弾性ストッキング・弾性包帯の目的・効果・注意点を知ろう!【深部静脈血栓症予防】



シンママナースの マリアンナ です。

 

医療現場では必ず「弾性ストッキング(弾性包帯)」っていう靴下がでてきます。

もしくは「弾性包帯」

手術がある病院や整形外科などでは必須で、看護師なら知っておきたい医療アイテムです。

 

この記事では、医療現場でよく使用される「弾性ストッキングと弾性包帯」について解説しています。

 

 



弾性ストッキングと弾性包帯って何?

そもそも弾性ストッキングと弾性包帯って何か。

弾性ストッキングって、きつーい靴下のことなんです。

弾性包帯は、硬くて丈夫な包帯のこと。

これを患者さんの下腿に巻き上げて使用します。

 

ふたつの主な違いは何?って聞かれたら、

弾性ストッキングは一定の圧をかけることができ、着脱も簡易。

弾性包帯は弾性ストッキングではサイズが合わないような足に、調整しながら巻き上げて圧をかけることができます。

って感じかな。

 

このふたつは、全身麻酔後の患者さんや整形治療中の患者さん、寝たきりの患者にとても重要なアイテムです。

まず、このふたつの「効果ってなに?」ってところから理解していきましょう。

 



弾性ストッキングと弾性包帯の【効果】

弾性ストッキングと弾性包帯の効果を知るためには、まず「下腿」の解剖理解が必須。

 

下腿の血管は歩いたり走ったりすることで、筋肉が収縮して、血管のなかの血液を押し上げています。

筋ポンプ作用」とも呼ばれています。

 

画像引用:下肢静脈瘤広報センター

 

健康なひとは普段の歩行や運動で、下肢に血液が滞らないように、下肢の「筋ポンプ作用」が働いているんですね。

下肢に血液が滞り、筋ポンプ作用が働かなくなると、下肢の血管内に「血栓」ができてしまいます。

血液は流れていることで、固まらないようになってますからね。

 

なので、普通のひとは下肢の血栓ができたりすることはありません。

 

だけど、なんらかの病気で入院している患者さんって、

安静や麻痺、意識レベル低下が原因で、なかなか歩いたりすることができません。

下肢や骨盤、腰部などの骨折や外傷がある場合、安静が必須。

こういった病気をきっかけに歩行しなくなった患者さんは、下肢の血管に血液が滞って血流が悪くなります。

血栓ができる可能性が高くなるわけです。

 

そうならないように、足を外部から圧迫して血液が滞らないように助ける。

つまり、筋ポンプ作用の筋肉のような働きを代わりにしてくれるのが、「弾性ストッキング」もしくは「弾性包帯」なんですね。

 

どれくらいの圧が必要なの??

理想的な血栓予防のための圧迫圧は

  • 足首 18mmhg
  • ふくらはぎ 14mmhg
  • 膝窩部 8mmhg
  • 大腿下部 10mmhg
  • 大腿中間部 8mmhg

だといわれてます。

(sigelらの研究より)

 



弾性ストッキングと弾性包帯の【目的】

以下のようなひとは、下肢の血流が悪くなりやすく、下肢に血栓ができやすいリスクがあります。

  • 寝たきり
  • 術後や治療等、長時間にわたり安静が必要な人
  • 妊婦
  • 立ち仕事
  • 極度の肥満
  • 長時間同じ体勢でいる人(エコノミー席での長時間フライト等)

 

長時間同じ体位でいたり、急激な体型の変化で血流が悪くなる人は、下肢に血栓ができる可能性が高くなります。

長時間同じ体位でいないといけない飛行機のエコノミー席で、肺塞栓が起こったりすることから、エコノミー症候群ともいわれることがあります。

 

 

入院中患者で長期間の安静(もしくは寝たきり)になる場合、下肢筋ポンプ機能が働かないため、下肢の血管内で血流が滞って血栓ができやすいんです。

 

深部静脈血栓症(エコノミー症候群)の症状と看護~肺塞栓症の予防~

2016.11.02

ホーマンズ徴候とは~ふくらはぎの痛みによる深部静脈血栓症の評価~

2016.11.03

 

大地震でエコノミー症候群?

