インスリン過剰投与、点滴異物混入・・看護師による医療事故・事件の背景~人間関係と職場環境の過酷さ~



シンママナースの マリアンナ です。

近年、看護師の医療事故や事件などを起こすニュースが目立っています。現役看護師による「人に言えないような看護師の裏話」もふまえて、看護師の事件・事故に共通する「原因」と、事故が起こる病院に共通する問題点についてまとめています。

医療現場


増加する看護師の医療事故・事件

最近話題になった看護師による医療事故や事件、たくさんありましたね。

たぶん、点滴異物混入事件も、看護師が犯人なんじゃないかなーなんて疑っているわたしです。

 

2016年9月23日、インスリン10倍投与、糖尿病患者死亡(長崎県)

長崎県川棚町 国立病院機構・長崎川棚医療センターで23日、糖尿病で入院している患者(80代)に、看護師(20代)が誤って指示されていた量の10倍のインスリンを点滴で投与、死亡する事故が起きたと発表。

 

2016年9月20日大口病院で点滴に異物を混入された入院患者2人が中毒死した事件(横浜市)

2016年9月20日4時55分横浜市の大口病院で、入院患者の88歳男性が、点滴に漂白剤のようなものを混入され殺害された事件。

2016年9月28日現在、まだ犯人は捕まっていない。

横浜市大口病院でおきた点滴異物混入事件の犯人について看護師が考察する 2016年9月20日4時55分横浜市の大口病院で、入院患者の88歳男性が、点滴に漂白剤のようなものを混入され殺害された事件。現役看護師の立場から、不可解に思うことがいろいろとあります。犯人は誰なのか、

 

看護師が故意に、患者に対して指示のないインスリンを大量に投与し意識を失わせた(東京都)

看護師 高柳愛果容疑者(25:傷害容疑で逮捕)2014年4月3月中に3回にわたり、東京都世田谷区 玉川病院で91歳の入院患者の女性に対して、指示のないインスリンを大量に投与し意識を失わせた。

 

 

いろんな事件がありますが、普通の看護師であれば一度は触れるような薬や点滴、消毒液によって患者さんが死亡もしくは危篤に陥るという、とても看護師にとっては他人事とは思えない事故・事件ばかりです。

でもなぜ、看護師たちはこのような事件を起こすのか、考えてみました。

 

 



供述から見えてくる医療事故および異常行動を起こすトリガー

新人看護師が聞きたいことを聞けない状況にある

前述の「2016年9月23日、インスリン10倍投与、糖尿病患者死亡(長崎県)」において、実際に指示量をまちがえた看護師の供述が目にとまりました。

「看護師はインスリン投与前の確認を2人で行わなかった理由について、「(同じ夜勤の同僚に)点滴に注入するのが初めてだと知られたくなかった」と話している」。という一文です。

ニュースによってはこの看護師さんの事を、20歳とか20代前半とかいっているので、恐らくこの加害者となる看護師さんはまだまだ新人の看護師さんでしょうね。

同僚に点滴に注入するのが初めてだと知られたくなかった、と供述していますが、ここでいう同僚は先輩看護師だと推測がつきます。

 

ここですごく問題に感じたことがふたつあります。

 

  • インスリンなんて劇薬を新人看護師が扱うのに、先輩看護師が気に留めていないこと
  • インスリンを扱うのに新人看護師が先輩に相談できない環境があること

 

この新人看護師、インスリン自体を点滴に注入するのが初めてだということ。

病棟や病院によってどんな薬がどんな形でよく使われるのかはまちまちですが、インスリンに注入をするのが知っているか知っていないか先輩看護師が一声かけることはできなかったのでしょうか。

もしくは新人看護師から、「この点滴にインスリンをいれるの初めてですけど、これであってますか?」と、先輩看護師に聞ける環境になかったのでしょうか。

点滴とインスリン

このような状況が起こるとき、多くは聞いてこない新人看護師が悪い、でかたずけられるのがほとんどです。

でも、新人看護師が業務を知らないのは当たり前です。

なおかつ実際臨床にいて思いますが、新人看護師が、先輩看護師に余裕をもってわからないことをわかりませんと言えるような環境ではありません。

実際新人看護師に「なんでも先輩看護師に聞きなさい」と教育がされていても、新人看護師が実際にわからないことを先輩看護師に聞いたら

「なんでそんなこともしらないの!?」「そんなこともしらないで出勤してきたの?」と知らないことを責め立てられている場面をよく見ます。(っていうかほぼ毎日くらいの勢いでみることがあります)

