ストマとは~ストマ造設時の看護とストーマ交換方法~



シンママナースの マリアンナ です。

ストマ(人工肛門)とは何か、ストマの概要から、ストマの観察項目、ストマ造設に関する看護、ストマ交換の方法などを紹介しています。



ストマとは(ストーマ:人工肛門とは)

ストマとは医学的理由によって、消化管や尿路を人為的に体外に誘導して造設した排泄口のことです。

イメージ画像はこんな感じ。

スト―マの画像

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スト―マとパウチ装着

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ストマはいくつかの種類に分類することが出来ます。

①期間による分類

  • 永久的ストマ:今後閉鎖する予定のないストマ。単孔式ストマであることが多い。
  • 一時的ストマ:治療目的の達成後に閉鎖することを予定して造られたストマ。結果的に閉じられない可能性もある。

②開口部による分類

  • 単孔式ストマ:孔が一つのストマ。マイルズ手術やハルトマン手術ではこのストマになる。
  • 双孔式ストマ:孔が二つのストマ。一時的ストマの症例や、がん性腸閉塞でストマの口側と肛門側の腸管の減圧が必要な症例で造られることが多い。

③造設臓器による分類

  • 小腸ストマ:空腸、回腸を使用し造設されたストマ。イレオストミーともいう。
  • 結腸ストマ:盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を使用し造設されたストマ。コロストミーともいう。

 



結腸ストマ、小腸ストマの特徴

小腸ストマ

小腸ストマは結腸を介さないため、水様便になりやすく、排泄量も多い傾向にあります。そのため脱水や電解質バランスの不均衡に注意が必要です。消化液が多く含まれるため、排泄物がアルカリ性(pH7~8)であり、皮膚刺激性が強いため、皮膚トラブルに注意が必要になります。

結腸ストマ

結腸ストマは造設されたストマの部位により、便性状が異なります。ストマの部位が小腸に近いと水様~泥状便が、肛門に近付くほど泥状~有形便が出やすいです。便性状が固まりやすい分、排泄量も少なくなる。pHも6~7と小腸ストマに比べると低くなります。

 



ストマの看護介入について:術前ケア

ストマ造設予定の患者さんに対しては、手術前からストマについての情報提供や、精神面への配慮など看護師の介入が必要です。

①インフォームド・コンセントの内容、理解度の確認を行う。

手術までの間に、患者さんは医師からインフォームド・コンセントを受けます。インフォームド・コンセントで、病名や病気の進行度、術式やストマの造設の必要性、術後の合併症などについて、医師から一通りの説明を受けますが、説明の後にその内容をきちんと理解出来ているか確認する必要があります。インフォームド・コンセントは患者さんや家族にとって衝撃的な内容となるため、場合によっては動揺して医師からの説明が耳に入っていなかったり、内容自体が難しく理解できていない可能性もあります。なるべく看護師もインフォームド・コンセントに同席し、患者さんの反応を観察するようにしましょう。インフォームド・コンセントの後に時間をとって患者さんの理解度を確認し、看護師の立場の範囲で分かりやすく医師の説明を補足したり、必要な場合は医師に再度説明を依頼するようにしましょう。

 

②ストマについての情報提供を行う。

医師からストマについての説明を受けた後でも、患者さんは実際のストマ管理について想像が出来ていない場合があります。またストマ管理について疑問や不安を抱く方も多いです。術前から実際にストマ装具を提示して、装具の説明や装着方法、スキンケアの方法や交換の頻度など、ストマ管理についてあらかじめ説明しておくと、術後に混乱が少なく、患者さんも受け入れやすくなります。情報提供を行う中で、患者さんが不安に思っている事を解決し、精神的な支援を行っていきます。

 

③ストマサイトマーキングを行う。

ストマサイトマーキングとは、術前に腹部のストマを造設する位置を選択し、その部位に印をつけておく処置のことを言います。ストマの位置はストマ合併症やストマ管理などに大きく影響を及ぼします。そのため、ストマを術直後からその後一生涯にわたり、良好に管理するためにストマサイトマーキングは重要な役割を担っています。ストマサイトマーキングは以下の原則に従って行います。

