褥瘡の看護計画4つのポイント~原因に対する具体的なケア計画~



シンママナースの マリアンナ です。

褥瘡の基本的な看護計画とその根拠、OP(観察計画)・TP(ケア計画)・EP(指導計画)別の具体的な看護計画についてまとめています。

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筆者も実際に使っている看護計画やアセスメントに役立つテキストです。
  • スタンダートな看護計画はほとんどこれで網羅できる。
  • 患者によく起こる症状とその看護が根拠とともに書かれていて、わかりやすい。

 



褥瘡とは

褥瘡とは、一般的に「床ずれ」とも言われる皮膚のトラブルです。主に長期臥床が原因となり、その他の環境やその患者の持つ疾患、栄養状態等が関連して、皮膚の一部分がただれたり、潰瘍ができたりします。増悪したものであれば真皮や骨にまで達する褥瘡もあります。わたしが看護学生時代、実習教員の看護師さんから「褥瘡は看護師の恥だと思え」と言われていました。逆をいえば、それくらい寝たきりの患者の状態が良くなるか悪くなるかは、看護の力が影響するものだということです。

褥瘡評価ツール「DESIGN」

褥瘡の程度や場所、治療方法は人によって様々です。ですが、褥瘡の評価として一般的には「DESIGN」(褥瘡学会)を使用して評価することが多いです。

 

「DESIGN」褥瘡重症度分類用 表

褥瘡重症度分類用 表

 

「DESIGN」定義

Depth:深さ

創内の一番深いところで判定し、真皮全層の損傷(真皮層と同等の肉芽組織が形成された場合も含める)までをd、皮下組織をこえた損傷をDとし、壊死組織のために深さが判定できない場合もこのDの範疇に含める。

Exudate:滲出液

ドレッシング交換の回数で判定する。ドレッシング材料の種類は詳しく限定せず、1日1回以下の交換の場合をe、1日2回以上の交換の場合をEとする。

Size:大きさ

褥瘡の皮膚損傷部の長径(cm)と短径(長径と直交する最大径(cm))を測定し、それぞれをかけたものを数値として表現するもので、100未満をs、100以上をSとする。持続する発赤の場合も皮膚損傷に準じて評価する。

Inflammation/Infection:炎症/感染

局所の感染徴候のないものをi、感染徴候のあるものをIとする。

Granulation tissue:肉芽組織

良性肉芽の割合を測定し、50%以上をg、50%未満をGとする。良性肉芽組織の量が多いほど創傷治癒が進んでいることになり、本来なら数値が逆であるが、大文字が病態の悪化を表現しているためこのような記述方法となった。なお、良性肉芽とは必ずしも病理組織学的所見とは限らず、鮮紅色を呈する肉芽を表現するものとする。

Necrotic tissue:壊死組織

壊死組織の種類にかかわらず、壊死組織なしをn、ありをNとする。

Pocket:ポケット

ポケットが存在しない場合は何も書かず、存在する場合のみDESIGNの後に-Pと記述する。たとえば、深さ、大きさ、壊死組織が重度であり、他が軽度でポケットの存在する場合は、DeSigN-Pと表記する。

「DESIGN R」重症経過 表

同じ褥瘡のような皮膚に対する評価でも、褥瘡以外の難治性潰瘍(糖尿病性潰瘍などによる創)等を評価するときは、DESIGNを改良した「DESIGN R」の方が評価しやすく設計されています。

CapD20161007_1

 

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褥瘡ができる原因・悪化する原因

褥瘡に対して看護計画を立てる前に、なぜその看護計画が必要なのかを知る必要があります。つまり、「褥瘡を悪化させない・つくらない」ためには、まず「褥瘡を悪化させる・発生させる原因」を理解しておくべきです。ここでは「褥瘡ができる原因・悪化する原因」にスポットをあてて、説明します。

 

2時間以上の同一部位に対する圧迫

褥瘡ができる・褥瘡が悪化する原因の主軸ともいえる「一定時間の圧迫」。そもそも褥瘡好発部位といわれる褥瘡好発部位に褥瘡ができるのは、その一定部位に一定時間、圧力がかかり続けることに原因があります。

