アイデンティティの意味とは:わかりやすい「アイデンティティ」の話



シンママナースの マリアンナ です。

 

この記事では、アイデンティティの意味について、わかりやすく解説しています。

 

 



アイデンティティの意味とは?

 

 

アイデンティティとは、辞書的に言うと「自我同一性」のこと。

なんだかとっつきにくくて分かりにくい。

 

もっとカンタンに、ひとことで言ってしまえば、

「アイデンティティ」の意味とは すべてをひっくるめた「自分自身」・「自分の考え」のこと。

 

 

もし「あなたとは、どんな人間ですか?」と聞かれたときに、どう答えますか?

 

「自分自身とはこういう人間だ」と頭を浮かんだことが、あなたの「アイデンティティ」です。

 

アイデンティティが確立している状態というのは、

仕事や友人関係、恋愛等自分を取り巻くすべてを受け入れ、自分自身とはなにかを自分で理解できている。

それでいてなおかつ、自分が思う「自分自身」に伴った行動がとれていること、です。

自分の考えに伴って、自分らしい行動がとれている状態です。

 



アイデンティティが確立できている?簡易テストでチェックしてみる

 

小野寺敦子さん著書「手にとるように発達心理学がわかる本(かんき出版)」では、アイデンティティの確立がどれくらいできているのか、簡易テストが紹介されています。

 

あてはまるものにチェックしてみてください。

 

□ ときどき自分がどんな人間かわからなくなる

□ 異性とデートしたりすることはめったとない

□ 今の自分は本当の自分ではないと思う

□ 自分が自信をもてないことがある

□ 自分がどう生きればよいのかわからない

□ 不安に思うことがたくさんある

□ 自分の考え、価値観が正しいかどうか迷う

□ ときどき無責任な行動をとってしまうことがある

□ 困ったときには親等身近の日との考えに従う

□ 自分が本当にしたいと思うことが見つかっていない

参考:手にとるように発達心理学がわかる本(かんき出版)

 

 

採点結果

チェック項目が少ない・・・少なければ少ないアイデンティティの確率ができてきている。

チェック項目が7つ以上・・・まだアイデンティティが確立できたとは言えない。

 

 



心理学からみた「アイデンティティ」の意味とは

 

心理学の世界では、しばしば「アイデンティティ」がでてきます。

心理学のなかでも、アイデンティティの意味について深く触れているのは、心理学者の「エリクソン」と「マーシャ」。

 

それぞれの心理学者が触れている「アイデンティティ」について紹介します。

 

心理学者 エリクソンから学ぶアイデンティティの意味とは

 

エリク・ホーンブルガー・エリクソンは、アメリカの心理学者。

アイデンティティという概念の産みの親でもあります。

 

エリクソンは発達心理学において、年代別に心理的課題を分類する「心理社会的発達理論」を唱えました。

年代によって、乗り越えるべき心理的課題がある。この課題を上手に乗り越えられるか、そうでないかによって、後々そのひとの人格やアイデンティティに影響がでる、という理論です。

 

エリクソンは、青年期(12~22歳くらいの思春期前後)にアイデンティティが形成されると説いています。

 

  • 乳児期(0~1歳半)

基本的信頼感 VS 不信感

 

  • 幼児前期(1歳半~4歳)

自律性 VS 恥・羞恥心・疑心

 

  • 幼児後期(4~6歳)

積極性、自発性  VS 罪悪感

 

  • 児童期・学齢期(6~12歳)

勤勉性 VS 劣等感

 

  • 青年期(12~22歳)

同一性(アイデンティティ) VS 同一性の拡散

 

  • 成人期(労働、恋愛、結婚する時期)

親密性 VS 孤独

 

  • 壮年期(責任ある仕事につき、子どもを育てる時期)

生殖 VS 自己吸収、停滞性

 

  • 老年期(子育てや仕事を終えて、自分の人生を振り返る時期)

自己統合 VS 絶望

 

 

マーシャから学ぶアイデンティティの意味

 

マーシャ・リネハンは、アメリカ心理学者。

マーシャはアイデンティティの達成度について、危機(crisis)積極的関与(commitment)のふたつの項目から評価しています。

 

