シンママナースの マリアンナ です。
便潜血検査で陽性と言われたら、出血源を調べるために大腸内視鏡検査を行います。大腸がんなどの考えられる病気について、また大腸内視鏡検査の詳細について説明しています。
「便潜血陽性」と健診や人間ドックで指摘されたら
健康診断や人間ドックで「便鮮血陽性」を指摘されたら、実は目には見えなくても、便のなかに少量の出血があることを意味します。便の通り道、つまり大腸から肛門あたりまでのどこかで出血していることになります。
健康な体であれば、本来少量でも出血することはありません。便鮮血陽性なら、その少量の出血がずっと続いているのか、どこかが切れて一時的に出血していたものなのかによって、重要性が違います。なにより便潜血は、「本来出血するはずのない消化管から出血している原因がある」ことを意味しますので、大腸ポリープや消化管潰瘍、大腸憩室出血、最悪の場合大腸がんの可能性を潜んでいる状態でもあります。
便鮮血陽性がでた地点で、しっかり精査を行い原因をつきとめて、適切な治療を行っていく必要があります。
便潜血陽性とは
便鮮血とは、便中の出血を示す便ヘモグロビンの量をはかる検査です。ヘモグロビンとは血中の存在するタンパク質のことですが、大腸などの消化管に出血がある場合、このヘモグロビンが便中に増加するようになります。便潜血検査では、100ng/mL以上便ヘモグロビン量を認めた場合、陽性とみまします。
出血状態、採便部位の違いなど検査結果の変動要因があるため、検査の指示によっては2日間行う2日法や、3日法という連続検査を行うこともあります。
画像:FALCO:便ヘモグロビン定量 【ラテックス法】より
便潜血検査で100ng/mL以上を認め便潜血陽性とみなされたら、その原因を特定する精査が必要です。
肛門からカメラをいれて大腸を直接観察する大腸内視鏡検査を行います。
大腸内視鏡検査とは
大腸内視鏡検査とは、肛門から内視鏡スコープ(カメラ)を挿入して、大腸の壁を精査することです。
前日から特殊な食事をとり、当日から絶食したり、下剤を飲んだりして、便を出し切ったあと、スコープで腸内を観察します。
画像:日高大腸肛門クリニックより
大腸内視鏡検査の流れ
大腸内視鏡検査は以下の流れのように行います。
大腸内視鏡検査:前日の食事とすべきこと
検査前日の夕食は、病院から提供される低残渣食(大腸に食べ物が残らない専用食)を食べます。前日の21時以降は絶食とし、眠前に下剤(ラキソベロン)を内服します。
大腸内視鏡検査:当日の流れ
検査当日は朝から専用の下剤2Lを2時間以上かけて内服します。
この際、吐き気、腹痛などの副作用がおこらないよう、飲み始めは少量ずつ内服するようにします。また一気に飲むと血圧変動することもあるので、起立性低血圧や高血圧症状に注意するようにしましょう。
下剤を内服し出すと便が多量にでるようになります。
次第に便の色がクリアになり、混濁がなくなって薄い尿のような色になります。この頃くらいには大腸内の残便がなくなり、大腸内視鏡検査ができるくらい腸内がきれいになっ
ています。
便がクリアになった野を確認できたら、紙パンツを着用して内視鏡室で検査します。左側を下にして横になり、点滴から麻酔薬を注入します。問題がなければ検査は15分~30分程度で終わります。
画像:城クリニックより
麻酔がきれるまで1時間ほど横になったまま安静にします。麻酔きれたら医師より検査結果の説明を受けます。
大腸内視鏡検査:後日の食事や生活について
大腸内視鏡検査後の食事は、医師の指示が特別似ない限り、消化が良く水分の多いもの(おかゆやスープ等)から初めて、徐々に固形食にしていくようにしましょう。
ポリープ切除や止血処置をしている場合は、再出血を予防するためにしばらく絶食が続くこともあるので、大腸内視鏡検査後の食事内容については医師指示を仰ぎましょう。
生活は普段通りで良いですが、無理な運動は避け様子を見ながら普段通りの生活に戻すこと、おなかに力が入るようなこと(便秘薬の使用や運動等)は再出血のリスクがあるので、時間をおいてからするようにしたほうが良いでしょう。
大腸内視鏡検査って痛いの?