  1. 腹直筋を貫通させる
  2. あらゆる体位(仰臥位、座位、立位、前屈位)をとって、しわ、瘢痕。骨突起、臍を避ける
  3. 座位で患者自身が見ることが出来る位置
  4. ストマ周囲平面を確保できる位置

以上4つの項目に当てはまる位置で、術式に合った場所を選びマーキングをします。

 



術前ケア時の注意点

ストマについて受け入れらていない方や、否定的な考えを持っている方は、自分がストマを造設することについて他人に知られたくないと考える患者さんもいます。そのためストマについての情報提供や、患者さんの思いを聞くときはなるべく個室を用意し、話しやすい環境を提供しましょう。

 



ストマケアの必要性

ストマはそのままでは排泄物が垂れ流しの状態になってしまいます。そのため、排泄物を溜めておく袋をストマに装着し、排泄物を管理する必要があります。術直後の患者さんはストマについて知識が乏しかったり、自分のストマをまだ受け入れられていない方も多くいます。ストマケアを行いながら、ストマについての情報提供を行い、退院に向けて自分で(難しい場合は家族などの場合もある)ストマ交換の手技を確立出来るよう、看護師が援助していく必要があります。またストマは患者さんによって形や大きさが異なります。患者さん自身の皮膚状態やストマ周囲の腹壁の状態もその人によって異なります。そのためストマ装具については、その患者さん一人一人に合った装具を選択する必要があります。その装具を見極め、その患者さんに合ったストマケアを提供することも看護師の役割だと考えられます。

 



ストマ交換の方法

実際のストマ交換の方法について説明します。

①必要物品を用意する。ストマ交換の必要物品を用意しましょう。

  • 洗浄用の水・洗浄用の石鹸・洗面器
  • 不織布(ネオガーゼなど)・はさみ・ノギス(ものさし)
  • ストマ装具(必要な場合アクセサリーも)
  • ビニール袋
  • 必要時剥離剤や被膜剤なども準備しておく
  • 自分自身も感染予防としてマスク、エプロン、手袋を装着しておく。

 

②環境を整える。

ストマ交換の間は患者さんは腹部を露出させる必要があります。患者さんが寒く感じることのないよう、部屋の温度などを調節しましょう。またストマは排泄物が出る場所であり、他人に見られたくないと感じる患者さんが多いです。患者さんの羞恥心に配慮し、環境を整えるようにしましょう。

 

③ストマが見えるように服を捲る。

ストマ交換の間に排泄物で服が汚れることのないよう、服をしっかりと捲り上げる、洗濯バサミなどで固定するなど、その方に合わせた方法で固定しておきましょう。

 

④装着しているストマ装具を剥がす。

  • 石鹸を使用する場合ガーゼに石鹸をつけ、しっかりと泡立てます。面板貼付部と皮膚の間にガーゼを当て、徐々に装具を剥がしていきます。
  • 剥離剤を使用する場合液体タイプの剥離剤を使用する場合は、面板貼付部と皮膚の間に剥離剤を滴下、ゆっくりと剥がすを繰り返します。
  • ワイプタイプの剥離剤を使用する場合は、面板貼付部と皮膚の間に剥離剤を使用して優しく剥がします。決して無理に引っ張らないように注意しましょう。
ストマをはがす

 

 

⑤ストマ周囲の汚れを落とす。

しっかりと石鹸を泡立てたガーゼで、皮膚やストマの周囲を優しく洗います。排泄物や皮膚保護剤などの汚れが残らないよう注意しましょう。

 

⑥石鹸を洗い流す。

乾いたガーゼでストマ周囲の石鹸を拭き取ります。その後ストマ周囲を水で流し、しっかりと洗い流しましょう。その後乾いたガーゼで濡れた皮膚を拭き取ります。

 

ストマを洗う

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⑦ストマおよび周囲の皮膚を観察する。

以下の観察項目に沿って観察を行います。

 

  • 1)ストマ粘膜:

