シンママナースの マリアンナ です。
関西国際空港で麻疹(はしか)が35人以上の集団感染。意外に合併症も多く死亡率も高い感染症である麻疹(はしか)。今後感染拡大の可能性、麻疹の感染経路と症状 、麻疹の特徴的症状である「コプリック班」、大人になってからの麻疹予防接種やワクチン、妊婦の麻疹感染の危険性について現役看護師がまとめています。
関西国際空港で麻疹集団感染、今後感染拡大の可能性は
2016年8月、関西国際空港の国際線、接客も担当している従業員が麻疹(はしか)に集団感染しました。感染者数は現在判明している地点で35人。麻疹(はしか)は2週間以上の潜伏期間があることから、感染した従業員の発症時期を逆算して2016年8月17日以降から関西国際空港で感染が蔓延していたことになります。ただでさえも国内外に人が行き来する場所(しかも夏休み)なのに、麻疹(はしか)ウイルスばらまかれる率高すぎでしょう。もうアウトブレイク(爆発的に感染症が流行ること)状態ですね。
幕張で行われたジャスティンビーバーのコンサートでは、麻疹感染している男性が参加していました。この男性は8月10日前後にインドネシアに訪れており、西宮在住であることから、関西国際空港を利用した可能性も高い。この男性が麻疹を発症し診断されたのは8月19日。おそらくインドネシアで感染したものでしょう。
これまでの直近の麻疹感染者の流れを見ると、この西宮在住の男性がインドネシアから麻疹を持ち込み、関西国際空港で感染を拡大させた、という感染経路が濃厚ですね。ネックなのは関西国際空港という、人がいろんな場所から集まる場所であるということ。今後感染拡大の可能性が十分あります。
麻疹とかはしかとかよく聞きますけど、本当はとても怖い感染病でもあります。特に妊婦さんや体力のない子どもや高齢者は注意が必要です。麻疹(はしか)についてまとめてみました。
麻疹(はしか)の感染経路と症状
麻疹(はしか)とは
麻疹(はしか)とは、麻疹ウイルス感染により発症する急性熱性発疹性のウイルス感染症です。(五類感染症指定)
麻疹(はしか)に免疫がない人が感染者に接触すると感染率はほぼ100%といわれるほど感染力が非常に強く、合併症が悪化すれば脳炎や肺炎など危篤な状態に陥ることもあり、死亡例もある。発症者のうち、約3割は合併症を発症し、約4割が入院を必要とするほど、状態が悪くなる。
感染経路と感染力
空気感染、飛沫感染、接触感染で感染する。後発年齢は小児が多いが、近年成人してからの麻疹感染するケースが多くなってきている。初春から初夏にかけて感染することが多い。
症状
麻疹は感染してから経過した日数によって、特徴的な症状があります。
一番注意してほしいのは、カタル期から発疹期ですね。 ただの風邪かな、と思いがちな時期でもありますが、状態がわるくなったときに失明や脳炎など比較的予後不良な状態に陥ることがあるからです。
時期 | 症状・特徴 |
【潜伏期間】 感染から7-14日前後 |
・麻疹感染者と接触し麻疹ウイルスが体に入りこむ
・無症状 |
【カタル期】 感染から15日-20日前後 |
・感染力が最大 ・発熱を伴い、風邪症状がでてくる ・涙や目やに、眼痛、角膜白濁など目症状がでる ・発熱はすぐ解熱するが、同時に口腔内に白いできもの(コプリック班)ができる ・この時、目症状が増悪すれば失明する可能性も |
【発疹期】 感染から20日経過後 |
・再度発熱を生じる(二峰性発熱) ・3日以上をかけ全身に発疹が生じる(顔から順番に出てくることが多い)麻疹による発疹 写真 医徳会様より みやけ内科様より・咳や鼻水、下痢等の風邪症状も続く ・口腔内がただれて痛みが伴う ・食欲が著しく低下し脱水を起こしやすい |
【回復期】 感染から23日-25日経過後 |
・熱は下がり風邪症状も改善 ・発疹は皮がむけて治癒してくる ・感染力はまだ継続しているため解熱してから3日間経過するまで学校等は出席停止である |
麻疹(はしか)の合併症
麻疹(はしか)では約3割の人が合併症を発症します。