熊本を中心で起きた大地震「熊本大地震」では、地震による危険から多くのひとが車内生活を与儀なくされました。

多くのひとが長時間車内で同一体位をとらざるおえなくなった結果、普通では考えられない肺塞栓が多発。11人の震災関連死となりました。

 

 

 



弾性ストッキングと弾性包帯の注意点

弾性ストッキングや弾性包帯を使用するとき、注意してほしいことがあります。

患者の状態によっては、下肢を圧迫することで状態がより悪くなるひとがいるんです。

注意したいところですね。

 

弾性ストッキング着用の禁忌事項

 

急性期の深部静脈血栓症の患者

弾性ストッキングで圧をかけることで、すでに出来ている血栓が押し上げられ、肺血栓塞栓症を発症する恐れがあります。

 

動脈血行障害、うっ血性心不全の患者、下肢に炎症性疾患、化膿性疾患、急性創傷のある患者

圧迫により症状を悪化させる恐れがあります。

 

急性循環不全等、末梢循環が不安定な患者

血流量低下により壊死が起こる可能性があります。

 

糖尿病患者

血行障害や神経障害が発症する恐れがあります。

 

下肢表在静脈の血栓性静脈炎の患者

静脈炎の状態を悪化させ、肺血栓塞栓症を発症する恐れがあります。

 

 皮膚の感染症、開放創、皮膚炎、潰瘍がある患者

皮膚圧迫により、血流を阻害させ、回復を妨げる可能性があり、症状を悪化させる恐れがあります。

 

 患肢に知覚・神経障害がある患者

痛みや刺激がわかりにくいことで、合併症の早期発見が遅れる可能性があります。

 

ストッキング素材に対する過敏症がある患者

ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンの皮膚アレルギーを誘発する恐れがあります。

 

 

参考URL

弾性ストッキング 添付文書

寝たきり、麻痺、意識レベルが低い患者は「医療機器関連圧迫創(褥瘡)」にご注意?

麻痺や筋力低下があり、訴えが出来ない患者の場合、弾性ストッキングの圧によって皮膚トラブルが起こることがあります。

弾性ストッキングや弾性包帯で起こる皮膚トラブルを「医療機器関連圧迫創(褥瘡)」と言います。

 

長期にわたり、弾性包帯やストッキングを使用すると、この「医療機器関連圧迫創(褥瘡)」が起こることがあります。

「医療機器関連圧迫創(褥瘡)」の高リスク患者は、

ストッキングや包帯がきつくて、食い込んだり、圧で褥瘡ができても、自分から訴えられない患者です。

つまり、意識レベルが低い患者や、寝たきり、筋力低下でなにかしら自分の訴えを自分でできない患者さん。

 

定期的に弾性ストッキングや弾性包帯を脱がせて皮膚状態を観察しないと、知らない間にとんでもない褥瘡ができることがあります。

そうなってしまうと弾性ストッキングも着用できなくなるし、褥瘡の治療も増えて、患者さんにとっても医療者にとってもマイナス。

 

弾性ストッキングや弾性包帯は、血栓予防にとても有利ですが、着用する以上は看護師サイドから定期的な観察が必要ですね。

麻痺がある患者や意識レベルが低い患者だけに限らず、皮膚状態や足背動脈、膝窩動脈の触診など、しっかり全身を観察することがベストです。

 

 

名前

余談ですけど、血栓予防を医療的に管理していると、305点の「肺血栓塞栓症予防管理料」っていう保険点数がつくみたい。

靴下はいただけなのに、すごいね。

 

 



弾性ストッキングと弾性包帯【まとめ】

 

  1. 弾性ストッキングと弾性包帯は、血栓予防を目的にした医療アイテム
  2. 弾性ストッキングと弾性包帯の使用前に、禁忌事項がないかチェックが必要!
  3. 弾性ストッキングと弾性包帯には「医療機器関連圧迫創」に注意して

 

毎日のように弾性ストッキングと弾性包帯を使っているので、記事にまとめてみました。

こうあらためて見てみると、リスクもあるし、禁忌もあるもんですね。

 

効果ってホントにあるのかなーとか思うけど、実際弾性包帯や弾性ストッキングには血栓予防効果があるみたい。

わたし、しごと中履いてみたら実際に足のむくみがほとんどできてなくてびっくりしました。

めんどくらいから、あんまりはかないけど。

 

てことで、弾性ストッキングと弾性包帯についてはこの辺で。