粘膜の色調、出血、浮腫、壊死の有無、ストマサイズの大きさ、形状、排泄口の位置、排泄口の向き→ストマは腸粘膜のため、血液循環の状態が色調に反映されます。血流が良好であれば赤色のストマになります(下図”正常なストマの色の写真”参照)。色調が薄すぎる、赤暗く変色しているなどの場合は血流に異常がある可能性があります。

正常なストマの色

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  • 2)ストマ粘膜と皮膚接合部:

離開、出血、浸出液、排膿の有無→ストマ粘膜と皮膚接合部は術後の創部になっています。創部が離開していないか、局所感染を起こしていないか観察する必要があります。

 

  • 3)ストマ周囲皮膚:

ストマ近接部および、皮膚保護剤貼付部の発赤、びらん、潰瘍、掻痒感、浸出液、疼痛の有無と程度→ストマ近接部とはストマ粘膜皮膚接合部から1cmの皮膚を指します。排泄物や溶解した皮膚保護剤の影響を受けやすい部位になるため、特に皮膚トラブルが起こりやすい部位になります。皮膚保護剤貼付部に発赤などが見られる場合は、皮膚保護剤自体が原因で皮膚が荒れている可能性が考えられます。皮膚保護剤の変更を検討する必要があります。

 

  • 4)排泄物:

量、性状、排ガスの有無→消化管機能の回復状態、異常を知るために観察が必要です。

 

  • 5)全身状態:

発汗、発熱、腹壁の状態→全身に発汗が多いと、皮膚保護剤が溶けやすく、装具交換頻度を短くするなど検討が必要になります。またストマ周囲の腹壁にしわやくぼみがあるのかを観察することで、適切な装具を選ぶ手がかりになります。

 

  • 6)精神状態:

表情や言動→ストマに対して否定的な言動の有無、ストマ交換に対する手技獲得の意欲の有無など、患者さん自身がストマに対してどのように考えているのか、前向きに手技を確立しようと出来ているのかを観察し、それに合わせた声掛けを行う必要があります。

 

⑧ストマサイズを測定する。

ストマサイズを測定する場合はノギスと呼ばれる専用のものさしを使用して測定します。ストマサイズは縦、横、高さを測定します。縦と横の長さは、ストマ基部(ストマの根元の部分)の長さを測定します。高さは皮膚からストマの排泄口までの長さを測ります。(ストマの一番高い位置までの長さではないので注意が必要です。)双孔式ストマの場合は口側、肛門側どちらの大きさも測定する必要があります。

 

⑨ストマ面板を準備する。

測定したストマサイズより、少し大きめに面板をカットします(腸の蠕動運動により腸管が動くため、面板との接触により出血の可能性があるため)。一度面板をストマに当てて、大きさが適当なサイズになっているか確認します。ストマ袋のすそはあらかじめ閉じておくようにしましょう。

ストマのサイズカット

⑩ストマ面板を貼付する。

面板裏側のフィルムを剥がし、ストマ全体が装具内におさまっていることを確認し、皮膚に貼付します。貼付したらストマ近接部をしっかりと押さえ、面板と皮膚がしっかりと密着するようにします。

 

ストーマの貼り付け

 

張り付けられたら便が漏れないように下端を折り曲げて固定しましょう。

ストマ交換

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⑪ストマ交換の詳細を記録しておく。

次回ストマ交換をする時に参考にするため、皮膚トラブルの有無や交換方法などは細かく記録しておく。

 

ストーマ交換方法の動画が以下サイトに掲載されていて、わかりやすくまとめられています。(上記掲載の画像引用元です)参考にどうぞ。

https://www.kango-roo.com/sn/m/view/187

 



ストマ交換時の注意点

  • 最終的には患者さん自身にストマ交換の手技を確立してもらう必要があります。そのため、術直後は看護師が全面的にストマ交換を行いますが、徐々に患者さん自身にも交換手技を覚えてもらうようにしましょう。退院が近くなってきたら、患者さん主体でストマ交換を行ってもらい、看護師は交換手技に問題がないか見守る程度にしましょう。
  • 患者さんが高齢の場合や手先が不自由な場合は、家族に手伝ってもらう必要があります。家族の援助が必要な場合、家族にもストマケアに立ち会ってもらうようにしましょう。