  • 危機(crisis)

・・・人生の様々な課題や起こりうる問題に対し、自ら悩んでいるか

 

  • 積極的関与(commitment)

・・・アイデンティティ形成に重要な人生の節目や思考(生き方、仕事、価値観など)に積極的に自分から関与しているか、行動しているか

 

マーシャはこの 危機 と 積極的関与 の状態に応じて、アイデンティティ達成度を以下のような評価しています。

 

マーシャのアイデンティティ・ステイタス(アイデンティティ形成の達成度)

アイデンティティ ステイタス 危機 積極的

関与

内容
アイデンティティ達成

(アイデンティティが確立できている状態)

経験

済み

している 自分の人生や価値観について悩み、苦しんだ結果、自分の考えを持ち、その考えに伴って行動ができている。かつ、自分はどんな存在なのかを理解できていて、自己の短所・長所も理解できている。
モラトリアム

(アイデンティティ達成の途中段階)

その最中 しようと

している

まだ自分のアイデンティティ形成に至っておらず、様々な課題に対し、迷いがある状態。
早期完了

(他者の価値観・考えを自身のアイデンティティとして受け入れた状態)

未経験 している 仕事や勉強など自分の役割に対し積極的に関与できている。他者(親等)から与えられた課題をこなすことはできているが、それが自分にとってどんな意味があるのか、を考えるに至っていない。
アイデンティティ拡散

(自分が誰かわからない、アイデンティティを確立できない状態)

未経験 していない 危機前

危機を体験したことがなく、積極的関与もしていない。自分が何者なのか、考えるに至らない状況。

経験

済み

していない 危機後

危機は経験しているが、まだ何かに対して打ち込む等、積極的に自ら行動ができない。

 

 

 



アイデンティティはいつからできるのか

 

アイデンティティそのものは、いつから出来上がるのでしょうか。

 

「アイデンティティの確立」は、思春期に成立するといわれています。

思春期は、自分とは何か、自分はいったいどんな人間なのか、を自分のなかで模索していく時期。

アイデンティティという「自分らしさ」をうまく作れず、悩み、将来に自分に悩んだり、ときに落ち込んだりする時期です。

 

思春期の子の多くが、アイドルの恰好をそのまま真似たり、いろんなひとの考えに染まったりと、いろんなものに染まりやすく傾倒しやすいのは、まだ出来上がっていない「自分作り」に翻弄されているからでしょう。

 

この時期は、いわゆる「反抗期」ともいわれる年代。親や教師に対して、無償に反抗心が芽生え、ときに反抗的態度をとることもあります。

 

実はこの年代の反抗期は、ある程度アイデンティティ形成においては正常な反応なんです。

反抗期がなぜ必要な過程なのか、そのキーとなる「自我の目覚め」について解説していきます。

 

 

アイデンティティ形成のサイン:自我の目覚め

 

「自我」とは、自分自身、いわば自分自身の考えです。

 

それまでは親や教師の支配のなかで生きてきた子どもが、思春期になり「自分」が出来てくると、次第に「自分で決定し、自分で行動したい」という衝動にかられます。親や教師という保護者たちから、精神的に自立を始めた状態です。

 

「わたしはこうしたい」「ぼくはそれはしたくない」

 

自分のしっかりした考えや思いが芽生え始める、これが「自我の目覚めです。誰に依存するわけでもない、「自分自身」ができてきた証拠です。

自分を言う通りにさせようとする、親や教師に腹が立つ。反論したくなる。これが反抗期。

 

アイデンティティが形成され始め、自我が目覚め、自分の考えが出来上がり、親や教師から「精神的な自立」が始まると、それまで保護的立場にあった親や教師に対し、反抗的な思いが芽生えます。これが一般的な反抗期の原理です。(もちろんホルモンの乱れや、本人の性格、受験ストレスなど様々な要因もありますが)

 

 

健康なアイデンティティ、不健康なアイデンティティ

 

アイデンティティは思春期に形成され、危機や積極的関与からその達成度が異なる。

もし仮に、「アイデンティティが正常に形成されなかった」場合、どんなことが考えられるんでしょうか?