 

褥瘡好発部位

褥瘡後発部位イメージ

 

NPO創傷治癒センターさんより

健康な人間であれば、体のどこかに血流不足を感じると、寝ている間の無意識なときであっても、自動的に体位交換を行い、皮膚などの表面含む全身の血流維持を行います。しかし寝たきりの人の場合、自己にて体動を起こすことが出来ないため、体の一部分に圧力がかかり続けて、血流不足となっていても、自分で体を動かすことが出来ません。一般的なこれまでの見解では、褥瘡発生の圧力に関する原因の条件として、「70〜100 mmHgの圧力が2時間加わると、圧力による組織損傷の徴候が生じる」と言われています。

褥瘡ができる原理の関連図

皮膚が長時間圧迫されると、血液が途絶える

一定時間細胞に対する酸素や栄養の供給が途絶える

細胞死滅及び血栓による微小血管の閉塞

組織の壊死

褥瘡の発生

 

栄養状態の低下

栄養状態が低下していると、血流も悪く皮膚の弾力も低下し、るいそうや浮腫等も加わるため、より褥瘡を生じやすくなります。絶食管理の患者、るいそうぎみの患者、脱水傾向の患者など褥瘡リスクがあがります。栄養状態が低下すると、以下のように皮膚の創傷に関連しています。

褥瘡と栄養低下の関係褥瘡

カンゴルーさんより

 

 

糖尿病や麻痺等その患者自身の基礎疾患によるもの

褥瘡はただ寝たきりによってできるものではなく、寝たきり+「他の要因」が重なっていることがほとんどです。脳梗塞による後遺症で麻痺があり体の一部を動かせない(感覚がない)、糖尿病で神経症状があったり、血流が悪かったりしている。骨盤骨折や脊椎損傷等、体位交換が困難な外傷などが原因になることもあります。

 

不衛生な皮膚環境

褥瘡が発生する原因として忘れてはならないのが、「衛生面」の環境。おむつ中がいつもしめっていたり、コルセットをつけっぱなしだったり、発熱で発汗が続いていたりすると、皮膚が常に湿潤した状態になったり、また雑菌が多い状態になります。湿潤した状態が続くと、皮膚はただれやすくなり、不衛生な状態であると、炎症を起こしやすくなります。

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褥瘡看護計画の基本とまとめ

褥瘡はドレッシング剤の保護や軟膏の塗布など、積極的な治療も行い治癒を目指しますが、看護師の献身的なケアが褥瘡治癒と悪化予防の重要な支柱となります。褥瘡の看護計画の基本として、覚えてもらいたいのが、

  1. 除圧
  2. 栄養管理
  3. 基礎疾患の治療
  4. 清潔の保持

です。

これらは上記「褥瘡ができる原因・悪化する原因」で述べた4つの原因

  • 2時間以上の同一部位に対する圧迫
  • 栄養状態の低下
  • 糖尿病や麻痺等その患者自身の基礎疾患によるもの
  • 不衛生な皮膚環境

褥瘡の原因に対するアプローチでもあります。

 



看護計画1:除圧の徹底 ~体位交換とポジショニング~

褥瘡リスクがある・もしくは褥瘡が発生している患者には、2時間おきの体位交換と褥瘡好発部位を除圧するポジショニングを行いましょう。

支持基底面の安定

体位交換時の体位は患者の一番安楽な体位であればよいと思いますが、極力1点の部位に体重がかからないように、クッションなどを用いて体位交換後の体位の支持基底面を広く保てるようにしてあげてください。

支持基底面を広く保つことは、患者本人の安楽はもちろん、一点に重力が集中しないため、褥瘡ができる可能性をグッとさげることができます。

CapD20161007_6

 

看護学生のために(by 白鳥恭介)さんより参照

 

除圧マット、除圧クッションなどの除圧用品を使用する

褥瘡リスクが高い患者には、除圧効果のある除圧マットや除圧クッションなどの除圧用品を使用するようにしてください。骨の突出などにより褥瘡ができやすい部分でも、除圧用品が体圧を分散させ、より褥瘡がでできにくくなります。

 

