痰吸引:上手く吸引する方法とコツ



シンママナースの マリアンナ です。

なかなか一回で痰吸引ができない。痰吸引ってコツさえつかめば、たいてい一回でヒットさせて痰吸引をできるようになります。この記事では痰吸引時のコツを解説しています。喀痰吸引のコツを知り、患者負担の少ない喀痰吸引を目指しましょう。

 

喀痰吸引はすごい苦痛!できるだけ一回で取りきりたいところ

看護師とか介護士なら、喀痰吸引をすることが多々あります。

喀痰吸引をされる側になったことってありますか?わたし、看護学生のとき「患者さんの苦痛を知る」っていうテーマで、学生同士でマーゲンチューブを挿入し合うっていう、よくわからない授業があったんですよ。実際友達とマーゲンチューブを入れあいっこしたんですけど、本当に「二度としたくない」って本気で思うほど、すんごい苦痛でした。

誤嚥性肺炎肺炎とか、心不全で定期的な喀痰吸引が必要な患者さんっていてるけど、あれって本当に辛いと思うんですよ。あんな苦痛を1時間おき、2時間おきにされるって。わたしなら耐えられない。わたしは看護学校でチューブを挿入される苦痛を味わっていたので、患者の喀痰吸引には細心の注意を払っていますが、やっぱりときどきすごく激しくチューブを動かしたり、勢いよくチューブを挿入したりする看護師さんっているんですよね。やられた経験がないから、しかたないよなっておもいながら。

でもやっぱり、激しくサクションを突っ込むひとにかぎって、やっぱり結構痰がとれないっていうことも多くて。患者さんも苦痛だし、看護師も良い気分しないだろうし。てなわけで、この記事では、私が知っている喀痰吸引が上手にできるコツを紹介していこうと思います。

喀痰吸引で上手に痰が引けない原因

たん吸引で痰がうまくひけない、その原因はいくつかにわけられます。

気道が狭くなっている

患者の首が前屈していたり、吸引チューブを無理やり入れようとして痛みを感じた時に患者が気道に力をいれたりして、気道がせまくなっていることがあります。そもそも気道の太さ自体が成人だと1.5cm前後なので、そこからさらに気道がせまくなるような要因があれば、吸引チューブはなおさら入りにくい。

痰が吸引チューブがとどくところまであがってきていない

ドレナージがしっかりできていなくて、痰が吸引チューブの届くところまで届いていないことがあります。基本吸引チューブで痰がひける範囲は、主気管支までといわれているので、奥まで吸引チューブで挿入できたとしても、主気管支より下に痰がいっぱいたまっているときは、なかなか吸いきれないことになります。

喀痰吸引がうまくいくコツ

効率的に一回の吸引でうまく痰を回収するには、以下のことをチャレンジするようにしてください。

体位ドレナージ

寝たきり患者さんとかだと、結構体位ドレナージで痰が一気にとれることがあります。呼吸筋の弱っているひとにスクイージングも有効。どうせ痰吸引するならそのタイミングを、体交したとき、トイレ移動したとき、入浴後などにとりいれてあげるようにしましょう。何もしていないときより結構痰がとれるようになったりします。

口腔ケアと湿潤ケア

たん吸引をするときはあえて口腔ケアをしたあとにしてみましょう。開口呼吸気味で口腔内乾燥が強いひとなら、しっかり湿潤を意識してください。口腔ケアをしていないときと比べて、結構多く痰がひけるようになります。

鼻から痰吸引するなら吸引チューブは「直角」に挿入

たん吸引の研修とか看護技術とかでも習うんですが、吸引チューブを挿入するときは基本的に顔に対して直角にいれるほうがスムーズに入ります。解剖学の原理から考えても、鼻のあな(外鼻孔)から咽頭までの通り道って顔に対して直角なつくりなんですよね。

言葉にしたら難しいので、以下の動画を見てみてください。2分56秒からのところ。

吸引チューブがしっかり入っている角度って、顔に対してほぼ直角になってるでしょ?