大腸内視鏡検査を受けるひとの質問でよるあるのが、「大腸内視鏡検査って痛いですか?」という質問です。
大腸内視鏡検査は、検査前に点滴で鎮静剤を使って麻酔効果を得るため、基本的に痛みはありません。
看護師としてたくさんの大腸内視鏡検査をうけるひとを見てきましたが、たいがいみんなすやすやと眠っています。
検査後も穿孔などを起こしていなければ、たいがいのひとは強い痛みを感じることなく経過できます。
便鮮血陽性から考えられる病気:大腸がん
便潜血陽性で一番心配するのが、「大腸がん」の可能性ですね。
便潜血検査陽性で、大腸がんと判明する確率は、全体の約3%といわれています。
確立でいうと非常に少ない数字なんです。97%は治療可能な他の疾患であることがほとんどです。
大腸内視鏡検査を受ける前に、まず大腸がんとはどういった病気なのか、どのような治療スタイルをとるのかを確認しておきましょう。
大腸がんとは
大腸がんとは、大腸粘膜から生じる悪性腫瘍ののことです。好発部位はS状結腸や直腸がんです。組織型はほとんどが腺癌であり、癌の浸潤が粘膜下層までにとどまる早期がんと、固有筋層以下に浸潤した進行がんにわけられます。
好発年齢と好発部位
好発年齢は50~70代で、60代の方が最多です。早期がんは症状に乏しく、進行にともなって、下痢や腹部膨満、便秘や便柱狭小化などがみられるようになります。時々イレウス(腸閉塞)や腸重積症を合併することがあります。
転移した場合、大腸の血流が門脈を介して肝臓へ流入するため、肝臓への転移が最も多いといわれています。
治療方針
大腸がんと診断された場合の治療方針は、病状のステージに加えて本人の全身状態や意思をふまえて治療方法を決定していきます。
大腸がんの根本的な治療は外科的な病巣の切除であるため、肝臓や肺などへの遠隔転移の有無を確認したのち、切除の可否を決定していきます。
画像:三浦内科クリニック
早期がんの場合
肛門からカメラをいれてがんを切除する「内視鏡的治療」を行います。
大腸がんが粘膜及び粘膜下層まで、最大径が2cm未満のがんであることが主な適応です。(上図参照)
進行がんの場合
リンパ節転移の可能性がある進行がんは手術において腸管切除やリンパ郭清などの根治的手術を行います。状況によっては人工肛門(ストマ)を造設することもあります。
原発・転移巣があり切除可能な場合
原発巣および転移巣がともに切除可能な場合、原発巣根治切除(大腸がんそのものとその部位を切除)と転移巣切除(転移したがんとその周囲の切除)の根治的手術を行います。肝転移巣に対する切除術では、20~40%の確立で根治に至ります。
原発・転移巣があり切除不可な場合
浸潤や転移が多い、複雑で切除が困難な場合は、化学療法や放射線療法、緩和手術を行います。
便潜血陽性で大腸がんになる確率
便潜血検査の偽陰性率、すなわち便潜血検査をしても大腸がんがあっても見逃してしまう可能性は、
進行癌で10%
早期癌で50%
といわれています。
また便潜血検査の癌的中率(陽性の人が癌である確率)は、
約3%
です。
大腸進行癌の手術による根治率
全体で約60~70%、
リンパ転移の無い進行癌であれば、
約80~90%
の確立で根治することができます。
すなわち、大腸がんはいかに早期発見し、早期根治するかが重要な病気であることがわかります。
的確に早期発見した場合は、便潜血検査だけではなく、人間ドックなどで大腸内視鏡検査を自主的に受けることをおすすめします。
便鮮血陽性から考えられる病気:大腸がん以外
消化管および肛門付近から出血する疾患が考えられます。
大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸潰瘍、急性大腸炎、腸閉塞、寄生虫感染、細菌性大腸炎、原虫感染、大腸憩室炎、痔などが考えられます。
その中でもよく、便潜血検査で判明する病気を以下に紹介します。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸粘膜面から突出する隆起性病変のことをいいます。
多くは腫瘍性の線種か、非腫瘍性の過形成ポリープです。基本的に切除にて治療が可能ですが、右側大腸の大きな過形成ポリープはガン化する可能性があるとされています。また過形成ポリープと腺種の中間的な性質をもつ鋸居状腺腫は通常の腺腫と同程度のガン化率といわれています。
大腸潰瘍
大腸潰瘍とは、大腸の粘膜が炎症し、びらんや潰瘍形成した状態をいいます。
大腸内視鏡検査で出血を認めた場合、止血処置を行います。20~30代に好発し、再発する確率が高めです。
大腸憩室炎
大腸憩室炎とは、大腸内にガス(おなら)や便が貯まって圧がかかり、大腸表面がぷくっと腫れあがった状態をいいます。
膨れ上がった憩室に便が貯まって炎症を起こしたり、出血したり、ときに穿孔を起こしたりします。
画像:ヘルジル
痔
痔核とは、肛門より大腸側に生じる内痔核と、肛門付近にできる外痔核があります。
臨床では両者が混同したケースがおおくみられます。
排便などにより出血することがあり、その際は便潜血検査陽性になることがあります。
便鮮血陽性と診断されたら~これからの生活で注意すべきこと~
診断された病気によって程度も異なりますが、便潜血検査で陽性と出ている地点で、消化管からなんならの出血をしており、あなたの体は何かしらの悲鳴をあげている証拠でもあります。
「便は体の便り」とも言われるように、便の状態が良くなかったり、出ないはずのものが出ているということは、消化管でトラブルが起こっているからです。
大腸含む消化管は生活習慣が現れやすい場所でもあります。ストレス社会の現代、20代や30代の若年世代でも十分消化管の機能が低下することや病気になることもありえます。
消化管出血はごく少量の出血であっても、なにかのキッカケで出血が増悪した場合、出血性ショックや貧血など怖い症状を起こすこともある怖い病気です。
便潜血検査で陽性が出た地点で、自身の生活習慣を振り返り、不摂生がないか見直しましょう。