陰部洗浄の手順と観察項目【看護技術】



シンママナースの マリアンナ です。

 

看護のなかでもデイリーに行われるケアのひとつ「陰部洗浄」。

実は療養では陰部ってとても大切なんです。

寝たきりや術後の患者さんなどは、おしものケアを自分ですることができません。

汚物で不潔になりやすく、清潔を保てないと尿路感染や褥瘡の原因になってしまうこともあるし、下痢が続く患者などは陰部に皮膚トラブルを抱えることもあります。

 

そういったおしものトラブルを予防する意味でも、陰部洗浄はとても大切なデイリーケアです。

この記事では、陰部洗浄の看護技術について解説しています。

 



陰部洗浄の目的

 

陰部洗浄の目的は主に以下の3つです。

  • 陰部の清潔を保つことで、尿路感染を予防する
  • 患者の不快感を消失させる
  • 陰部の皮膚トラブルを予防・早期発見する

 



必要物品

陰部洗浄に必要な物品は以下のようなものがあげられます。

  • タオルケット
  • バスタオル3枚
  • 便器
  • 便器カバー
  • 防水シーツ
  • ディスポーザブル手袋
  • 陰部用石鹸
  • ガーゼ6枚
  • 陰部清拭用タオル
  • 清拭用タオル
  • 微温湯の入った陰部洗浄容器

 

在宅や病院等、環境によって必要な物品は変わりますが、基本的に

  • 洗う物品
  • 水漏れを予防する防水物品
  • 患者のプライバシーをまもる物品

が基本的に必要になります。

 

洗浄に使用することが出来る容器もいろいろあって、

ピッチャー

紙コップ

食器用洗剤の容器

シャワーボトル

ノズル型容器

などがあります。在宅など物資が乏しい環境のとき、代用として利用することができますね。

 

また、陰部は粘膜があり、温度に敏感な場所でもあります。冷たい水や濡れタオルだと、患者の不快感の原因にもなるので、保温されたお湯などを使うようにしましょう。

 



技術手順

基本的な陰部洗浄の看護技術を紹介します。

基本的な陰部洗浄の流れ

  1. 患者の陰部洗浄についての説明をする
  2. 同意を得たらカーテンなどをしてプライバシー保護を行う
  3. 必要物品を準備する
  4. 患者の上体を少し上げ、膝を曲げる
  5. 寝衣の裾を広げて折り返し、腰を持ち上げて腰部までたくし上げる
  6. 股に防水シーツとバスタオルを重ねて敷く
  7. 下着などを取る
  8. タオルケットを使い一方の下肢を覆い、それ以外の部分をバスタオルで覆う
  9. 手袋を着用する
  10. 便器を肛門部下に設置をする
  11. 恥骨上縁から両鼠径部に陰部清拭用タオルを当てる
  12. 膝を曲げて、立てた状態の患者の両下肢を広げる
  13. 皮膚や粘膜の状態を一度観察して、湯温を確認して陰部にお湯をかける
  14. ガーゼに石鹸を付けて泡を立てる
  15. 陰部を石鹸の付けたガーゼで洗う ※男性と女性の違いを下記で解説しています
  16. 恥骨上縁部に当てていた陰部清拭用タオルで陰部、股部の水分を拭き取る
  17. 腰を上げて便器を外す
  18. 便器カバーを付ける
  19. 手袋を外す
  20. 片方の下肢にかけておいたタオルケットを広げて下肢全体にかける
  21. 他方の下肢にかけておいたバスタオルを外す
  22. 下着等をつける
  23. 防水シーツ、バスタオルを取り除く
  24. 寝衣を整える
  25. タオルケットを取り除く
  26. 寝具、体位をきちんと整える
  27. 患者が横向きになっているベッドの上体の高さを確認して、元に戻す
  28. ベッド周囲の環境を整える
  29. 使用物品を片づけて処分する
  30. 陰部洗浄後の観察を行い記録する

 

