は看護師にありますからね。

 



寝たきり患者特有の観察項目って何?

上記「患者の何を観察したらいいの?看護における基本的な観察項目を理解しよう!」では、寝たきり患者だけでなく、どんな患者にも共通する観察項目をあげましたが、自分の状態を訴えることが出来ない寝たきり患者はそれらの観察項目に加えて、寝たきり患者特有の観察項目があります。俗にいう「廃用症候群」の観察項目と似てるんですが。(っていうかほぼそうなんですが)

寝たきり患者で見ておきたい観察項目を紹介していきます。

 

呼吸状態~息、してますか?~

寝たきり患者は直接言葉で訴えることが出来なくても、何かしら体に異変があると、呼吸状態が変化することがあります。

発熱や呼吸苦、レベルの低下等があると呼吸状態が変化するので、いつもの呼吸パターンと変化はないか観察する必要があります。呼吸状態にあわせてサーチレーションの変化、脈拍の変化を見るのも大切です。

また、寝たきり患者さんって、状態にもよりますが、比較的窒息のリスクを持っている人結構います。両肺に雑音はないし、咽頭にも貯留音はないのに、サクションしてみたらえらい痰がひけるとかもしょっちゅうあります。訴えないし、咳嗽反射もよわくて咳もしないからわかりにくいことも多いんですが。またそれが怖いんだけどね。

だから、ちゃんと呼吸してるのか、酸素化できる状態なのかってとこはしっかり観察してアセスメントする必要があります。

 

循環状態~血はちゃんと巡っているのか?心機能はOK?~

JCSがクリアで寝たきりとかじゃない患者なら、心機能や循環動態に異常があるとき、たいていその症状を訴えることが出来ます。寝たきり患者さんが怖いのは胸部症状とか、血圧が高い、低いなどに付随する症状があったとしても、訴えることが出来ないこと。モニタリングも経時的にしていない状態で、循環動態に異常が生じたとき、急激に状態悪化することだってあり得ます。

 

だから、ラウンド毎に血圧や脈拍等循環動態の変化をしっかり観察しておく必要があります。既往に心機能に関する疾患がなくても、寝たきり状態ということはいつなんどき循環に異常が起こるかわからないと思って観察することが大切です。血圧も触診でしっかり整合性があるかを見るべきだし、血圧が低めなら、頸動脈は触れるのか、橈骨動脈は触れるのか・・とか。わたしは基本寝たきり患者さんの観察は、見るだけじゃなくて触診でも観察をするようにしています。

意識レベル~レベル低下してるなら観察項目が増えるよ~

寝たきり患者さんって、話しかけても反応がないことが多いので、なかなかレベルって観察するのが難しいですが、話せない患者さんには必ず瞳孔の対光反射を見たり、こしょばすとか刺激を与えてみたりして、レベル低下をきたしていないか観察するようにしています。もしいつもよりレベル低くない?ってなったときは、軽い痛み刺激を与えてみたり、脳血管疾患障害の症状はないか見てみたりします。寝たきりで話せないからこそ、微々たるレベルの変動が、状態変化のキーになったりします。

 

 

腹部状態~消化器症状をアセスメントしよう~

普通消化器に異常があるとき、吐き気や腹痛、腹部膨満感などで消化器症状が伴いますが、寝たきり患者さんはそれを訴えることができません。

なので、おなかは聴診、視診、触診、便の状態や性状でしっかり観察するようにします。

 

浮腫の程度~状態の悪さが客観的にわかる~

浮腫は循環状態や栄養状態を視覚で教えてくれる大切な症状。寝たきり患者を見るとき必ず足先までみてください。循環や呼吸状態が増悪しているとき、浮腫に加えてチアノーゼが著明になってたりしますから。浮腫が増悪すると、皮膚が進展してさらに褥瘡のリスクが高くなります。

 

褥瘡の有無~寝たきり患者でリスクがない人はいない~

寝たきりで体動すら自分で起こせないようになると、褥瘡のリスクは格段とあがります。ほんと、気抜いたらすぐできる。褥瘡ができる根拠って2時間以上の継続的な圧迫が加わったとき。とか言いますが、浮腫とか低栄養とかのリスクが重なったら褥瘡リスクって高くなるので、2時間の体交に加えて、ラウンド時の除圧などもすごく大切です。わたしはラウンドしたとき、ひょいっと下腿を持ち上げて再度ポジショニングをしたり、背抜きをしたりします。それだけでも褥瘡発生リスクって変わるし、ちょっと足持ち上げるとか、背中一回さすってポジショニングしなおすとかって時間がかかることじゃないですからね。

 



いかに早く看護業務を終わらせ寝たきり患者の状態を悪化させないようにするか。~看護の観察とケアは要点勝負~

この記事で紹介した、寝たきり患者の共通の観察項目は以下の通り。他にもあるかもしれないけど、わたしの思いつく限り、わたしが日々看護業務で観察している要点です。

  • 診断された疾患の症状
  • 既往にある疾患の症状
  • 看護問題に関すること
  • ドレーン、尿バルーン、酸素投与、点滴・・患者の体の挿入されているものすべて
  • 呼吸状態
  • 循環状態
  • 意識レベル
  • 腹部状態
  • 浮腫の程度
  • 褥瘡の有無

 

こんなこと言うのもなんですが、看護師の仕事ってなんでもかんでも丁寧にひとつひとつ考えて行動していたら、正直時間なんて全然足りない。看護師がたりまくっている病院なら別ですが、たいていの病院なんて看護師不足が普通なので、7:1とか言いながら、それ以上の割合の患者を担当するのが普通です。看護必要度の厳しさも増して、病院の看護師の仕事は増える一方ですからね。

患者の個別性のある看護については、おのおのの患者さんにケアを提供してあげたらいいと思いますが、だいたいルーチンで行う看護に関しては、観察ポイントを覚えてバーッとラウンドしちゃっています。じゃないと急変とかに対応する時間がなくなってしまうので。ラウンドが早く終われば、各患者さんの個別ケアをする時間も出来るし、わたしが思うに看護の観察項目はやっぱり要点をおさえることが大事だなーと思いますね。どれだけ丁寧に観察しても、重要なところ見落としてたらそこでNGですから。

なんて参考にならなすぎる意見だったらすいません。もっと時間やゆとりがあれば、ゆっくりじっくり患者さんと関われるんですけどね。って愚痴言い出すととまんないけど。

 

寝たきり患者の観察項目についてはこの辺で終わります。