結局新人看護師は一番誰かに聞かなきゃいけない立場なのに、聞くと怒られるんです。そして萎縮してしまう。聞けなくなるの負の連鎖。

先輩看護師が悪いというわけではありません。

先輩看護師も自分でおいきれない業務の責任をおっていることがほとんどですから、はっきりいって丁寧に教えてあげられる精神的余裕がないのです。

 

そもそも新人看護師がいるのに、十分な指導者役をつけることができない職場環境に問題があるとわたしは思います。

看護師不足とはいいますが、今後も患者に対する看護師の割合を7:1から10:1にシフトしていく流れはすでに始まっており、さらに看護師の負担は大きくなることが予測されるわけです。

毎年何かしら起こる新人看護師の医療事故は、充分な人材確保や職場環境を整えられない医療現場の投影ともいえるでしょう。

恐らく厚生労働省が医療現場をしっかりみて施策をたてていかないと、このような事故は減らないと思ています。

 

 

アイデンティティが保てなくなる看護師の厳しい職場環境

「看護師が故意に、患者に対して指示のないインスリンを大量に投与し意識を失わせた(東京都)」事件の犯人高柳愛果さんについては、事件前に男女関係のもつれがあったそうです。事件当初は精神的に不安定な状態であったと報道されている情報もありました。

もちろん、恋愛のもつれなんて普通の25歳くらいの女性であれば当たり前にある人生のイベントのようなものですが。

ここで問題だなーと思うのは、人生で当たり前にあるイベントによるストレスがあっても、看護師さんは簡単に休みをとったり、転職したりすることはできません。人生で自分を見つめなおしたい出来事があっても、病院によっては有給はおろか、退職だって簡単に許してくれない業界です。

病院は診療報酬の制度上、看護師をやとってなんぼ儲かるの世界ですから、ほんとすぐ休んだり、退職させたりしてくれません。

ストレスがたまったからって、簡単に休んだり、連休をとったりすることはできないんです。休みもバラバラ、休日であっても研修だの勉強会だのって、結局休みという休みは限られた日数しか与えられていません。

 

この事件の看護師さんは、もしかしたらもともと人格障害的な要素を持ち合わせていたのかもしれませんね。

このひとがおこした医療事件が、必ずしも看護師の職場環境が起因しているとは思いませんが、この看護師の当時の精神状態のときに、十分な休日やリフレッシュ休暇がとれる環境だったなら、もしかしたらこのような事件にはひもづいていなかったんじゃないかな、と少し思いますね。ストレスにストレスが重なっていけば、アイデンティティなんてすぐ崩れてしまうものですから。

 



劣悪な医療現場の人間関係と職場環境 ~職場が生み出す医療事故~

劣悪な医療現場の人間関係

意地悪看護師の本当にあった怖い話

正直、看護師のぶっちゃけ話ですが、意地悪な先輩だと、きらいな看護師がわざと失敗するように罠を仕掛けているひととかいます。

本当怖いですよ、見てるだけで。チクったらこっちが攻撃されるので正直いえないですが。

 

わたしが一番このひとこわい、と思った看護師さんは、

「明日○○(嫌いな同僚の看護師)が日勤じゃん、じゃああいつ(危篤状態の患者さん)が明日までに持つようにしてやる。」

って言っていたことです。持つっていうのは「延命させてやる」っていう意味です。嫌いな同僚に危篤の患者を持たせてしんどい思いをさせたいということ。

正直看護師にとって、他の7~8人の患者の対応もしながら、担当の亡くなった患者様のケアや対応をする日は大変です。それをふまえているから、その意地悪な看護師さんは、嫌いな同僚の看護師さんに、危篤の患者さんを使って嫌がらせをしているわけです。