 

健康なアイデンティティ

 

アイデンティティが正常に形成され、自分自身の価値観や考えが出来上がったひとは、人生の節々で自己の考えに基づいて決定、行動をとることができます。自分の考えがしっかりあるので、自分にあった環境や職業、友人関係や恋人を選ぶことが出来、対人関係も良好に保つことが出来ます。

人生でときに辛い体験や、悩むことがあっても、自分の価値観や考えに基づいて、解決策を模索し、行動することができます。

 

不健康なアイデンティティ

 

アイデンティティが正常に形成されないまま大人になった場合、ときに精神疾患の引き金になったり、対人不安、問題行動などの社会問題的行動を起こすことがあります。

 

精神疾患のなかでも、「境界性パーソナリティ障害」という障害があります。

境界性パーソナリティー障害とは、異常なくらい感情的で、精神的に不安定。人の好き嫌いが激しかったり、過激的な発想を持つことがある。怒りの感情を抑えられず、ヒステリーを起こしたり、ひとに攻撃的になるひとのこと。

ひとことで言ってしまえば、精神面において異常なくらい「極端」な思考を持つひとです。

 

すぐにキレて感情がコントロールできず考えが過激ないじめっ子、好き嫌いが激しいヒステリーを起こしがちな女性などがあてはまる可能性があります。

 

自己同一性障害とは

 

その境界性パーソナリティー障害のなかに、「自己同一性障害」という障害の分類があります。

本来自己同一性とは、いわゆる「アイデンティティ」のこと。自分自身をうまく統合できていることです。

 

もし発達の過程で、アイデンティティがうまく形成されなかった場合、この自己同一性障害に陥ることがあります。

いわばば「自分の考えがない」から、いつなんどきも「どう判断していいのかわからない」のです。これは同一性拡散の危機とも言います。

 

おとなになってから、人生の節々で「どう判断していいのかわからない」状況が多々あると、とても大変。

 

誰とどう付き合っていけばいいのか。仕事や職場をどう選んでいけばいいのか。犯罪や詐欺等怪しい誘いを受けたとき、どう判断していけばいいのか。大人になると必ず自分で考えて判断していかなければならないようなことが、判断できません。

 

結果、対人関係がうまくいかなかったり、仕事が続かなかったり、犯罪や詐欺に巻き込まれたりすることがあります。これらは当事者にとって強いストレスとなり、境界性パーソナリティー障害等の精神疾患の引き金になることもあるのです。

 

思春期に起こる「アイデンティティの形成」。

上手に形成できなかったときは、ときにそのひとのその後の人生に大きく影響をきたすこともあります。

 

アイデンティティとは、人が上手に生きていくためにとても重要な心の成長のひとつ、なんですね。

 

 



まとめ:アイデンティティの意味とは。人格形成にとても重要な「自分らしさ」のこと

 

アイデンティティの意味とは何か。

アイデンティティの意味とは、ひとが生きていく上で必要な「自分らしさ」「自分の考え・価値観」のこと。

 

アイデンティティが適切に形成されたひとは、人生で重要な判断をしなければならないとき、自分の価値観や考えに基づいて行動を起こすことができます。自分をしっかり持っているからです。

 

アイデンティティが十分に形成されずおとなになった人は、価値観や自分の考えが形成されていないため、様々なシーンで自分の考えに基づく判断が出来ません。すぐひとの考えに傾倒してしまったり、対人関係がうまくいかなかったり、仕事が続かなくなることがあります。

 

思春期に形成されるアイデンティティは、こころがおとなになっているサイン。親が不安に思う反抗期も、実はアイデンティティを形成するための一環になることもあります。

 

アイデンティティの意味とは、ひとことでいえば、揺るがない「自分の考え」です。

ひとに誘惑されても、脅されても、困難にぶちあたっても「わたしはこう考える!」という強い考え、それがアイデンティティとも言えます。

 

アイデンティティがしっかり形成されていることは、人生を上手に、強く生きていくためにとても重要なことかもしれませんね。

 

 

以上、アイデンティティの意味について、でした。