脳及び神経関連の合併症
・亜急性硬化性全脳炎
麻疹感染者の1/数万人の確立で発症する。麻疹ウイルスが中枢神経に潜伏することが原因。麻疹に感染してから亜急性硬化性全脳炎の症状を生じるまでに時間を要するため、なかなか気づきことが出来ない。予後不良で亜急性硬化性全脳炎を起こした場合、高い確率で死に至る。
・ウイルス性脳炎
麻疹感染者の1/1000人の確立で発症する。死亡率は6人に1人、3人に1人が脳神経系に障害が残る。
呼吸器系の合併症
・中耳炎、肺炎、気管支炎等
いずれも麻疹ウイルスによるものの場合と、細菌感染による二次的感染によるものの場合の2パターンがある。
感染者の10%前後が中耳炎を起こし、6%が肺炎を生じる。
麻疹による死因の二大因子は脳炎と肺炎であり、呼吸器症状の悪化には注意が必要。
その他器官に伴う合併症
・妊婦による流産や胎児への影響
麻疹(はしか)の感染は妊婦に危険 を参照。
麻疹(はしか)の特徴的症状「コプリック班」ってなに?
麻疹(はしか)の特徴的症状「コプリック班」
コプリック班とは、麻疹(はしか)感染後、カタル期におこる口腔内の白い斑点。麻疹(はしか)に特徴的な症状であり、麻疹(はしか)診断に役立つ。
- コプリック班の写真
医徳会様より
なんか白い斑点みたいなものができてますね。
麻疹流行中に体調不良を感じたら、口腔内をチェックするようにしましょう。
麻疹(はしか)予防接種やワクチンは大人になっても打てるの?
麻疹(はしか)のMRワクチン
麻疹(はしか)の予防接種は、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)を予防接種する方法が主流です。
このMRワクチンを注射することで、麻疹と風疹どちらも免疫を獲得することができます。
麻疹(はしか)のワクチンの適齢期
MRワクチンを予防接種すると約10年以上は免疫を獲得することができるので、現在の定期接種は生後12-23か月に一回目、小学校入学前の1年間に二回目にMRワクチン注射をすることがすすめられています。
大人になると免疫はなくなるのか
MRワクチンによる麻疹風疹の免疫獲得有効期間は約10年くらいと言われています。個人差がありますが、ワクチン接種を行っても免疫が低下し成人してから感染することはまれにあります。10年以上麻疹風疹の免疫を持っているひとももちろんいますけどね。大人になってからでもMRワクチンは予防接種することができます。(小児と違って有料の予防接種になりますが)
大人になってから麻疹の予防接種を受けたい
大人がMRワクチンを接種できる病院リストが以下のホームページに掲載されています。
成人してからでもMRワクチン(麻疹の予防接種)を受けたい方は、ぜひ参考にしてください。
麻疹(はしか)の感染は妊婦に危険
妊婦さんは気をつけて!麻疹(はしか)の胎児への影響
わたしが看護学生のとき、産科の授業で先生が何度も妊婦の麻疹風疹感染リスクについて説明していました。
ちょうど先天性風疹症候群にかかった赤ちゃんが生まれたことがニュースにでていて話題になっていた時期だった気がする。
話がそれました。
妊婦さんは、麻疹感染には注意してください!
妊婦さんが麻疹(はしか)に感染すると、早産や流産する可能性が高くなります。確立は約3人に1人、結構高い割合ですよね。
風疹は胎児奇形になる可能性が高いことに対し、麻疹は早産流産の可能性がすごく高くなるわけです。
予防摂取をうけたことがあったり、過去に感染したことがあっても、免疫は必ず永続的に保障されるものではありません。
もし妊娠を希望し、まだ免疫を確保していないなら、妊娠前にワクチン接種するようにしましょう。(妊娠中は生ワクチンの予防接種ができないんです)
妊娠してから免疫がないことに気づいたなら、残念ですが妊娠中あまり感染源になるような空港等の人込みは避け、妊娠期間を安全に過ごせるよう心がけましょう。
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