シンママナースの マリアンナ です。
人間が一番汗をかく部位は「額」とも言われています。
年齢とともに発汗量は減っていきますが、そのなかでも「頭部」だけは年をとっても発汗量が減らないそう。
参考:汗の基礎知識 より
つまり、寝たきりになっても、高齢になっても、頭だけはよく汗をかく部位であるということ。毛も多く保温効果も高い部位でもあるため、掻痒感などを伴いやすい場所でもありますが、寝たきりや高齢、病気で体動制限がある場合、頭や額に汗をかいても自分で「洗う」ことができません。不衛生による頭部の不快感は、療養での安静を妨げます。
自分で保清を保てない患者に洗髪をすることで、これらのトラブルを起こさず、患者は安心して療養生活を送ることが出来ます。
この記事では、看護ケアのなかでもよく行われる「洗髪」について解説していきます。
看護技術:洗髪の適応と目的
洗髪の適応
- 寝たきりや術後、麻痺等が原因で、自分で保清を行えない患者
洗髪の目的
- 頭髪や頭皮の清潔を保ち、皮膚トラブルや掻痒感を予防する
- 患者が掻痒感や不快感などを取り除き、爽快感を得ることができる
看護技術:洗髪に必要な準備物品
「洗髪」の方法は、
- 洗髪車を使う場合
- ケリーパットを使う場合
- 吸水パットを使う場合
- ドライシャンプーを使用する場合
4パターンあります。
4の「ドライシャンプーを使用する場合」以外は、お湯を使って洗髪し、ドライシャンプーは頭部に傷がある、湯が使えない環境にある場合等が原因で、湯をかけることができない場合に使用します。
湯を使う場合の準備物品(洗髪車・ケリーパット・吸水パット)
共通して準備するもの
- シャンプー・リンス
- タオル1枚
- バスタオル2枚
- 防水布(なければ使い捨てエプロンでも可)
- シャンプー用ケープ
- 顔を覆うガーゼ
- 耳栓(青梅綿)
- くし・ドライヤー
- ポジショニング用クッション
ケリーパット、吸水パット使用で洗髪する場合、準備するもの
※洗髪車使用の場合、自動で温度調整された湯と、汚水貯留庫がついているので、以下は必要ありません。
- 水温計
- ケリーパットもしくは吸水パット
- 汚水用バケツ
- シャンプーボトル(必要に応じた個数を準備)
- 湯をいれたバケツ
- (ケリーパットのみ)汚水用バケツ
湯を使う場合の準備物品(ドライシャンプーの場合)
- ドライシャンプー
- タオル
- くし・ドライシャンプー
看護技術:洗髪の手順
患者の準備
洗髪するために、患者の準備を行います。
- 患者に洗髪車で頭を洗うことを説明・同意を得る。
- 室温が22~24度前後に保てるよう調整する。
- 洗髪できるよう場所を確保し、環境整備を行う。
- カーテンを閉め、プライバシー配慮を行う。
- (洗髪車の場合)ヘッドボードを外して洗髪車を配置し、ベッド最上部へ患者の頭部が位置するよう仰臥位にする。
- (ケリーパットの場合)片手で患者頭部を支え、防水シーツとバスタオル、ケリーパットを敷く。
- (ケリーパットの場合)ケリーパット排水部を汚水バケツにつなげ、汚水がながれるよう調整する。
- (吸水パットの場合)頭部の下に防水シーツ→タオル→吸水パットの順でしいておく。
- 洗髪しやすいよう、折りたたんだタオルなどで肩枕にする。
- 体位が楽になるよう、膝のしたにポジショニング用クッションを入れる。
- 大きめのバスタオルか、布団をかけ保温とプライバシーに努める。
- 襟元をあけ、服が濡れないようタオルで包み、そのうえからシャンプー用ケープをかける。
- 患者の顔が濡れないようにガーゼをかける。
洗髪
- 少しずつ頭部に湯をかけ、患者に温度を確認する。
- 髪・頭皮全体が湿るよう、ゆっくり湯をかける。
- シャンプーを手にとり、頭部が振動しないように片手で頭部を支えながら、泡立てて頭皮全体を洗う。
- 洗い残しや掻痒感がないか患者に確認する。
- 洗い終わったら、泡を絞り出してからすすぐ。
洗髪後のケア
- ケリーパット・シャンプー用ケープ、洗髪車を取り除いて、頭部をタオルで保護する。
- 襟ぐりを整えねぎらいの言葉をかける。
- タオルドライし、ある程度の水分が取れたらくしで整え、ドライヤーで髪を乾かす。
- 片づけを行い、患者に洗髪が終了したことを伝える。
看護技術:洗髪の手順「ドライシャンプーを使う場合」
ドライシャンプーを行う場合、ドライシャンプーを製造するメーカーによって使い方は異なりますが、たいていの場合以下の使い方でOKです。
- 可能であれば患者を座位にする。
- 肩周りをタオルで覆う。
- ドライシャンプーをつけ、頭皮を清拭する。
- 蒸しタオルで頭皮の汚れをふき取る。
- くしとドライヤーで頭部全体を乾かし整える。
大がかりにお湯を使えない環境で洗髪したい場合
在宅や介護施設等、大がかりな洗髪車を使用できなかったり、ケリーパットを使うスペースが十分確保できないこともあります。吸水力が強い吸水シーツなどは高額なものあり、日常的に在宅などで使用できないことも。
おむつと尿パットで最小スペースで洗髪
その場合、患者に抵抗がなければ市販の「おむつ」や「尿取りパット」がとても重宝します。
特におむつと夜用の尿取りパッドの吸水力は強くて、早い。それなりに髪が長い女性でも、夜用の尿取りパットとおむつ1つずつくらいで、十分洗髪が行えます。
洗浄するときは、湯を流す前に一度髪を絞ることで、泡やリンスを流すことができ、湯を節約できるため、何度を湯を汲みに行ったり、大量に湯を準備する必要もありません。
コストも数十円程度なので、経済的。わたしは臨床でよく尿取りパットを使って洗髪をしています。
忙しい看護業務のなか、あの患者さんの頭を洗いたいけど、あと10分足りない・・ってとき、すごく重宝します。洗髪車とかだと準備とか体位を移動させるとかが大変ですが、これは準備に時間がかからないので、看護師ひとりでもさっとできます。パットを捨てるだけなので、かたずけ時間もカットできる。コツをつかむとちっさいシャワーボトル2本くらいで、かなりキレイに洗えるようになる。
すごい楽です。わたしも、患者さんも(笑)。
ただ、なかには下用のおむつを使って頭を洗うなんて、っていう患者さん、患者家族さんもいるので、必ず本人の意向や家族の意見なども聞いたうえでのケアになるので、その辺は要注意です。
手作りケリーパットでさっと洗髪
おむつや尿パットに抵抗がある方でも、少しスペースがあるなら、手作りケリーパットで洗髪することもできます。
作り方は簡単で、ケリーパットの空気が入っている円状の部分を、タオルで形成し、それをゴミ袋で包むだけです。
汚水がベッドサイドに流れるように調整し、そこにバケツをおけば、簡易版のケリーパットのできあがりです。
しっかり防水することだけを意識すれば、あとあと患者さんに大きな負担もかかりません。
以上、洗髪の看護技術の紹介でした。参考になれれば幸いです。