痰吸引

鼻のあなをよく覗くと、外鼻孔の入り口が見えたりします。その穴に対して直角にサクションチューブをゆっくりいれると、ひかかるところがなく咽頭までチューブをすすめやすくなります。

顔に向かって真上方向にチューブを挿入したりするひとがいますが、そうすると上鼻甲介あたりでチューブがつかかって、粘膜を傷つけてしまうこともあるので、チューブの挿入角度はすごく大事

コツは、ちょっとたとえが悪いけど、チューブを挿入する側の鼻のあなを、ちょっと豚鼻にするように軽くひきあげて、外鼻孔に直角に挿入するようにしたら、きれいに吸引チューブが入るようになります。自分のかたっぽの鼻のあなを軽くあげて豚鼻ポーズしてみてください。呼吸しやすくなるから。

吸引チューブはそーっといれる

 

吸引チューブを挿入していくときの速度はできるだけゆっくり、かつチューブが患者に極力触れないように奥まで挿入していきます。これ、スムーズにたん吸引するためには、すっごく大事なコツです。

っていうのも、吸引チューブを挿入する際、患者の粘膜や咽頭反射が起こる部位に触れると患者は苦痛で頸部に力をいれて、気管をせまくしてしまいます。そうなると吸引チューブ自体を挿入しずらくなって、結局痰がたまっているところまで吸引チューブを挿入できなくなります。そうなると、結局患者さんにとって苦痛が伴う上に、肝心な痰は吸引できていないっていう、元も子もないことになってしまうんです。結構、たん吸引がうまくいかない看護師さんをみてると、ここでつまづいているひとがいます。

患者に苦痛なく処置を行う技術は、処置をスムーズに行うためにも重要。吸引チューブを挿入するときは、患者さんが吸引チューブに抵抗を感じないくらい、吸引チューブはそーっと入れてください。

 

枕を外して頭部後屈

看護技術の基礎の基礎かもしれませんが、たん吸引するときはあご挙上して、気道をひろくするのは基本です。上を向かせるってことですね。やっぱり慣れてくると、枕をした状態の患者さんが下向きのまま吸引するひとって結構います。その状態で吸引しても、気道せまいわ、吸引チューブが上鼻甲介にぶつかったりで、効率的に吸引はできません。救急救命時の気道確保でも、あご挙上して気道を確保します。気道をひろくして吸引チューブをうまく挿入するためには、頭部後屈は有効な手順です。

救急救命のときの気道確保のイメージはこんな感じ。

これはエアウェイ確保だから、顎もしっかり持ち上げてるけど。実際痰吸引くらいなら、そこまで上を向かせなくてもいいですが、軽くでも上を向かせてあげることで、この動画のように、しっかり気道が確保できるんですよね。だから奥にある痰もしっかり吸引をかけれます。ただし、疾患等によりあご挙上ができない状態の患者さんには、無理にあご挙上はしないようにしましょう。

効率的にたん吸引を行うコツまとめ

たん吸引って窒息リスクがある患者さんなら絶対定期的にしないといけない。看護師の腕ひとつで、苦痛は倍にも半分にもなるし、はたまた粘膜損傷や鼻腔出血のリスクも低くなる。上手にとれれば痰はなくなって呼吸も楽になるけど、ただ吸引チューブを出し入れしただけになると、異物反射でたん分泌を促してしまいかねない。だからいかに効率的に、上手に痰を吸引するかどうかがポイントになってきます。

痰吸引で大事なことは、

  • 痰が吸引チューブのとどくところまでドレナージされていること
  • 気道がしっかり確保された状態でサクションをかけること
  • 患者さんが抵抗を感じて首に力をいれないよう、苦痛を最小限にするようつとめること

ですね。ひとことでいえば痰を吸える部位までもってきて、気道確保して、安楽に吸い上げるって感じ。だいたいこれを意識するようになってから、痰吸引で痰がとれない。なんてことはなくなりました。

 

痰吸引は医療現場、介護現場では重要な技術ですが、とても苦痛が伴う技術なので、ぜひ苦痛が少しでもへるようにしてあげてください。

痰吸引のコツはこのへんで。