【看護必要度】「無菌治療室での治療」の定義まとめ~疑義解釈の補足説明つき~



シンママナースの マリアンナ です。

2016年度、患者の状態を示す看護必要度A項目:専門的な治療・処置「無菌治療室での治療」の定義、あてはまる条件をかんたんにまとめています。厚生労働省から疑義解釈で追加補足された「多床室での無菌治療」、「無菌治療室への入室時間について」等、定義に加えて説明しています。また理解度をはかる簡単な演習問題も掲載しています。

無菌治療室

 



看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の定義

2016年度診療報酬改定では、看護必要度A項目・専門的な治療・処置に「無菌治療室での治療」が追加されました。

 



無菌治療室での治療の定義

無菌治療室での治療」の定義は以下の通りです。

 

定義
無菌治療室での治療とは、移植後、白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、重症複合型免疫不全症等の患者に対して、無菌治療室での治療が必要であると医師が判断し、無菌治療室での治療を6時間以上行った場合に評価する項目である。
判断基準
なし:無菌治療室での治療を実施しなかった場合
あり:無菌治療室での治療を実施した場合
留意点
無菌治療室とは、室内を無菌の状態に保つために十分な体制が整備されている必要があり、当該保険医療機関において自家発電装置を有していることと、滅菌水の供給が常時可能であること。また、個室であって、室内の空気清浄度が、患者に対して無菌治療室管理を行っている際に、常時ISOクラス7以上であること
無菌治療室に入室した日及び無菌治療室を退室した日は評価の対象とする。

 

 

無菌治療室での治療」入退室時間による評価の違い

厚労省は疑義解釈の中で、

  • 治療開始時刻を入室時刻としてよい
  • 入室が19時以降の場合は、その日は評価の対象とならない
  • 午前5時に退室した場合、その日は対象とならない

ことを明確にしています。

 

つまり、入退室の時間だけでいうと

・その日のPM19:00までに無菌治療室に入室する

・その日のAM5:00以降に無菌治療室を退室する

ときだけ評価が「あり」になるってってことですね。

 

厚生労働省 疑義解釈 1P 問2 より

 

 



無菌治療室での治療」個室ではなく多床室でもOK

 

厚労省は疑義解釈の中で、

  • 「個室ではないが多床室において、パーテ-ションなど個室に準ずる状態で、室内の空気清浄度等の基準を満たしていれば、当該項目に該当する」

旨を明確にしました。

 

以下はその一文です。

 

「⑪ 無菌治療室での治療」の留意点に、個室であることが求められているが、個室ではないが多床室において、パーテ-ションなど個室に準ずる状態で、室内の空気清浄度等の基準を満たしていれば、当該項目に該当するとしてよいか。

 

(答)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の評価において、該当することとして差し支えない。

 

厚生労働省 疑義解釈  医科 – 1 P問1 より

 

つまり、

個室ではなくても、個室に準ずる条件で、無菌治療室に匹敵する環境があれば、無菌治療室として判断してかまわない、というわけです。(そうそうそんな環境もありませんが)

個室であるか同室であるかというより、無菌治療が必要な患者に、無菌治療できる環境ができているかどうか、っていうところが論点になるみたいです。

 

 



無菌治療室での治療」の定義のまとめ

看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の評価ポイントとなるのは以下の3つです。

  • 無菌治療室での治療が必要であると医師が判断している
  • 無菌治療室での治療を6時間以上行った場合
  • 無菌治療室に19時までに入室した日 及び 無菌治療室を午前5時以降に退室した日

その他施設の自家発電の有無や滅菌水の供給能力など、細かな定義はありますが、絶対的条件をまとめると上記のようになります。

 

無菌治療室


看護必要度A項目「無菌治療室での治療」演習問題

 

演習問題1.

白血病で無菌治療室での治療が必要であると医師から診断された患者。20時に無菌治療室に入室した。当無菌治療室は「無菌治療室での治療の定義」に定められた条件をクリアしている。

本日この患者の看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の評価は「あり」か「なし」か。

 

 

演習問題1.解答

なし

 

演習問題1.解説

無菌治療室での治療が必要であると医師の診断もあり、該当施設の無菌治療室も条件をクリアしているが、当日の「無菌治療室での治療」の評価が「あり」と評価されるには、

その日のAM5時~PM19時までに入室しないと「あり」と評価されない。この症例では20時に入室しているため、当日の「無菌治療室での治療」の評価は「なし」となる。

 

 

演習問題2.

再生不良性貧血で無菌治療室での治療が必要であると医師から診断された患者。AM9時に無菌治療室に入室し6時間以上無菌治療室での治療を行っている。

該当施設の無菌治療室は自家発電装置を有しており、滅菌水の供給が常時可能である。個室管理であり、室内の空気清浄度は常時ISOクラス7以上を維持している。

本日この患者の看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の評価は「あり」か「なし」か。

 

演習問題2.解答

あり

 

演習問題2.解説

この患者のケースでは、看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の定義に記載された条件をすべてクリアしています。したがって評価は「あり」が正解です。

 

演習問題3.

重症複合型免疫不全症で無菌治療室での治療が必要であると医師から診断された患者。当施設に無菌治療室はない。

多床室の1床をパーテ-ションで区切って個室に準ずる状態にし、室内の空気清浄度等の基準を満たした状態で、無菌治療室と同じ環境整備を行った。

AM10時から、上記の個室に準じた環境に入室し治療を行っている。

本日この患者の看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の評価は「あり」か「なし」か。

 

演習問題3.解答

あり

 

演習問題3.解説

これはとても複雑なシチュエーションの問題ですが、答えは「なし」になります。

無菌治療室での治療の定義」では留意点に「また、個室であって、室内の空気清浄度が、・・・」と無菌治療室での治療について、個室であることを条件づけていますが、

後の厚生労働省の疑義解釈では無菌治療室の個室管理について
「個室ではないが多床室において、パーテ-ションなど個室に準ずる状態で、室内の空気清浄度等の基準を満たしていれば、当該項目に該当する」

と個室への補足を追加をしています。

 

詳細は 無菌治療室での治療」個室ではなく多床室でもOK

を参照してください。

 

この状況設定では、個室の無菌治療室がないが「個室の無菌治療室に準じた環境」を整備しており、看護必要度A項目「無菌治療室での治療」の評価は「あり」となります。