【看護記録】POSとは~POSがわかる5つのカテゴリーとは~



シンママナースの マリアンナ です。

この記事では看護記録「POS」について説明しています。看護は何を焦点にして展開していくの?何を枠組みにして、どのように患者を捉えて看護計画を立案・実行していくべきなの?看護展開の基礎となるPOSと、POSの柱となる5つのカテゴリーについて理解しましょう。

 



看護記録:POSとは

看護記録におけるPOS(Problem Oriented)とは、患者の問題点を中心に考えて、分析・統合・計画して看護を実行し、監査をうけるシステムのことをいいます。問題志向型システム、POS方式とも呼ばれます。1968年Weed(アメリカ)によって開発されました。

PONR(Problem Oriented Nursing Record)とは、POSを基盤とした看護記録のことをであり、以下の5つにカテゴライズされた記録用紙の名称と、記載内容から構成されます。

 

  • 基礎情報

情報収集・情報のアセスメント

  • 問題リスト

問題の明確化

  • 看護計画

到達目標と看護計画

  • 経過記録

問題ごとに得た情報・その情報から考えたこととケアの実施、結果の評価について

  • 退院サマリー

看護経過の要約・まとめ

  • 中間サマリー(必要に応じて)

状態の変化や長期治療を要する場合、中間地点での看護要約をまとめる

 

これからPOSの基盤となるこの5つのカテゴリー「基礎情報・問題リスト・看護計画・経過記録・退院サマリー」について、理解していきましょう。

 



看護記録”POS”:基礎情報

POSにおける基礎情報とは、患者を全人的に捉えた患者の情報庫、つまりデータベースです。

 

全人的とは

看護において対象患者を「全人的」に捉えるということは、フィジカルな側面だけに看護するのではなく、身体的側面、精神的側面、社会的側面、スピリチュアルペイン(霊的・宗教的苦痛などともいいます)の4側面から人を捉えることをいいます。

 

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画像:くらしすとさん

 

看護において患者を全人的に捉える・把握するためには、この4側面を網羅した枠組みにそって系統的な情報を整理していく必要があります。

施設によっては独自の情報管理ツールを持っていたりしますが、この系統的枠組みには基本的に以下のような種類があります。

 

NANDA-I看護診断 分類法Ⅱの13領域

  1. ヘルスプロモーション
  2. 栄養
  3. 排泄と交換
  4. 活動/休息
  5. 知覚/認知
  6. 自己知覚
  7. 役割関係
  8. セクシャリティ
  9. コープング/ストレス耐性
  10. 生活原理
  11. 安全/防御
  12. 安楽

 

ゴードンの11領域(機能的健康パターン)

  1. 健康知覚―健康管理パターン
  2. 栄養―代謝パターン
  3. 排泄パターン
  4. 活動―運動パターン
  5. 睡眠―休息パターン
  6. 認知―知覚パターン
  7. 自己認識―自己概念パターン
  8. 役割―関係パターン
  9. 性―生殖パターン
  10. コーピング―ストレス耐性パターン
  11. 価値―信念パターン

 

ヘンダーソンの14領域(基本的ニード)

  1. 正常に呼吸する。
  2. 適切に飲食する。
  3. 身体の老廃物を排泄する。
  4. 移動する、好ましい肢位を保持する。
  5. 眠る、休息する。
  6. 適当な衣類を選び、着たり脱いだりする。
  7. 衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に保持する。
  8. 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する。
  9. 環境の危険因子を避け、また、他者を傷害しない。
  10. 他者とのコミュニケーションを持ち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する。
  11. 自分の信仰に従って礼拝する。
  12. 達成感のあるような形で仕事をする。
  13. 遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する。
  14. “正常”発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる。

 

NANDA、ゴードン、ヘンダーソン等、看護の枠組みに沿った情報収集の意味

枠組みなしに患者の情報収集をするとしたら、看護の対象が疾患だけに関連したものになってしまいます。

しかし、これらのNANDA、ゴードン、ヘンダーソン等看護の枠組みを用いて、系統的に情報収集を行い整理するなら、患者の4側面を捉えた全人的なアセスメントができるようになります。

 