 



看護計画2:栄養管理の徹底と評価

前述でも述べたように、低栄養は褥瘡の大きな要因になります。褥瘡リスクが高い患者、もしくはすでに褥瘡を起こしている患者を見つけたら食思がない、もしくは食事摂取量が少ない患者であれば、食べやすい食事形態への変更や、介助を行いましょう。看護サイドだけでなくSTやNSTとの連携も重要になります。それでも経口から食事をとれない場合、Drに報告し点滴での栄養管理や、家族や本人が経鼻栄養や胃瘻を望んでいるかヒアリングする調整を行う必要があります。低栄養に陥る患者が、どのようにすればベストな形で栄養状態を維持できるのか、他職種で連携をとりながら評価していく必要があります。

 



看護計画3:基礎疾患の治療と評価

褥瘡を評価するとき、褥瘡の状態だけではなく、褥瘡の原因となる基礎疾患の状態も評価しておくようにしましょう。糖尿病や脊椎損傷、骨折だけでなく、麻痺の程度や意識レベルの低下も褥瘡の原因になります。肺炎なんかで発熱が続き、意識レベルが一時的に低下した患者でも、気づかないうちに褥瘡ができてたなんてこと、よくある話です。基礎疾患の悪化が、褥瘡の悪化に影響していないか、適切に評価するようにしてください。

 



看護計画4:保清ケアの徹底

褥瘡リスクが高い患者の場合、全身の保清ケアを徹底するようにしましょう。背中、頭、陰部および臀部、足や手の末梢など。保清ケアをすることで衛生が保たれたり、血行が良くなるなど褥瘡にとって良い効果ももちろんありますが、もうひとつ、看護師が保清を行うことで、皮膚トラブルの早期発見につながるからです。思いもよらない場所に剥離ができていたり、おもっていたより突拍子もないところが結構骨突出していたり、、定期的な保清ケアは、褥瘡を予防するだけでなくケアを通して患者の褥瘡リスクの観察もすることができるのメリットがあります。

 

 



OP・TP・EP】具体的な褥瘡看護計画の内容

では実際にどんなところに着目して患者を観察し、どんなケアを行って関わりを持っていけばよいのか、前述の根拠をふまえて、OP(観察計画)・TP(ケア計画)・EP(指導計画)を展開していきましょう。

OP(観察計画)

  • 褥瘡好発部位の皮膚状態
  • 栄養に関する検査データ結果
  • 食事摂取量 及び 食思の程度
  • ADLの変化
  • (基礎疾患に関する状態の観察)
  • バイタルサインの変化
  • るいそうの程度

 

TP(ケア計画)

  • 2時間おきの体位交換とポジショニング
  • 定期的な全身清拭
  • 陰部洗浄
  • 定期的な部分清拭及び手浴・足浴・洗髪などの保清ケア
  • (必要に応じ)食事介助
  • 排泄介助 及び ケア
  • (必要に応じて)除圧マットやクッションの設置

 

EP(指導計画)

  • 体位変換の必要性を説明し、促す
  • 水分補給及び食事摂取の必要性を説明する
  • 清潔を保つ必要性について説明する

 



褥瘡看護計画のまとめ

褥瘡には個人差あれど基本的に褥瘡に対する原因もケアも4つの要因から成り立ちます。

  1. 除圧
  2. 栄養管理
  3. 基礎疾患の治療
  4. 清潔の保持

これらは「褥瘡ができる原因・悪化する原因」にもなる視点です。

  • 2時間以上の同一部位に対する圧迫
  • 栄養状態の低下
  • 糖尿病や麻痺等その患者自身の基礎疾患によるもの
  • 不衛生な皮膚環境

 

つまりこれら4つに対する対策が褥瘡に対する基本的な看護計画であり、褥瘡ケアの基礎になります。

看護計画1:除圧の徹底 ~体位交換とポジショニング~

看護計画2:栄養管理の徹底と評価

看護計画3:基礎疾患の治療と評価

看護計画4:保清ケアの徹底

 

これに患者の持つ疾患や性格、ADLなどの個別性を合わせて、患者の褥瘡予防に役立ててください。

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