いつ亡くなってもおかしくない患者さんは、看護師の努力次第で、心臓の動きだけをなんとか維持することは可能です。

これは、もう少しで患者さんが亡くなるけど、家族がまだ病院に間に合ってないときなどに看護師が行う処置です。

定期的にサクション(たん吸引)をかけて気道を確保したり、点滴を早くしたり、ほぼ意識のない患者さんに声をかけ心停止しないように何かしら努力します。

雀の涙のような努力かもしれませんが、患者さんと家族が最後のときを過ごし前向きに死と向き合えるようにするための、看護師からのせめてものケアでもあります。

 

意地悪な看護師さんって、危篤な患者さんさえももはや誰かに嫌がらせをするための道具のようなものでしかないんだなって深く胸に突き刺さりました。

その意地悪看護師さん、吸引用のチューブを意識のない気道に入れっぱなしにして、呼吸気道を確保していました。患者さんが死なないように。

こんなこと倫理的にありえないのですが、閉鎖的で病室には防犯カメラもつけられない医療現場って、ありえてしまうんです。

 

そんなことが普通に行われてしまう職場環境

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でもその意地悪看護師さんとお話しした際、自分自身も学生~新人看護師時代、ぼろぼろにいじめられて、出勤できなくなり、精神病院に入院したと話していました。

(そんな性格で病むのかよ)と内心思いましたが、医療現場ってそれだけダークでイジメもおおい。上下関係の厳しい、カースト制度のような人間関係なんだと思いました。

 

やはりそれだけ責任が重い仕事の上に、十分な休息がとれない環境であることが要因しているんだと思います。おまけに泥沼の人間関係。自分らしさを失って倫理観すらなくなってしまうんです。

そのストレスが、自分より弱い新人看護師や患者に向けられていく。上や環境が厳しいと下のものに矛先が向きますよね、どの世界でも。医療現場も社会の縮図のようなものですね。

 

テレビでは「また医療事故だぞ!殺人事件だぞ!」なんてとんでもないことが起きた、みたいに報道してますが、臨床現場にいるわたしからしたら、こんな劣悪でハードな環境で医療事故や事件がもっと起きていないことのほうが不思議です。患者への暴力事件とか医療事故とか報道されているのは、氷山の一角に過ぎないと懸念します。

 

ストレスが過剰にあると、人は正常な判断はできない

医療技術だろうが、運転技術だろうが同じことがいえますが、

ひとはそれが精神的なものであろうと、身体的なものであろうと、過剰なストレスにさらされ続けると正常は判断や、ひいては倫理観のある判断ができなくなるものです。

ハードな職場環境なのに、休みたいときに休めない、やめたいのにやめられない状況だとひとはだれでも正常な判断や行動ができなくなります。

結局は人間良い仕事をしたいなら、職場選びはすごく重要になるわけです。

人間が想像している以上に、人間は環境から多くのストレスを感じているんです。

自身の保険会社を世界最大級に成長させたW・クレメント・ストーン (ナポレオンヒル財団 初代理事長)は以下のように語っています。

Be careful the environment you choose for it will shape you; be careful the friends you choose for you will become like them.

環境選びは慎重にしてください。環境はあなたを形づくるものだから

友達選びも慎重にしてください。なぜなら、あなたはその人たちのようになるから

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W・クレメント・ストーン (ナポレオンヒル財団 初代理事長)の写真

 

素晴らしい名言ですね。肝に銘じたいと思います。

 



看護師になるなら職場選びは慎重に

看護師の職業につくということは、それだけでもハードな環境に身を投じるということです。国立だの大手だのブランド志向や、給与や待遇等みえる部分だけで職場を選ばないほうがいいでしょう。

旗から見たらよい病院にみえても、結局は社会から少し外れた閉鎖的空間です。なかでなにが起こっているかなんてわかりませんから。

自分がニュースで加害者になるような看護師になりたくないのなら、そのような病院では勤めないことです。

一見大手だったり、地域に根付いた良い病院だとかなんとかいっても、病院のなかの従業員同士の仲は最悪だったりすることなんか、多々ありますから。

 

まずは自分がどんな看護師になりたいのか、

なりたい看護師がいる病院なのか、

なりたい看護師になるサポートをしてくれる病院なのか

 

しっかり環境となる職場を見極めるようにしたいですね。