男性の場合

  1. 男性の場合は陰茎を手で持ち、もう一方の手を使い「陰茎」「亀頭」「尿道口」「包皮」を洗う
  2. 次に陰嚢を洗い、裏側もきちんと洗う
  3. 陰部洗浄機を使い「陰茎」「亀頭」「尿道口」「包皮」に湯をかけ石鹸を洗い流す
  4. 陰嚢、恥丘、鼠径部にお湯をかけて石鹸を十分に落とす

 

女性の場合

  1. 片手でガーゼを持ち、逆の手で大陰唇を開く
  2. 「尿道口」「小陰唇」を上から下に向けて中央から両端に石鹸を付ける
  3. 陰部洗浄機を片手で持ち、逆の手で大陰唇を開く
  4. 「尿道口」「小陰唇」を上から下に向けて中央から両端に湯をかけて石鹸を落とす
  5. 陰嚢、恥丘、鼠径部にお湯をかけて石鹸を十分に落とす

 

 

陰部は上から下へ洗うのが基本?

どうして陰部は上から下に洗うの?

肛門周辺には大腸菌等の菌類が存在します。

もし肛門を洗ってから尿道を洗うと、尿路感染の原因になることもあります。

そのため陰部洗浄のときは、尿路感染などを予防するために上から下に向かって洗うのが基本です。

 

 

 



陰部洗浄の注意点・補足

  • 陰部は特に皮膚や粘膜が刺激に弱いため、患者の陰部を高温や物理的刺激・化学的刺激で傷つけないように注意をする
  • 湯をかける前に看護者の前腕内側で湯の温度を確認する。問題が無ければ患者の陰部に湯をかけて温度を確認してもらう
  • 便器の代わりに紙おむつを使用しても良い
  • 保湿とプライバシーに注意をする
  • 包皮と皮膚はずらして洗うように注意をする
  • 皮膚や粘膜が重なっている部分は汚れが貯まりやすいため、入念に洗浄する
  • 清潔を保つため、1日1回程度は陰部洗浄を行う
  • 紙おむつを使用している場合、肛門周囲以外に便が付着している可能性がある。そのため陰部への感染、褥瘡の原因にもなるので注意をする
  • 患者には通常の石鹸やボディソープでは洗浄力が強すぎる場合があるので、患者に応じてデリケートゾーン専用の石鹸か洗浄液か確認を行い使用する
  • 患者のプライバシーや羞恥心に十分に配慮を行う。そしてカーテンやスクリーンの準備を行い、必要ではない露出を避ける
  • 陰部を洗浄するときは患者に声をかけながら行う
  • 陰部は皮膚の中でも汚れが溜まりやすい部分のため、洗浄をする際は皮膚を伸ばし丁寧に洗浄を行う

 



陰部洗浄の観察項目

 

  • 皮膚や粘膜の上体確認
  • 陰部の色、乾燥、炎症やただれなどの有無の確認
  • 分泌物の性状や量の有無を確認
  • 汚れや臭いの残留の有無
  • 下痢や失禁の有無を確認
  • 不快感の有無を確認

 



陰部洗浄の効果

皮膚を尿から守る効果がある

おむつをした状態で排尿を行った場合、尿が皮膚に常に当たっているのでおむつの交換を行う際に尿を陰部から洗い流す事により陰部を清潔に保つ効果がある。尿が皮膚に長時間当たる事により、皮膚は弱酸性のためアルカリ性や酸性である尿を長時間当ててしまうと皮膚が負けてしまい炎症を起こす恐れがある。そのため尿をきちんと湯を使い洗い落とさなければいけない。

 

快適に過ごす事が出来る

陰部洗浄を行うのと行わないのでは患者の快適具合もかなり異なる。患者の中で糖尿病を発病している場合、尿に糖分が多く含まれているので股周辺のベタつきがある。その結果として不快になる事が多い。

 

 

 



引用参考文献

看護学生にも必須である看護技術「陰部洗浄」はじめ、ベッドメーキング、体位変換、移動介助、口腔ケア、入浴・清拭、足浴・手浴、洗髪など基礎看護技術を網羅してくれています。

看護師・看護学生ならもっておきたい1冊。