シンママナースの マリアンナ です。
先輩ナースがやる気をなくした救急搬送の話
救急外来での勤務中のお話。
救急車から電話がきた。
先輩ナースがその電話をとったあと、先輩ナースがため息混じりで言いました。
「今から救急搬送くるってよ」
救急車で運ばれてくるってのに、先輩のやる気のなさったら。
ぜんぜん緊張感がない。
正直看護師としてまだ経験の浅いわたしも、
さすがに「この先輩、やる気ないのかなー」とか思いました。
でもその理由もすぐにわかった。
今から救急車で患者が運ばれてくるってのに、先輩ナースはため息ついて無言でダラダラ救急患者受け入れの準備をしている。
顔だけみると相当怒ってるけど、何もしゃべらない。夜中の1時くらい。救急車は5分で到着すると。
救急車で運ばれてきたおばあちゃん。
とぼとぼ歩いて入ってきた。
救急隊員から申し送りがあった。
「口内炎が痛むそうです。」
わたし、もう一回聞き直した。
「何が痛いんですか?」
救急隊員は言いにくそうにリピート。
「口内炎です。」
聞き間違いではない様子。
救急搬送なので、血圧や脈拍をはかるけどもちろん何も問題はない。
口の中を見てみると、小さな口内炎がひとつ。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・。ち、ちいせぇ・・。
って内心思いながらドクターに報告。
ちなみにドクターも二回聞きなおしてきた。
「え、救急搬送??口内炎??」って。気持ちわかる。
おばあちゃんは、
「いやー、口がいたくってね、でも痛いし、痛み止めだけでもほしくって。
夜中だから薬局も空いてないでしょう?
タクシーも電話したんだけど、すぐこれないからっていうから。」
だって。
いや、わかるよ痛いの。
だって口内炎って痛いもん。
でも救急車は救命のためにあることも、
そのために救急救命士っていう資格があるとった人が、救急車に乗ってることも、
知っておいてほしかった。
タクシーとはちょっと違うんだ。
どうも彼女のなかで救急車はタクシーと同じ基準みたいな乗り物だったらしい。
自分が看護師だからか、救急車ってどういう風に認識されているんだろうっていうのが、よくわかってないだけかもしれないけど・・。
確実に言えるのは、救急車はタクシーでないんだよ、おばあちゃん。
うーん、
救急車で心肺停止で運ばれてくる人もいれば、
口内炎の痛みで運ばれてくる人もいる。
医療現場のカオスさにカルチャーショック。
それ救急車、いる?
救急病院に救急車で運ばれてく患者のうち、
「本当に救急車必要だった?」って言いたくなるケースが、3〜4割ある。
今までわたしが疑問に思った救急搬送。
- いぼ痔が痛い
- リストカットしてみたら、やっぱり痛いのでなおしてほしい
- 便秘がしんどい
- 口内炎が痛い
- アルコール中毒にも至らない飲み過ぎ
- 意識がないって搬送されたけど、睡眠薬飲んでて実はただの熟睡
- 寂しいから入院したい
- ごはんがでてくるから入院したい
- しんどいから点滴だけしてほしい
などなど。他にもあるけど。
年齢層はバラバラ。いろんな人がいるもんだ。
えー、
もう痛み止め常備しといて。
それか朝まで冷やしといて。
っていうかお願い、急性アルコール中毒ならわかるけど、その前に救急車呼ぶほどお酒飲みすぎないで。
便秘薬、買っといてくれー。
ご飯出てくるから入院したいとか。
ここはホテルなのかー。無料タクシーとホテル化してきている救急車と救急病院。
うおー。っていうか治療必要じゃないのに入院ってどうなの。
国民保険料とか生活保護とか、みんなが払ってる税金とか保険料で成り立ってるのに、
このままでいいのかー。そんなことに乱用していいのかー。
健康で働いて税金とか納めてる真面目なひと達が、やたら損してみえて仕方ない。
どうなっているんだ日本。
おっと、看護師の本音失礼しました。
救急車がいるのかいらないのか、の判断ってたしかに難しいかなーとかも思いますよ。
でも「寂しい」とか「ごはんがでるから」とかいうのは、もう救命とは関係ないって思ってしまう。
先輩ナースの機嫌が悪くなる気持ちもわかりました。
もっと広い器を持たないとって思う反面、
医療現場ってこのままでいいんだろうか。
って救急車の使い方を問題視してしまう私がいる。
日本の医療は保険制度があるし、生活保護制度があるから、
ある程度どんなひとでも医療をうけれる環境にあります。
でも、救急車はあくまで「命の危機」にあるひとのために、
使われるべきじゃないのかー!って不満に感じてしまう。
救急車が本当に必要なひとって、だれなの?