看護記録”POS”:問題リスト

POSにおける問題リストとは、前述の★基礎情報をアセスメントして、浮かび上がってくる問題に合う「看護診断」を選択したリストです。この患者の問題はなにか、誰がみてもわかるよう患者の問題をリストアップします。

すでに準備されている看護診断の中から、その患者の状態に適切な看護診断を選択します。診断名は適切に感じても、定義の内容が合わないときがあるので、その看護診断名の定義まで理解しておく必要があります。看護診断は優先順位が高いものから列挙していきます。優先順位の高くなるべきものの特徴として、生命の危機に関するもの、早く対応すべき患者の苦痛に関するものなどがあります。

 



看護記録”POS”:看護計画

看護計画は、その患者の看護目標に沿った看護の計画です。前述の★問題リストであげられた患者の問題に対して看護目標を設定し、目標に沿って看護計画を立案します。

誰でもわかる、良い看護計画立案のコツは「以下の4つのルール」を満たす必要があります。

  1. 患者が主語であること
  2. いつまでにクリアすべきか達成期限が記載されていること
  3. 行動レベルで表記されること
  4. 達成可能な目標であること

 

1.患者が主語であること

患者が主語である看護計画である必要があります。看護学生の看護実習などで立案する看護計画には、「○氏は○○することができる」などという表現で、主語に患者の名前を入れたりしますが、実際の臨床で立案する看護計画では、主語が患者である前提なので主語がないことが多いです。

 

2.いつまでにクリアすべきか達成期限が記載されていること

達成日を設定し、達成日にその看護計画を評価します。達成できなければ看護計画の修正を行います。

 

3.行動レベルで表記されること

看護計画は、主語である患者に対し、行動の動詞がなければなりません。「患者が歩ける」「患者が自分で食べることができる」等、何かしらの行動で評価できるようにしましょう。もし患者の理解レベルが看護目標にあがるなら、「患者が内服管理について自分で説明できる」「トイレへいくときはナースコールを押すことができる」等、理解していることを示せる行動を看護計画にあげるようにしましょう。

 

4.達成可能な目標であること

看護計画は医学的に達成できるものである必要があります。情報収集した基礎情報から、その患者の個別性をしっかり捉え、その患者が達成できる計画を立案します。

 



看護記録”POS”:経過記録

経過記録とは、日々の患者の状態をSOAP形式で残す記録のことです。経時的に、1日の時間帯によって患者がどのように変化していったのか、その時々考えられる問題は何か、必要な看護はなにかを記録します。

SOAPがわからないひとのために、SOAPの基礎知識について以下の記事に記載しています。

【看護記録】SOAP:基礎からわかるSOAP記録の書き方【カルテ】 看護記録SOAP(ソープ)は、看護展開における分析方法です。新人看護師や看護学生のとき、一番頭を抱えるのはSOAPの書き方・記入方法です。まずS・O・A・Pそれぞれが何の項目か、SOAPの概念や目的は

 



看護記録”POS”:退院サマリー(及び中間サマリー)

退院サマリーとは、患者が入院してから退院するまでの看護介入のすべてを記載した要約です。

入院に至った経緯から、入院中の患者の看護問題と看護目標、及び看護計画やADL等を含む患者の現在の状態を記録します。退院サマリーの目的は、患者が他院に転院するとき、通院するときなどに、その患者のことを知らなくても、他の誰かがその患者に必要な看護を提供できるようにすることです。

つまり、退院サマリーとは、誰が読んでもその患者に必要な看護がわかるよう記載される必要があります。

中間サマリーは入院期間が長かったり、また同じ病院内でも他部署へ移動する患者の場合、必要になることがあります。

中間サマリーにおいてもサマリーのニーズは同じで、誰が読んでもその患者に必要な看護が展開できるよう記載されておかなければなりません。

 

 



看護記録”POS”のまとめ

看護記録における「POS」とは、患者の問題を中心に捉える問題志向型システムのことです。

「基礎情報・問題リスト・看護計画・経過記録・退院サマリー」の5つのカテゴリーから成り立ち、患者を全人的に捉え看護することを目標にしています。

恐らく現在の日本のほとんどの病院や看護学校でPOS形式の教育を取り入れています。

 

看護師としての基礎知識として、知っておきたい情報ですね。