救急車がこの口内炎おばあちゃんに使われている間、
もし本当に救急車が必要なひとが救急車を使えなかったら、
救急車も救急病院も何のためにあるのかわからなくなる。
一度、アルコール中毒の女性が救急車で運ばれてきたときの話。
その女性が思いのほか「今から死んでやるー!」つって、暴れ出した。
メンタル不安定だったんだろうね。
危険な医薬品や注射針、酸素(引火したら爆発する)、メスとかいろいろ危険なものがある救急外来なので、4人しかいない医者と看護師で抑えるのに必死。
自傷他害(自分を傷つけたり、他者を傷つけたら大ごとなので)の恐れがあるし、危ないから。
同時に救急外来に、体調不良のおじいさんが診察にきた。
でもその女性がすぐ落ち着きそうになくて、看護師と医者の手があかない。
10分くらいだったか、暴れまくってた女性は落ち着いてきて、
すぐ診察をうけにきたおじいさんのところへいった看護師。
そこでおじいさんの様子がおかしいことに気づく。
おじいさん、実は重症患者だったらしい。
急いで治療を施したけど、間に合わず。
おじいさんは結局息を引き取ることになった。
あと5分早く対応できたら。
その場にいた看護師と医者はかなり落ち込んで、かなり自分たちを責めていた。
その気持ちもわからないでもない。
おじいさんの家族は
「仕方ないし、気にしないでください」
って言ってくれてたらしいけど、
本心は家族を失って心を痛めていただろう。
おじいさん、元気だったらもしかしたら孫の顔をみたり、
趣味に時間をつかったり、
今頃もっと有意義に過ごせてたかもしれない。
控えめな人だったんだろうか。
大声をあげて暴れる女性を看護師と医者が必死になっておさえる様子を知ってか知らずか、
待合室でじっと診察に呼ばれるのを待っていてくれたらしい。
本当に救急車が必要なひとは誰か。
平等なようで平等でない日本の医療制度のあり方に、疑問を感じる今日この頃。
救急車の有料化は必要なのか
2011年に橋下徹元大阪市長が「救急車有料化」を提案していた。
2015年、国の財政制度等審議会で救急車を一部有料化にすることが提案されている。
これに医師の9割が賛成。医者だけじゃなくて、看護師含む医療従事者は多くが思ってることだろう。
軽傷患者による救急車の乱用が問題視されているらしい。
それは医療現場にいても、たしかに感じ取る部分はある。
救急外来がある医療現場では、正直口内炎とかいぼ痔が痛いとか、
「え、救急車、いるそれ!?」って聞きたくなるような救急搬送が結構あるので、
医療側からしたら
「有料化にしてしまえー!」
「救急車乱用するんじゃねー!」
っていうのが本音だ。
だけど、
救急車が有料化されることで、相対的貧困にあるひとが、
本当に医療が必要な状況なのに「救急車利用をためらう原因」になってしまいやしないだろうか。
なんて心配もある。
生活保護とかだと医療が保証されるけどさ、
生活保護を受けるほどじゃないけど収入が少ない家庭や、
収入が多いようにみえても扶養家族が多い家庭とかだと、
相対的な貧困状態になっていることがある。
日本では6人に1人が貧困にあるらしい。
そういったひとたちが、医療サービスを受けにくくなってしまわないだろうか。
ときどき状態がすごく重症化するまで診察を受けないひとがいる。
「なんでここまでほっておいたの!!」って聞いたら、
「お金がない」とか「家族に迷惑をかけたくない」とか「仕事を休めない」とか、
いろんな理由をみんな言うんだけど。
本当に手の施しようがないくらいまで、
病気が悪化してしまってから救急車で運ばれてきても、
医者や看護師がしてあげられることに制限がでてくる。
一時期生活保護の不正受給が話題になった時くらいだったかな。
不正受給の問題視と同時に、生活保護を受けるに値するひとたちが生活保護受給を断られ、
餓死したり、一家心中する社会問題が話題になったことがあった。
救急車有料化には賛成だけど、
平均年収も伸び悩んで、日本人の6人に1人が貧困っていわれる時代。
もし有料化されるなら、医療サービスが本当に必要なひとたちへ、行き渡るようにしっかり協議してほしい。
参考URL:救急車が有料に?-救急搬送の現状と課題